「うーん、、、」
数秒悩んだ後、自分なりの考えを伝えようと、口を開いた。
「…国のさらなる発展のためには、船はこれから必要不可欠だと思います。なのでまずは、造船技術を高めることに専念してみてはいかがでしょう。海を速く渡れる船を造ることが出来るようになってから、プレイン共和国との貿易を進めればよいかと。
パイン連邦国は国の一部が海に面しているため、造船技術には自信があります。船を造れる指導者、それから運転できる者、、、何名かをこちらに連れてきて、我が国が持つ技術を広めましょう。」
「……ほう、、造船技術か、、、、、
確かに、船に関してはまだあまり手を出してこなかった。
、、分かった。」
「…いえ、お力になることが出来るのなら、またいつでも。失礼します。」
僕から目を逸らす翔様にぺこりと一礼して、くるりと踵を返した。
ーーー
それから翔様は、僕が提案した通り、まずは造船技術の発展に力を入れ始めた。
実際にパイン連邦国から腕の立つ者を連れてきた。
プレイン共和国にも、もう少し時間が経ってからということを説明したらしい。
…王妃である自分が直接政治に関わることはないが、翔様はあれからたまに僕に意見を求めることが増えた。
意見を聞かれるだけでも、王妃として翔様に少しでも貢献できているような気がして嬉しい。
「ここはどう思う?」
とか、
「………と考えているのだが。」
とか。
呼び出されては、そんな風に尋ねられることが多くなったのだ。
…それから、翔様のご病気の方。
こちらはかなり順調だと思っている。
毎夜毎夜感情を説明してきたおかげなのかは分からないけれど、翔様の表情に少しずつ変化が現れ始めた。
少しだけでも口角を上げることが増えたり、僕の表情を見て、今僕がどんな気持ちなのかを当ててきたり。
ちょっとずつよい兆しが現れていくのを間近に感じることが出来て、なんだか保護者のような気分になっていた。
…そんなある日。
ーーー
なんだか今日は朝から、王宮内がバタバタと騒がしかった。
使用人が走り回る、、、というような感じではなく、どちらかといえば騒がしいのは官僚である貴族の方たちだ。
一体どうしたのだろうかと、ゆっくりと部屋の外へ出た。
「…あっ、和也さん。」
玉座の間の方へと向かっていたら、焦りを浮かべている和也さんにすれ違った。
「どうしたのですか?何やら皆さん騒がしいようですが。」
「…っ、実は、、、いや、詳しいお話は翔様から聞いて頂けませんか。
すみません、失礼します。」
「…?」
いつも礼儀正しい和也さんらしくないなと思いつつも、言われた通りに翔様がいらっしゃるであろう玉座の間へ向かった。
ーーー
「失礼します。」
ドアの前に立っている衛兵の方にペコリと一礼してから、大きな両開きのドアを開けた。
目の前には、数名の貴族の方と、玉座に座る翔様。
だがその表情は、いつにも増して深刻そうである。
「…!
潤、なぜここへ、」
「なにやら騒がしかったので。一体どうされたのですか?」
そう口を開けば、貴族の方や、翔様の視線がいっぺんに僕に突き刺さった。
「潤には関係ない。…と言いたいところだが。
…パイン連邦国へと向かっていた官僚1名、それから3人の使用人が行方不明となった。」
「え…?」
ドキリドキリと心臓が早鐘を打ち始める。
「パ、パイン連邦国に一体なんの用で、」
「単なる貿易だ。馬車に乗り、向かっていたはずなのだが、連絡が途絶えた。パイン連邦国にも知らせたが、まだ到着していないとのことだ。」
はぁ、と翔様が短くため息をついた。