「…先生、、、番がいること、俺ら2年生には言ってないでしょ?うなじも、いつも襟付きのシャツで隠してるし。」
…菊池の言う通りだ。
俺がこの学校に来た時、翔くんのクラスには番が居ないと言った。
でも、翔くんと番になってから、うなじに痕が残って、、、
二宮にも番が居ることがバレて…。
その時は特に気にしていなかったけど、俺に番が出来たっていうのは、その時授業持ってた3年生しか知らなくて…。
でもその3年生は卒業。
俺も3年生が卒業した後から、毎日襟付きのシャツを着て、うなじを隠すようになったから、今俺に番が居るということを知ってるのは、菊池ぐらい、、、
「…番が居ること、バレたかな。」
「バレちゃまずいんすか。」
「…翔くんには隠せって言われてた。前に色々あったから…。」
「色々追求されるでしょうね。
…ま、頑張ってくださーい。」
「あっ、ちょ、、、、、!!」
ニッと笑うと、そのまま再び走って出て行ってしまった。
やっべ、、、
…て、てか、翔くんのせいだから!
翔くんのバカ!!!
そもそも…、いつの間につけたんだよ、、、
「…もー、、、」
襟を引っ張って痕を隠そうとするも、もちろん隠れる訳がない。
とりあえず形だけでも言い訳をしておかなければ、と思った。
ーーー
2時間目の授業は、首筋の痕の存在に気がついた生徒がいる菊池のクラスであった。
教室に入ると、痛いぐらいに突き刺さる生徒の視線。
…もうみんなに広まったのかな。
痕の話は。
「……じゃ、授業を始めます。教科書の、」
「せんせー。」
視線を感じながらも授業を始めようとした矢先、1人の生徒が口を開いた。
「その首筋の痕、どーしたんですか?」
…あぁ、やっぱりな。
「………これは、」
あ、、いやまて。
翔くんには番のことを隠せと言われていた。
…それから、誰かに襲われないように気をつけろと。
容姿を隠していたとはいえ、二宮のような輩がいないとは限らない。
完全に自惚れているけど、、、
なら逆に、ここで番が居ると言い切って、先に牽制してしまった方がいいのでは。
「…番である相手につけられたんです。恥ずかしいことに、今朝生徒に教えられるまで気付きませんでした。」
驚いたようにこちらを見つめる菊池の顔が視界に入る。
みんなも、俺が言い訳して、問い詰められて…といった光景を想像していたのだろう。
ほら、生徒の顔がどんどん拍子抜けして、、、
「先生の番って、どんな人なんですか、、、!!!!」
「気になる気になるー!!」
「男ですか?女ですか!?」
…あれ?
なんか、思ってたのと違う、、、
「えっと、、、えっと…。、」
助けを求めるような視線で菊池を見たら、我関せずでそっぽを向いてしまった。
「…ま、まぁ…、秘密、で。」
しー、というように口元で人差し指を立てると、歓声があがった。
「…ほら、授業時間なくなっちゃうから、、、」
…やっぱ高校生って、教師陣のこういう話好きだよなぁ、、、
なんだか微笑ましく思えながら、教科書を開いた。
ーーー