僕たち3人を乗せた馬車が王都に入り、王宮に到着したのは正午を少し過ぎた頃であった。


雅紀に手を取られ馬車を降りると、たくさんの兵士と重人と思わしき方々がいらっしゃった。

そしてその方たちが、僕に向かって深々と頭を下げている。


「こ、こんにちは…。えっと…頭、あっ、あたま、あげてください…。」


重人の息子だったとはいえ、こんなに大勢の人に頭を下げられるなんてことは今までで1度もない。

こういう場合、どう振る舞えばいいのか分からなくて、わたわたと視線を泳がせた。


それを見兼ね、密かにため息をついた雅紀がボソッと耳打ちしてくる。


「潤様…、なにもおっしゃらずに、和也さんに続いてそのまま進めばいいだけのこと。」


「えっ、だって…頭下げてるんだよ?こんな偉い人たちが、私に向かって、」


「今はもう潤様よりは下の立場の方々です。いいですか。潤様は王妃ですよ。国王妃なのです。」


「…。」


僕よりも、下の立場の方々…。

国王と結婚することで、自分の立場というものはこんなにも変わってしまうのか。


内心自らも頭をペコペコと下げながら、言われた通り和也さんの後ろをついて行った。


ーーー


王宮の中へ足を踏み入れると、そこはもう別世界で。

高い天井、豪勢なシャンデリア、大きな窓、大きな柱…、壁にはいいお値段がしそうな絵画がたくさん。


キョロキョロと視線を彷徨わせる僕とは違い、和也さんはスタスタと歩いていってしまう。


そして目の前に、優に2mは超える大きな両開きのドアが現れた。


あぁ、ついに…。

他とは圧倒的に違う威圧感、豪華さを放っているこのドアの先に何が待っているかなんて、容易く想像出来た。


「雅紀さんもご一緒に。
官僚の方たちは、、、お気をつけてお帰りください。」


後ろにいる官僚(貴族)の方々にぺこりと礼をすると、ゆっくりと重たいそのドアを開けた。


…静かに開いたドアの先には、物もほとんどない、広い広い部屋。

この入口から真っ直ぐ伸びる真っ赤な絨毯の先には、真紅のクッションや背もたれを黄金色で縁取る、、、まさに玉座というもの。

天井には廊下にあったものより何倍も大きなシャンデリア、自分の身長の数倍以上あるガラス窓、高い天井へ一直線に伸びる何本もの太い柱。


窓からの光が斜めに、この"玉座の間"に差し込み、玉座に肘をついて座る、ブロッサム王国の国王を照らしていた。


雅紀と和也さんに合わせて跪き、頭を下げて思わずゴクリと唾を飲む。


ゆっくり真紅の絨毯を歩き、国王の元へ近づくことで、だんだんとその顔が鮮明に見えてくる。


艶のある黒髪、くっきりとした目に、大きな二重幅。

整った鼻筋、ふっくらとした唇…。


甘いマスクは無表情のままだが、年は若く、僕とそんなに変わらないように見えた。


「…翔様…、この方が、王妃となられる方でございます。」


和也さんがそう口を開くと、翔様はゆっくちと立ち上がり、僕の目の前に。


「……名前は…?」


耳の中の鼓膜を直接くすぐるような、低い声。

でもその声音の中には、どこか真っ直ぐさというものがあって、、、


「…潤と申します。」


「じゅん、か。」


なにを考えているかも分からない表情のまま、こちらの顔をじっと見つめながら立ち上がると、近づいてきて跪く僕に目線を合わせ、親指でそっと唇をなぞられた。


「…っ、、、」


「そちらは?」


そう聞いた翔様が視線を向けたのは、雅紀の方である。


「…私の側近である雅紀です。…側近と僅かな荷物を持ってくることだけを許されたので。」


どうしても少しだけ皮肉っぽくなってしまった。

今更どうこう言ったって、この"政略結婚"という結果が変わるわけではない。


でも、別れの時間も充分に取れぬまま国を去れだなんて、あまりにも酷い話だと思う。

早くこちらのブロッサム王国に来いと急かしたのが、翔様とは限らないが。











昨日というか、深夜にアップしていた甘え記事(?)、朝起きて見返したら恥ずかしすぎて消しましたチーンチーンチーン

7時前には消したんですけど、短い時間の中でしたが色んな温かい言葉を貰えてにっこにこです♡

…あの記事読んだ方には分かると思うんですが、このお話は丁寧な言葉を使おうと、いつも以上に頑張って書いたんです。

お話がいつもよりちょっと上手に書けているように見えますよね( -∀-)

…あれ?私だけかな?笑

まぁとにかく頑張りますので、のんびりお待ち頂けたらと思います。
(そんなに期待はしないで←)