イメージは中世ヨーロッパですが、書きやすいように色々と独自設定を加えているので、雰囲気だけ感じてもらえれば嬉しいです。

中世ファンタジーもどき。

深く考えずに読みましょう←


全28話です。











Dear Snow


潤 side


…雪の降る季節だった。

あなたに初めて出会ったのは。


ーーー


「…すまない、、、潤。俺が、、俺が、、、、しっかりしていないばかりに、、"…おたくの潤さんがよろしいかと。"あのお方"と結婚なさるのは"と、気づけば、全員が俺の方を見ていて、、、、、」


父が涙ながらに、他にいくつか存在している国家権力者にそう言われたことを告げた。


…ここ、パイン連邦国は、多数の国家がまとまって、一つの国家を成している連邦制の国であり、今、様々な事情を抱えていた。


そもそもこの国が連邦制をとっているのは、隣に位置する強国…ブロッサム王国に対抗するためである。

ブロッサム王国とはよい関係を築いていきたかったが、先代のそのまた先代の、またさらに先代で、ブロッサム王国との貿易内容に不満を募らせ、戦争に発展。


それから数十年前からは、お互いが何もしないまま睨み合うような冷戦状態が続いていたが、今年、冷戦の終息を取り決めた。


…"ブロッサム王国へ、パイン連邦国の重人、またはその息女・子息が嫁ぐ"ということを条件に。

つまりは、お互いが望まない政略結婚であった。


僕はパイン連邦国の重人である父の息子として生まれ、何不自由ない穏やかな生活をしていた。

重人というだけあって、家は広いし、側近もついてるし、やりたいことを好きにやらせてもらっていた。
(たくさん遊んでいた、というわけではない。)


そんな中、父から告げられた言葉は、まさに寝耳に水であった。


「僕が、、、、、です、か…。」


急にそんなことを言われても現実味が湧かない。


長年続いてきた冷戦を自分がブロッサム王国の王と結婚することで終息できるとなると、なんだか妙に誇らしい気分になったが、お互いが望まない政略結婚であるから、嫌なものを押し付けられてしまったような気もする。


だが、結婚を拒むことなど出来ない。

政略結婚なのだから、望まない結婚で当たり前なのである。


「…すまない、本当にすまない……。」


僕にしがみついて涙を流し、許しを乞う父を見ても、次の言葉が思い浮かばなかった。


ーーー


僕がブロッサム王国に移るのは、たったの3日後らしい。

どうやら、相手側からかなり急かされているようだ。


…もう自分はこの国の美しい自然、建築物、穏やかな人情と素晴らしい文化に触れ合えないのかと思うと、途端に涙が溢れてきそうになる。

側近と一緒に、僅かだけ持っていくことが許された荷物をまとめながら、共に過ごした家族や友人の顔まで思い浮かんでくる。


「…。」


「………潤様、、?」


「あ………ううん、なんでもないよ。」


別れとこれからのことを想像して、思わず荷物をまとめていた手がとまってしまう。


「…ブロッサム王国は、様々な面において非常に発展していると聞きます。ここ、パイン連邦国とは180度景色が変わって、意外と楽しいかもしれませんよ!ここにはない食べ物とかもたくさんあるでしょうし!」


沈む一方である僕の気持ちを汲み取って、明るくそう言ってくれるのは、側近の雅紀である。

僅かな荷物と共に、彼も僕と一緒にブロッサム王国に行くことが許された、唯一の人間だ。


ここの国風と同じように明るく穏やかな性格をしている。

心優しく、年もそれなりに近くて、なにかと色んなことを話しやすい、大好きな存在だ。


雅紀がついて来ることを許されているので、心配事は少しだけ減った。


「そうなんだね。でも、、、」


…僕が嫁ぐ相手、、、ブロッサム王国の王は、喜怒哀楽を表に出さず、人情味に欠けている冷たい人だと聞く。

顔も分からないし、そんな、、、僕とは正反対の性格…。

そんな人と、上手くやっていける自信なんてない。


「…それはあくまで聞いた話に過ぎないじゃないですか。実際に確認してみないと本当のことなんて分からないんですよ。」


「、、、そっか…。」


それでも期待出来ないこの先に、ひとり、ため息をついた。


ーーー









以下蛇足補足。

潤くんが嫁ぐ方はもうみなさん分かってると思うので、、、

・パイン=松
・ブロッサム=花(チェリーブロッサム=桜からブロッサムだけをとって)
・同性同士の結婚は当たり前にできるが、もちろん子を孕むことは出来ないので、国王などのお偉いさんは結婚した2人のうちどちらかに子がいる兄妹がいることで結婚が許される。(兄妹が産んだ子供を跡継ぎとするため。)



…まだ冬ですよね、、、

タイトル、セーフですよね…。

なんだか最近は暖かい日が多かったこちら北海道ですが、雪はたくさん残ってますし。。。