自動ドアを通って建物に入ると、受付らしきところに。

それから、奥に階段とドアが見える。


スタジオはドアの奥かな?


頭でそんなことを考えつつも、特に何も言わず、歩いていく翔さんの後を従順に付いていく。


「話し声が聞こえる。」


翔さんが小さくそう呟いて立ち止まったのは、ドアの前だ。


「ここで待ってて。」


「……え?」


僕がなにかを聞く間もなく、翔さんはドアを開けた。


ーーー


開けられたドアの先は、松本が予想していた通り、スタジオであった。

午後から来る生徒達のために、ダンス講師である大野と二宮は最終確認をしていた。


まぁ、、、今は休憩中だが。


「松本さん、あれからなんか考えてくれてるんですかね。」


「さぁ?一応LINEしてみたけど、返信どころか既読すらついてない。」


「やっぱり怒らせちゃいましたか。距離近すぎたかな。」


「やべぇよな…。」


なんて2人で昨夜のことを話していると、ふと開けられたスタジオのドア。

誰だろうと同時にドアに目を向けたが、見覚えはなかった。


「えっと…。まだ開始時刻ではないんですが…。」


「どちら様ですか?」


ドアの前で立ったまま動かない男は、、、櫻井は微かに笑みを湛えていた。

その笑みが、何を意味するかは分からない。


「あなたが…あなた達が、大野智さんと二宮和也さんですね。」


初対面の男にフルネームを呼ばれた2人は、内心ギョッとする。


1度どこかで会ったことがあるのだろうか。

自分達が覚えていないだけで。


「あ、あの…!」


「櫻井翔です。」


「さ、さく、、?」


「大野さん、知り合い?」


「いや。
…でも待て。なんか、どっかで…。」


櫻井翔…。


さくらいしょう。


さくらい、しょう。


しょう、、、、、、、


「松本さんの恋人の名前って、"翔"だったよな。」


「えっ、あ…はい。
え、、、?いやでも、そんな訳…。」


「…………昨夜は俺の潤がお世話になったようで。」


「…!」


空気が一気に重たくなるような感覚。


「あなたが…。
…でもあなたは、海外にいらっしゃるとお聞きしましたが、、、」


「昨日丁度帰って来ていたんですよね。全く、せっかく帰って来たというのに、家に潤の姿がないので驚きました。」


「…あ、、、はは…。」


「………で、なに勝手に取ろうとしてる訳?潤からも恋人である俺の存在は聞かされていただろ?」


「…。、、、えっと。」


「まぁ、口先だけでこう言っても、効くとは思えないので。直接見せてあげますよ。潤が俺に落ちきっているところ。昨夜言ったことは全て、一瞬の血の迷いです。
…ほら、潤。来いよ。」


「え…?」


そう声をかけると、数秒後にドアを開けたのは紛れもなく松本さんだった。