でも…、寂しいのはホントに事実だ。

数ヶ月前に海外…、アメリカの方に旅立って、同棲していたのが、僕1人きりになってしまった。


そしたらやけに部屋が広く感じて…。

作ったご飯も何だか味気ないし、2人で寝る時と比べたら、1人の方が寝付きが悪くなった気がする。


…そこまであの人の…、、、翔さんの存在は大きかった。


……恋人の名前は櫻井翔。

自分よりも2つ歳上。


家事が苦手だけど、それ以外は逆に完璧じゃないところを見つける方が難しいぐらい。


ほとんど毎日電話をしてきてくれるから、声が聞けて、安心している面はある。


でも…、恋人だから、そりゃ身体を重ねたことも何度もあった。


けど今は電話越しの声しか聞けないから。

温もりを感じられないから。


溜まってる…って言い方も嫌だけど、まぁ、そういう部分でも寂しい。


それは多分翔さんも同じで。

最近は、やけにテレフォンセ ックスを強要してくるような電話が多い。


時差があるから、俺が仕事中にかかってくることもあって…。


ちょうど経営者兼オーナーの相葉さんとお話していた時にかかってきたこともあった。

その時は何とかあしらったけど。


でも、さっき…、ここの店にさぁ行こう!ってなった時に電話が掛かってきて…。

翔さんがどうしても、って言うから、、、ちょっとだけ…、、、うん…。


だ、だから遅れて来たのは翔さんのせいだからね!


…まるで見張られているようで怖い。

仕事中だって分かってかけて来てるだろうから、俺が慌てる反応を楽しみたいのか何なのか。

今日だって出発しようとした瞬間にかけてくるから、どこに行くんだ、って言われてるようで。


まぁ、見張られてる訳なんかないんだけどね。


「なんか、、、ずっと寂しそうな冴えない顔してますね。」


「え。」


ふと、大野の言葉で現実に引き戻された松本。

そんなに思っていることが顔に出ていただろうかと、顔をぺたぺたと触る。


「そんな寂しそうな顔より、松本さんには笑顔が似合うのに。」


「…!」


…翔さんにもそんなことを言われたことがある。

「泣くなよ。お前は笑顔が似合うんだから。」


眉尻を下げ、片方の口角をあげて微笑み、僕の頭をポンポンと叩いた翔さん。


ダメだ…、僕…。

急に翔さん不足かも、、、



「…ぼく、は…、、、、、、」


松本の表情が段々と変わっていくことに、2人は気付いていた。

さっきまではあんなに戸惑い、否定していたのに、今では憂いのある表情に変わっていた。


「…松本さん…?、、、やっぱり人肌が恋しいんですか?」


まるで松本にトドメを刺すかのように、二宮が言った。


「う……、、、、、、」


じりじりと悶絶する松本を、2人が両側からじっと見つめる。


絆されかけていないと言えば嘘になるぐらい。


でも、自分には翔さんが。

例え遠距離だろうと、自分には翔さんがいる。


なのに2人に乗り移るなんて…典型的な浮気そのものじゃないか。


けど、人肌が恋しい。

寂しい。


ずっと傍に居てくれる存在が欲しい。


「まつも、」


「ま、まってください、、!!!!」


バン、と思い切りテーブルを叩いた松本。

確実に悩んでいる人のそれだった。


「ごめんなさい…。ちょっと、ちょっと待ってください…。考えさせてください…。」


フラフラと力なく立ち上がった松本は、お会計よりも恐らく多めのお金を机に置いて、そのまま荷物を持って出て行ってしまった。