「あ、2人に折り入って話があるんだけどさぁ、、、」
「それ今じゃないと駄目なの?」
「ん、出来るだけ早めがいい。」
「相葉ちゃんにしては珍しいねぇ。」
「んーとさぁ、、、」
口いっぱいに入っていた食べ物を咀嚼し、飲み込んでから口を開いた。
「ここのダンススタジオの第2号目を作りたくて、、、」
真剣な表情で、2人を見つめる。
そんな相葉の話を聞いて、経営者相手とはいえ、二宮はため息をついた。
「マジなんでそんな大事な話を今するんですか、、、もう…。」
「第2号って、2つ目のダンススクールってこと?」
「そう。いわゆる事業拡大?みたいな。もちろんここは今まで通り残すし、スクールも続けるけど…。」
「経営者は相葉ちゃんで、俺らは雇われの身だから、とやかく口を挟んだりも、文句言ったりもしないけど。」
「別に反対はしませんよ。それは俺も大野さんも同じ…ねぇ?」
「もちろん。」
「第2号、、、新たに講師を雇うの?」
「いや、、、えっと、話っていうのはここなんだけど、、、」
「ここ…?」
気まずそうに視線を逸らす相葉と、眉を顰めた。
「そのスタジオのオーナーに、2人のうちどちらかを任せたい。」
「どちらか、、、」
「ホントならスタジオを2つ借りて…2人にそれぞれのオーナーを勤めてもらって、ダンススクールを2つ増やそうと思ってたんだけど、、、。どうしても1つしか借りれなくて。」
「…。」
思ったよりよっぽど大事な話に、2人の箸を動かす手が止まった。
「ここのスタジオのオーナーとここの建物を持ってるのは俺で、流石にもう一個オーナーをするのはキツイかなって。」
「それっていわゆるあれ?俺とニノに、利権争いをしろって?」
「高校からの同級生で、同じダンス講師で…。2人共仲がとってもいいのに、こんなこと頼んでごめん。新しく講師を雇う余裕もないから、この手しかなくて…。」
「ふぅん、、、」
「つまり今日から、大野さんとライバルってことね。」
二宮が全てを納得したかのように、ニヤリと笑った。
「お、言ったな?」
「あ、、、殴り合いとかはしないように、、、
あと明日、ちょっと話が早いんだけど、実際に借りようと思っているスタジオを見に行って欲しい。ほら、明日のスクールは午後からでしょ?午前中に時間を取ったの。そこのスタジオの入ってるビルのオーナーさんも来てくれるから、分からないことあったらその人に聞けばいいし。」
「えー、明日の午前中はゲームしてようと思ってたのに。」
むすぅと頬を膨らませた二宮だったが、その嫌そうな表情はすぐに消え失せた。
「まぁ、数ヶ月後にオーナーになることになるスタジオなら、早いうちに内見に行っても損はないけど。」
チラリと横目で大野を見た。
その目はすでに大野をライバルとして見る目だった。
ーーー
12時を過ぎた頃、マンションの一室に帰宅した二宮。
帰宅早々、寝る支度を整えてベッドに潜り込んだ。
「利権争いね、、、」
こういう争いごとは、ゲーム程度のものじゃないと好きではない。
だが、先程聞かされたものは、ゲームなんかとは比べ物にならない。
自分の生活がかかっていた。
…オーナーになったら給料は増えるだろうか。
なんてどうしても思考が金の方にいってしまう。
だが、金とは関係なしに、ある程度自分の生活が落ち着いてきたら、人間は地位とか名誉が欲しくなるもの。
仕事が多少増えたって構わない。
これは、いくら大野さんであっても譲りたいとは思わなかった。