…大して眠れずに朝を迎えた。

昨日帰ってきてすぐベッド入ったから、何も食べてないし、着替えてないし…とりま腹減った。


「、、、ねぇ潤。」


「ん?」


いつものように2人向かい合わせ座り、朝食を食べる。

……昨日まではこんなに悩んでることなんてなかったのに。


でも、なんて聞けばいい?


"昨日ラブホ行ったでしょ。"

いや、ダメだろ。

ド直球過ぎる。


"俺になにか隠し事してない?"

…これもダメ。

簡単にはぐらかされるだろう。

それに、、、俺は潤の彼女でもなんでもねーんだから。


……やっぱり、まだ聞けないか、、、


「…いや、なんでもない。」


「変な翔くん。」


クス、と笑った潤。

俺の心の内なんか知らずに…。


「今日もバイト?」


「今日、、、うん。バイト。」


バイト…ねぇ、、、

その言葉がホントなのかどうなのか、今の俺には分からなかった。


ーーー


高校からの帰り道。

また、、、帽子に色眼鏡にマスク姿の潤とすれ違った。


相変わらずあっちは俺に気づいていない。

いや、潤がバレないようしてるんだから、気づかないフリをしているのかもしれない。


またラブホに行くつもりか?

でも、隣にいる連れの男は昨日とは別の男。


潤よりも若干背の高い、スラッとした男のように見えた。

前のバーの奴とはまた違う。


ラブホに行くのかどうかは知らない。

でも、潤がバイトに行ってないのは確かだ。


…昨日と同様に一定の距離をおいて、俺はまた潤のあとをつける。


昨日と同じ道を通っていく2人。

またラブホか?


いや、、、違う。


今日はラブホには行かず、小さな路地裏へと入っていった。

ホントに小さなところで、誰も気づかないような場所。

恐る恐る、俺も路地裏へと足を進める。


…すると聞こえてくる、潤ともう1人の男の話し声。

耳を澄ます。


「…ね。もう待ちくたびれたよ。」


「ん…仕方ないでしょ、、、順番は順番だから。」


「ホントにここでいいの?」


「雅紀はここがいいんでしょ?」


「うん。じゃ、前払いでいい?」


「別にいいけど…その後ちゃんと払ってね。」


「分かってるって。」


…前払い?

払ってね、、、?


なに、、、金の話?

え、潤、危ないお金に手出ししてないよね。


いや、どちらにせよ、今の会話は明らかに金の話。


やっぱりお金足りてない?

それでわざわざ俺にバレないように変装とかして。


でも、前払いって?

その人に潤の何かを先に差し出して、お金を貰ってるってこと?


潤の何かってなに?


「、、、まさか、」


悪い予感が頭を過ぎって、気づいたら体が勝手に動いていた。

路地裏の角を曲がり、2人のいるさらに狭く細い道へ。


         っ、!!!」


…、予感が合っていたことを喜ぶことは出来ない。

思わずその場に立ち尽くす。


「…嘘だろ。」


すぐ目の前にいるのは、古びたビルの壁に手を付き、服がはだけたまま腰を突き出す潤。

そして、潤に向かって何度も何度も何度も何度も腰を振る、もう1人の男。



…今初めて分かった。





お、


俺は、



俺、、、



っ、俺の、


俺の、



俺、の、、、





…俺の、生活は、潤の身体で成り立ってたんだ。






潤の身体、で。