俺が潤と暮らすようになってから、数ヶ月が経った。


勉強も安定して出来るようになり、楽しくつるめる友達も出来た。

生活も何不自由なくて、家事の方は住まわせてもらってるから、ほとんどは俺が受け持っている。


潤がバイトで帰りが遅くなる時は、俺が飯作って、休日は2人で作ったり。

傍から見たら男同士で気持ち悪いと思うかもしれないが、それが俺にとってはめちゃくちゃ楽しかった。

毎日笑顔でいれて、幸せに暮らせていた。





















…1度だけ、聞いた事がある。


「ねぇ、お金、、、大丈夫なの?」


頭の片隅にはあったけど、中々聞けずにいた。

大学生の潤のバイトだけで、男2人の生活を養っているのだ。


普通に考えたら、、、余裕なんてないはず。


というか、無理に等しいのでは。


「ばーか。子供がそんなこと気にしないの。寧ろ余ってるくらいだよ。」


わしゃわしゃと頭を撫でられた。


潤の両親が離婚し、さらに母親を病気で亡くしているのは知っている。


じゃあ、その遺産があるのかな、って…その時は素直にその言葉を信じた。


「もう、、、撫でんなって。そんなガキじゃねーし。」


照れ笑いを浮かべながら、潤の手を下ろす。

すると、潤も笑顔を浮かべる。


潤の笑顔は心が浄化されるようだった。


ーーー


そんな幸せな日々は続き、俺は高校3年生。

潤は大学3年生となった。


俺は潤にお金のことを聞いてから、なんだかんだバイトを始めた。

バーと本屋の店員を掛け持ちして、少しでも生活の足しにしようとした。


潤は余裕があると言っていて、俺のバイトで稼いだ少しの金なんか必要ないのかもしれない。

それでも、恩返しという意味も込めて稼いでおきたかった。


ーーー


「……どう?」


「…えっ?何が?」


なんでもない休日。

ソファーに寝転がる潤が、テーブルに向かってテキストに取り組む俺に聞いた。


「ここでの生活。」


「…なに急に。」


「聞きたいだけ。…楽しい?」


「そりゃーね。幸せだなって思うよ。」


そしたら、潤はまるで泣きそうなくらいに嬉しそうな顔でニコリと微笑んだ。


「…良かった。」


「なんだよ、、、?」


ほんとに泣きそうになってるから、こっちはもう戸惑いまくりよ。


「ううん。なんでもない。」


…"なんでもない"の言葉の意味が、"なんでもなくない"ってことは、後々知ることになる。


「バイトとかどうなの?今まで全然聞いてこなかったからさ。本屋と…バーだっけ?」


「うん。本屋はまぁ、、、テキトーに本の整理してたら終わってるって感じ。」


「えっ!?ちゃんとやってる?大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。おじいちゃん店長だから誤魔化せる。」


「お給料こっそり引かれてるとかない、、、?」


「全然。」


「そう?それならいいんだけど、、、」


「バーの方はねぇ…なんかアブナイ。」


「ええっ?!」


「いや俺なんも知らないでそこにバイト決めちゃったからさぁ、最初は全然気づかなかったんだけど…なんか、、、出会い系っぽい。」


「出会っ、」


マジか…みたいな顔で唖然とする。


「しかも男同士の。」


「……狙われてない?ホントに大丈夫?」


「学生だから大丈夫でしょ。」


「いや、そういうところマジで危ないからね?すぐ食われるからね?しかも翔くんなんて顔いいから尚更…、、、」


ボツボツと落ち着かなさそうに呟き始めた。