第二十五章 俺の知らない彼女を見た!
静奈の試合当日。
俺は、朝練に向かった。俺らも明日から予選
試合が始まる為、軽めのトレーニングメニュー
をこなす程度だった。新チームになり、一発目
の大会だ。2年生中心のチームだが、俺は
レギュラーメンバーの中に入ってたが、怪我も
あって明日のスタメンはどうか分からない
状況だった。長谷川も最近の頑張りがあって
ベンチメンバーには入れそうな感じだった。
練習後監督からスタメンメンバーの発表が
あった。俺は、スタメンから外れた。
状況次第で、後半から行くかもとの指示が
あった。長谷川はベンチメンバーに選ばれた
悔しかったが、現在の2年生が主役な為
仕方ない。静奈が来ることが分かってただけに
ショックは大きかった。
ミーティングも終わり、慌てて着替えて
校門まで急いだ。やま、まこちゃん、かわちん
の姿があった。練習途中から、チラチラ姿は
みえてた。そこには、タクシー2台が、用意
されてた。
「遅くなった。ほな、いくで!準備万端やん」
「当たり前やがな!タクシー手配完璧やろ!」
2台に分かれて、静奈の試合会場まで行くこと
になった。時間は、30分かからないはず。
今、11時45分やから、余裕あるくらいだった
道も渋滞することなく、予定通り12時15分に
着いた。スタンドのどの辺か分からなかった
がとりあえず階段を駆け上がった。
上がった場所は、2面あるテニスコートの
ど真ん中だった。
かわちん「どこで試合やるの?坂高どこよ?」
まこ「うわ、応援席も人多いなー」
やま「ほんまやな。あれ、手振ってくれてんの
加奈ちゃんちゃう?」
俺 「どこ?あっそうやな。あっち行って
みよ」
加奈ちゃん、驚いた表情で手を振ってくれてた
加奈「うわー久しぶり、どしたん、びっくり
するやん。ちょっと待って、
絵里!星光のかわちんら来てくれ
とるよー」
少し離れたとこに、絵里ちゃんがいた
まこ「加奈ちゃん、久しぶり、絵里ちゃんも
元気してた?」
やま「チース!まいど〜」
かわ「どうも〜。おひさ〜」
俺 「大西の試合まだ始まってない?」
加奈「まだ、時間あると思うし、呼んでくる
から、待ってて」
絵里「みな、元気そうやね。応援しにきて
くれたんや。静奈言うてくへんから
ビックリしたわー」
長谷川「久しぶりやな。俺らこの辺座って
て大丈夫?」
絵里「ええよ。座って、私もこっち来るし」
周りは、坂高の生徒とテニス部員であろう
子達が、思った以上にいた。先輩の男子生徒の
姿も目に入った。その中に混じるのも、
あれだったから、少し距離を置いて座ることに
した。まあまあ、視線を感じたからだ。
絵里「静奈と咲来たよー」
咲「べーやん来るんやったら、連絡頂戴よー
LINE教えといたやんか! 私らの応援
しにきてくれたん?めっちゃ!うれしい
やん!」
俺「ごめんごめん。ビックリさせた方が
おもろい思ったから」
とりあえず、ごまかす感じで答えてしまった
俺「静奈、皆俺らのこと知らんかったりする
んかなぁ?」
静奈「ごめん。なかなか言い出せなくて。
忙しいのに、大丈夫やった?」
俺「イヤイヤ、大丈夫やけど。俺から言うても
ええんかな?」
静奈「今日試合終わったら、2人で言うって
感じで、どうかな?」
俺「そうやな。それよりもう、試合何やろ
頑張れな! 俺、マジで応援するから」
静奈「うん。ありがとう」
咲「べーやん!ちゃんと応援してな!
もし私らのどっちか1つでも勝ったら
ご馳走してくれるんやろ?」
まこ「咲ちゃんらが勝ったら俺らが、招待
させて貰いますがな!なっ!
皆んな!ええな!」
まこちゃんの勢いに皆んな、負けたのだった
かわちん「しゃーないわ!勝ったらやで」
咲「静奈聞いた!加奈も絵里も行こな!
私ら、結構やるんやからね」
静奈「ホンマにええの?」
俺「ええよ。その代わりしっかり勝ってこな
あかんで」
誰にも気付かれない様に、静奈の手を握った
静奈は、ビックリしてたけど嬉しそうにコッチ
を向いてうなずいた。その表情は、最高に
俺を幸せにしてくれた。
2人は、試合の準備に向かった。
加奈ちゃんと絵里ちゃんは、残念ながら午前中
の試合で負けちゃったそうだ。
13時、静奈の試合が始まった。
テニスの試合は、全く初めてみるが、個人の
対決は、俺らチーム戦と違い最初からドキドキ
して落ち着くことが出来ないほどだった。
彼女のテニスウェア姿は、最高には美しく
改めて惚れてしまうほど輝いて見えた。
静奈のショットが決まるたび、拳を握った
長谷川「隣で、咲ちゃんも始まるみたいやで
俺らで、応援してあげるか!」
まこ「そやな、べーやんはそれどこやないやろ
し、かわちん、やま、声だすぞー」
まこ&かわ「咲ちゃん!頑張れ!俺らが
ついてるでー」
咲ちゃんは、手を振って答えてくれた
やま「長谷川、アイツら俺らのこと睨んで
来とれへんか?」
長谷川「まあ、よその高校から応援来とるから
ちゃうか。あんまり、気にすなって」
やま「うっとうしいやっちゃで、マジで」
長谷川「年上の奴らっぽいし、揉めんなや」
やま「アホな奴らは相手するかいな」
こんな事があった事すら知らなかった俺は
静奈だけを見てた。
静奈と咲ちゃんは、順当に勝ち上がり
一年生では2人だけ残る快進撃だった。
咲ちゃんの試合が、先に始まった
「咲ちゃーん!頑張れー!」
まこちゃん達が声援を送ったが、もう、届いて
ないくらい試合に入り込んでた
少しして、静奈の番が来た。俺は1番下まで
駆け下り、声をかけた。
「こっからやで。しんどいやろけど、
集中して!」
静奈は、疲れてるはずなのに、笑って手を
振ってくれた。普段、大人しいほんわりと
とした彼女の雰囲気はなく、初めて見る顔で
前髪をピンで、止めた彼女は、自信にあふれ
てた。
結果、静奈と咲ちゃんは、ここで負けて
ベスト4となった。2人とも、やり切った顔を
してたが、お互いの顔をみたとたん、咲ちゃん
は泣き出していた。加奈ちゃん絵里ちゃんも
駆け寄って2人の健闘を喜んでた。
同じ一年生のテニス部員であろう子達も2人
を取り囲む様に抱き合ってた。
先輩部員であろう子は、先に負けてたんだろう
俺らのことを睨んでた奴らと帰ってくのが
見えた。彼氏だったのだろうか?
そこまで気に止めることはなかったが、後に
大変なことになる原因がこの日から始まってた
ことに俺らも、静奈も気付いてなかったのです