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ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
ノンジャンル手当たり次第読んだ本を紹介♪

ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
読んだ誰かが読書をちょっとだけ好きになるブログ

だったらいいな・・・

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。


〈私〉の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した〈私〉は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らない内に世界は始まり、知らない内に終わろうとしているのだ。残された時間はわずか。〈私〉の行く先は永遠の生か、それとも死か?そして又、〔世界の終り〕の街から〈僕〉は脱出できるのか?同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか?


内容「BOOK」データベースより


村上春樹の4作目の長編小説。村上春樹の物語は世に産み落とされた時点で作者のものから読者のものに変わる、そして氏は常に成長・変化するから過去の作品をもって村上春樹を語る事はナンセンスである事を先に述べたうえで、あえて分析なるものを書きたい。「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の2つの舞台で繰り広げられる物語が同時並行する、「世界の終わり」はRPG(ロールプレイングゲーム)を彷彿とさせる世界が舞台で、人々は各々与えられた役割を日々こなす、喜怒哀楽の起伏は少ないものの限りなく平等で平穏な空間であるが、高い壁で閉鎖され人は影を分離させられるという歪な均衡によって成立している街にやってきた新参者の<僕>、切り離された影は遅かれ早かれ弱り死ぬ・・・与えられた役割“夢読み”をこなしつつ街での生活を始める・・・「ハードボイルド・ワンダーランド」は限りなく現実世界に近い非現実的な世界が舞台、特殊な職業である“計算師”の一人である<私>、“計算師”と敵対する“記号師”、各々が所属する“組織”と“工場”の経済・情報戦争のダーティでハードボイルドな状況下に徐々に飲み込まれてゆくのだが、彼は特殊な事情を抱えていた・・・どちらの世界もかなりイっちゃてる印象を受けるが、非常に面白い。村上春樹が描くファンタジーにも似た世界観の事を村上ワールド等と表現する事があるが、今作品も村上ワールド全開で描かれている。一般的な感性や常識では図り知る事が出来ない2つの世界に突如として放り込まれた2人の主人公<僕>と<私>の物語、人間の深層に触れ意識レベルで交差する二つの世界が迎える結末や如何に!この世界観は村上春樹にしか出せません。

さて、2つの物語が同時進行的に発生するのは「1Q84」に通じる展開方法と言える、また「ハードボイルド・ワンダーランド」では題名通りのハードボイルドな展開を迎えるシーンが何度も登場するのだが、その度にタフにくぐり抜ける主人公の姿はレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウもの主人公マーロウの姿に重ねて読むことも可能である。また「海辺のカフカ」や「ノルウェイの森」など様々な作品に登場する現実とは異なる次元で存在する別世界に近い存在が「世界の終わり」とも解釈できる。明確な設定説明がある訳でも解説がある訳でもないが、相変わらず色々と物議を交わせそうな作品である事だけは間違いがない。2つの世界を繋ぐ象徴的な空想の生物“一角獣の頭骨”も最後の最後まで謎なのも不思議である。村上春樹の作品は謎が多い、それが全て解明されて終わるような優しい物語は存在しない、読者の数だけ解釈が生まれ読者の数だけ回答が生み出される物語。無限の魅力の虜になる一冊といえる。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」も実のところ男性の女性に対する愛の物語であるように感じたのは私だけだろうか?それがどんな形の愛情なのかと問われれば適切な表現を当てはめる事が非常に困難なのだけれども、世界や周囲が壊れようとも貫く愛に幾許か感動を覚えた・・・



殺人事件発生の報せを受けて運河の街にやってきた捜査官ヴァラス。しかし肝心の遺体も犯人も見当たらず、人々の曖昧な証言に右往左往する始末。だが関係者たちの思惑は図らずも「宿命的結末」を招いてしまうのだった。“ヌーヴォー・ロマン”の旗手、ロブ=グリエの代表作。


内容「BOOK」データベースより


“ヌーヴォー・ロマン”とはフランス語で新しい小説の意味、ロブ・グリエの最初の長編小説「消しゴム」はそれまでのフランス文学にあったリアリズム小説に新しい息吹をも吹き込んだ新感覚小説。

殺人事件が発生する、被害者がおり加害者もいる、だけど死体が無いし犯人も見つからない、国家規模のテロ組織が関与している可能性もあり、地元警察も匙を投げる難事件に特別捜査官ヴァラスが中央組織から送り込まれ事件の真相を探るのだが・・・被害者・加害者・探偵・関係者に町の住人と様々な主観が入り乱れる奇妙な事件はやがて宿命的な結末を迎える事となる。ミステリー小説であってミステリー小説でない不思議な感覚の小説、全体的には謎解きミステリーの体をなしているのですが、読者には最初から殺人事件の状況や実行犯が誰なのかが明言されています、事件当事者の思惑から難事件化する殺人事件なのですが、真相を知らない警察署長や探偵役ヴァラスは様々な人物のこれまた思惑が絡んだ証言に右往左往させられなかなか事件の真相に辿りつけないでいます、警察署長やヴァラスが思い描く事件の推理は読者からすれば的外れで無能にすら感じてしまう程なのですが、それがまた面白い。この小説に描かれているのは個人個人の圧倒的な主観のみである、ある人物が相手に対して殺人犯ではないかと疑問を抱くのだが、実は捜査官だった・・・また違う人物にとって相手は殺人犯と思っているのだが、実は被害者その人だったといった誤解や偏見が生み出す思惑の交差が入り乱れている小説となっています、あとがきには同じ描写を作者は計算高く微妙に差異を織り交ぜて何度も描いているとあります、これは同じ事象を他人が見たときに全く異なる印象を持つ事を表現しているのではないでしょうか?全ての主観や思惑が入り乱れるのですが、実際に発生している事件はたった一つである。これはまさに社会の縮図が殺人事件を通して描かれているように思えます。そして「宿命的結末」とありますが・・・望む望まないを別にして宿命に向かって各々が他意をもって収束していく所も物語構成として非常にグッドな所だと感じます。それぞれが赴くままに自由に発想・行動しているつもりだったのに何時の間にか一つの結末に向かって歩んでいるという集団が生み出す一つの方向。新感覚ミステリー小説。

最後に、あとがきにありますが、フランス文学研究家によりますと様々な文学的な隠喩や技法が駆使された作品だそうです、あとがきを読んで再読すると一味違って楽しい作品になるのではないでしょうか?原文で読める方はより一層楽しめるかもしれませんね。噛めば噛むほどの読み返せば読み返す程に面白くなる、そんな印象を受ける小説です。



消しゴム (光文社古典新訳文庫)
アラン ロブ=グリエ
光文社 (2013-08-07)
売り上げランキング: 254,030

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!


内容「BOOK」データベースより


東京発盛岡行き新幹線“はやて”を舞台に4つの視点で描かれるノンストップ暗殺サスペンス。前作「グラスホッパー」の登場人物が参加する等ファンに嬉しい演出があるものの独立作品として読む事も出来る。「木村」は幼い我が子を意識不明の重体に追い込んだ中学生「王子」を懲らしめ(殺害す)る為に、新幹線“はやて”に乗り込んだ、過去の闇稼業の名残である拳銃を片手に・・・対する「王子」は若年の様相とは裏腹に他人を嘲笑し掌握する術に長けた化け物じみた存在であり、他人の精神を弄ぶ悪魔の所業はシリーズ最高の悪役といって過言ではない・・・一方では闇稼業の大物“峰岸”から重大な任務を与えられた業界屈指の2人組「蜜柑と檸檬」も“はやて”に乗車していた、依頼主の息子とスーツケースを運ぶ事が任務だったのだが・・・そのスーツケースを横領する仕事を引き受けた、天に見放された不運の男「天道虫」こと七尾も“はやて”に乗り込んでくる。「木村」と「王子」、「蜜柑と檸檬」と「天道虫」の衝突はやがて4者全てを巻き込み最終ポイントまでまっしぐらに駆け巡る物語となる!これぞエンタメの頂点小説!!

2004年「グラスホッパー」2010年「マリアビートル」の続編間の歳月は伊坂幸太郎という作家を数段高みに登らせたと言わざるを得ない。前作「グラスホッパー」が3者の視点だったのに対し今作「マリアビートル」は4者の視点と複雑化しているのだが、東京~盛岡までの2時間半の新幹線内で物語を構成するという舞台と時間を制限し明らかに前作よりもタイトな状況に物語を置いている、それにも関わらず前作以上のハラハラ感と物語の深みを生み出しているのだから凄い!また前作がアニメや漫画に似た空気感が漂っていたのに対して今作はより文学的読み応えが増えたようにも感じる、その要因としては「王子」の存在が際立つ、“善悪”は伊坂幸太郎作品を表す要素のひとつといって良いが、その悪の存在として一際輝くのが「王子」である。天才的な頭脳と旺盛な好奇心は、他人の傷をえぐり自らの操り人形に変えてしまうやりたい放題の中学生、息子の敵討ちに来たはずの「木村」に対して息子を人質にとり意のままに自らの欲求を満たしていく姿は悪魔そのものである。“なぜ人を殺してはいけないの”と無邪気を装い悪魔的な言葉を投げかけてくる「王子」に読者は不快だが奥行きのある重厚感を感じる事だろう。マインドコントロールにより他者の思想・行動を操る「王子」だが、一番操られるのは読者なのかもしれない・・・知らず知らずに色々と深く考える場面を提供してくれているので必見の登場人物と言えます。反面「王子」は「グラスホッパー」最大の魅力である物語の疾走感に対しては弊害をもたらせる存在でもあります、胸糞の悪さや後味の悪さがどこか胸の中に残るキャラクターなのでどこかスッキリしません、ですが、その爽快感部分を補うのが「蜜柑と檸檬」そして「天道虫」の存在でしょう、前作と同じく殺し屋組織の人間なのですが、凄腕でありながら個性的な2組は物語中ずっと疾走してくれますw前作のテイストが好きな人は必ずこの2組のことが好きになるでしょう!特に「天道虫」七尾に関して言えば、プロローグ的なエピローグが挿入されている等、作者自身もイチオシのキャラクターなのではないかなと思います、実際「マリアビートル」のコメントや書評では人気抜群の登場人物と紹介される事が多いです。私は個人的に「蜜柑と檸檬」が大好きですね、自己紹介で「芥川龍之介と梶井基次郎」と名乗るシーンは痺れモンですwこのような少しウィットに飛んだ会話を楽しめる人には最高に馴染めるキャラクターといえるでしょう。読者の皆様にはそれぞれ自分が好きな登場人物を探してみるって楽しみ方をしていただきたい作品だと思います。また伊坂幸太郎作品は村上春樹作品ほどではないものの他の作品からの引用や隠喩が多い作品でもあります、作中に登場する古典作品や紹介作品を読んでみる事でより深く楽しめるのも良いところですのでチャレンジしがいのある作家さんと言えます。2時間半に繰り広げられるノンストップサスペンス小説を是非。


マリアビートル (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2013-10-09)
売り上げランキング: 443

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。


内容「BOOK」データベースより


最愛の妻を遊び半分で殺した男・寺原長男に復讐を誓い、寺原長男の親父が営む非・合法的会社“令嬢”に社員として潜入する“鈴木”だが目前で寺原長男が殺し屋業界凄腕“押し屋”に殺される。“押し屋”の正体と居所を探るべく追跡を開始する“鈴木”・・・偶然にも寺原長男殺害現場を目撃した、他人を自殺に追い込む殺し屋“鯨”は、過去に“押し屋”に仕事で負けた経験がある事と自身の殺し屋家業の罪悪感から逃れる唯一の清算方法として“押し屋”と対決を挑もうと追いかける。そして女子供含め一家惨殺も厭わない凄腕ナイフ使い“蝉”は、殺し屋家業零細の境遇と雇用主“寺西”の操り人形である自身にウンザリしており、“押し屋”を仕留めて業界で名を馳せようと目論む、三者三様“押し屋”を追う殺し屋演舞物語。

殺し屋が殺し屋を追い、互いに火花を散らし殺し殺されの物語、伊坂幸太郎が生み出す殺し屋物語は疾走感抜群で面白い!サスペンスやミステリでの殺し屋といえば、恐怖の対象として存在として登場する事が多いのだが、本作に登場する殺し屋は恐怖というよりもクールでコミカルな人物が多い、ジェフリー・ディーヴァーが描く殺し屋が戦慄を覚える程に怖い事を思えば、子供じみた殺し屋たちが目立つ、色々な作品で殺し屋を読んできた読者からすれば、恐怖といった意味での期待は出来ないだろう、しかしそれを補ってあまりあるのが殺し屋の個性である、今作は主要三人(厳密には“鈴木”は一般人である)を含め様々な殺し屋が登場する、催眠術か瞳術か不思議と他人を自殺に追い込む特殊能力を持った“鯨”を筆頭に常人離れした設定の殺し屋が多い、ネタバレになるので伏せておくが“鯨”や“蝉”以外にも様々なコードネームがついた殺し屋が多種多様な殺しのスタイルを魅せてくれる。「グラスホッパー」は漫画化されているそうだが、なるほどアニメや漫画に登場すれば人気が出そうなキャラクターが続々と登場していると感じる。しかして、キャラクター先行の物語かというとそうでもないのが著者の凄いところ。ドストエフスキーの「罪と罰」の引用による良心の葛藤を描いた場面や、独特の青臭さで現実世界を叱責するという伊坂幸太郎作品に馴染みのある読者ならば知らず知らずに毒されているテイストは本作でも健在で、完全にエンターティメントとして娯楽作品として読むか奥深くまで踏み込んで物語をなぞっていくか読者は自由に選ぶ事が出来る。これはあくまで僕の読み方ですが、命のやり取りが絡んだ物語は続きを読みたくなって自然と頁が進んでしまう、この疾走感こそ作品の要とも言えるので是非一気読みしてほしい作品。

「グラスホッパー」の続編「マリアビートル」も刊行されていますが、期待大であります。「魔王」に続いて「モダンタイムズ」を発表、「死神の精度」に続いて「死神の浮力」と続編発表の多い伊坂幸太郎、期待に答え期待を外さない作家でなければ出来ない芸当をやってのける力のある小説化は少ない!ジャンルフリーの殺し屋物語もきっと読者を楽しませてくれる事でしょう。オススメの一冊。


グラスホッパー (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2012-09-01)
売り上げランキング: 547

残忍な手口で四人の女性を殺害したとして死刑判決を受けたダリアン・クレイから、しがない小説家のハリーに手紙が届く。死刑執行を目前にしたダリアンが事件の全貌を語る本の執筆を依頼してきたのだ。世間を震撼させた殺人鬼の告白本!ベストセラー間違いなし!だが刑務所に面会に赴いたハリーは思いもかけぬ条件を突きつけられ…アメリカで絶賛され日本でも年間ベストテンの第1位を独占した新時代のサスペンス。


内容「BOOK」データベースより


デイヴィット・ゴードン処女作である「二流小説家」はエドガー賞受賞候補作品、日本国内での人気が凄まじく、「このミステリーがすごい! 」(宝島社)、「ミステリが読みたい! 」(早川書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文藝春秋)の全てで1位にランクインした。ペンネームを使い分け様々なジャンルの小説を手がけるも固定ファンが付くものの食うに困る程度にしか売れない、生活の為に始めた家庭教師の教え子である女子高生クレアにレポートの代筆という副業を斡旋してもらい、本業以上に収入を得るといった二流小説家ハリー・ブロック。ある時、死刑を間近に控えた連続殺人鬼ダリアン・クレイから一通の手紙がハリーに送られてくる、未だ被害者のバラバラ遺体の一部が発見されていない謎の連続殺人事件の真相を本にしてみないか?という依頼にまたとないチャンスを感じるハリーとクレア。異常者の享楽に付き合い被害者の涙を踏みにじる行為に良心が問われるも現状と好奇心から執筆を決心するハリー、ダリアンの様々な要求に応じながら真相を聞きだそうとするのだが・・・

本書は、上記概要の幕開け部分だけでも非常に面白い設定で興味津々で物語に惹き込まれるのだけれどなんといっても全550ページ中で250ページぐらいから始まる怒涛の展開に驚かされる事だろう!正直な話後半部分がなければ本当の意味で本書は二流小説家が書いた作品だと言われたかもしれない。しかしこの後半部分は読者を飽きさせる事はけっしてないし、結末までノンストップでハラハラドキドキさせられる事でしょう!事件がひと段落した筈なのにまだ100頁ほども残っているぞ・・・と最後に明かされる事件に隠された闇にも注目です。さて、主人公ハリーは様々なペンネームを使い分けて多くのジャンルを創作する芸術家の一人で、それがもとで連続殺人犯に目を付けられちゃうわけなのですが、「二流小説家」の作品の中でハリーが書いたとされる小説の断章があちらこちらに配置されています、女性作家に扮して描いたヴァンパイヤ物語やSF物語など配置されているのですが、小説の中に小説の断章が挟みこまれているというのも一つ面白い趣向だなと感じました、最初は物語のテンポを阻害する無意味な挿入ではないかと思っていたのですが、ハリーの多面性を表現するに一躍買っているのだなと感じるようになる。処女作品で様々なテイストの物語をブチこむセンスも著者の並ではない才能と言えるのではないでしょうか?

最後に主人公ハリーですが・・・公私共に二流って設定のはずなのに、主人公特有の絶対的な女性からの信頼(モテ)を持っているのが凄く魅力的なキャラクターです!ビジネスパートナーの教え子クレアを筆頭に愛情とまで行かないものの明らかな好意を寄せる女性がドシドシと登場しちゃうあたり流石主人公といったところでしょうか?この浮世を流す感じは名探偵シリーズ作品特有の魅力溢れる主人公の要素を満たしているようにも思えます。デイヴィット・ゴードン次回作品はテイストは似ているものの全く異なる物語との事ですが、二流小説家ハリーシリーズが出ても不思議ではないでしょう。魅力溢れる一冊。


二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
デイヴィッド・ゴードン
早川書房
売り上げランキング: 38,771