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ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
ノンジャンル手当たり次第読んだ本を紹介♪

ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
読んだ誰かが読書をちょっとだけ好きになるブログ

だったらいいな・・・

みずからの利益か、世界金融システム破綻の回避か?迫り来る未曾有の危機に際して、リーマン・ブラザーズCEO、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁、ウォーレン・バフェット、そして巨万の富を稼ぐウォール街のトップは、何を考え、何を語り、いかに行動したか?気鋭のジャーナリストが抉りだすリーマン・ショックのセンセーショナルな内幕。800‐CEO‐READビジネス書大賞受賞作。


目前に迫ったリーマンの破綻。救済なくば、他の巨大金融機関、さらには世界経済の破綻も避けられない。だが、ポールソン財務長官はウォール街の全CEOを招集して、こう告げた。「政府は公的資金を注入しない。身内で救済案をまとめよ」ライバルを助けろという異例の命令に、CEOたちは渋々と資金供出を決めるのだが。『フィナンシャル・タイムズ』紙の年間ベスト・ビジネスブックに選出。金融ノンフィクションの傑作。


内容「BOOK」データベースより


2008年9月15日、アメリカ投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻による世界金融危機とそれ以後の世界恐慌を称するリーマンショック。数年の月日が経ち経済も回復の兆しを見せてきた昨今、当時を分析・解析した書籍が増えてきているような気がする。分析・解析できるならば何故防げなかったの?と簡単な疑問がわくのだが・・・そこは人情、人間の欲求が数値や理論を超えたものであるからなどと曖昧なものに終始してしまうのだから結局は違う形にしろまた繰り返されるんだろうなと思ってしまうものだ、さて、本書はそんなリーマンショックの分析・解説というよりもリーマンショックの渦中に最前線で戦っていた者達の発言や行動をつぶさに綴った奮闘録といった内容である。リーマン・ブラザーズはじめバンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスなどウォール街の巨人とよばれた巨大金融機関のCEOや役員、そしてアメリカ財務省長官ポールソンたち政府側の人間たちが次々に登場しリーマン・ブラザーズ破綻の前後に彼らが何を考え、何を語り、いかに行動したか?が描かれている、ニューヨーク・タイムズのトップ記者アンドリュー・ロス・ソーキンの圧倒的な取材と筆力によって暴かれる人間ドラマに圧倒される一冊。

本書の良い点は2つ、まず1つは一流記者による膨大な取材によって構成されたフィクション作品である事から若干の趣向や志向性は備えているものの物語性よりも事実性を大事にしていると感じる所です、そもそもが未曾有の金融危機という社会現象を扱った読み物ですので作者の力で大きく捻じ曲げる事はできないものである事を差し引いても、くだらない陰謀説や新説といった奇をてらった作品とは違うリアリティに満ちた作品であり評価できるポイント。もう1点は、やはり登場人物全てに人物としての肉付けがなされている点です、ウォール街の巨人、アメリカ巨大企業CEOなどと聞けば私服を肥やし富と名声に飢えた化け物といったレッテルを一般人ならば貼り付ける事でしょう・・・実際に作中からそういった印象を受けないでもないのだけれども、リーマンショックの前後に彼らが味わった悲劇ともいえる体験を読むとまぁ~人智の及ばぬ出来事の前に、偉い人もなにもあったもんじゃないと感じます。そりゃ~一般人が体験するよりも遥かに重大な責任を感じながら究極の局面を迎えているとはいえど、困難を前に人は圧倒され神に祈る気持ちというのは平等なのだなと思わせます。そしてそう感じさせるのは前半部分(上巻)は各登場人物の私生活や学歴などパーソナルな部分を情報として盛り込んでいる所です。小説や新書を買った際に著者や作者の生い立ちや経歴があればより深く作品に対する信頼度や愛着を感じるのと同じですね。こういった一人ひとりの登場人物を大切に扱っているあたり流石は記者と思わせる所でした。

この本は金融に詳しい人、そうでない人も誰でも楽しめる作品だろうと思います。小難しい金融理論などは一切なく、むしろヒューマンドラマ中心の読み物です、リーマンショックに少しでも興味をもった方ならば是非一読してみてはいかがでしょうか?

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
アンドリュー・ロス ソーキン
早川書房
売り上げランキング: 71,117
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
アンドリュー・ロス ソーキン
早川書房
売り上げランキング: 91,420
稀少古書のみ数百冊を巧妙な手口で盗み続けた「本を愛しすぎた男」と、彼を追う古書店主にして熱血素人探偵のデッドヒート!古今東西の本泥棒たちの驚きのエピソードも交えて描く、古書をめぐる手に汗握るノンフィクション。

内容「BOOK」データベースより

「本を愛しすぎた男」とは本読み人に興味をそそらせる題名だ、しかしこれは本泥棒のお話。古書店探偵ときけば探偵VS泥棒のミステリーを想像するだろう。が、どちらかと言えば本泥棒の事件に関係する人間達に対する取材を基にそれぞれの人間性が描かれた作品となっている。題名から内容を想起させる事はしばしばあるがイメージと乖離した内容である事は否めないかもしれないので注意が必要である。例えるのが下手すぎるが、女性を愛しすぎた男といった本を買って内容がストーカーに対するインタビューだったといった所か・・・自分が手に入れる事が出来ないものを他人が平気で手にいれる不公平な世の中に不満をぶつけ金持ちのクレジットカードを不正使用し古書泥棒を繰り返すギルキーは、本をコレクションする事のみに心血を注ぎ手段の善悪にはまったくもって無頓着、そのギルキー逮捕に貢献した古書店主サンダースは古書泥棒に関する様々なエピソードを持ち常人ならざる古書への愛着をもった人物であるが社交性や人間味の面で偏屈をみせるオジサン、そして古書泥棒と古書探偵双方の取材し次第に古書世界の魅力にどっぷりと足を進めてゆく作者といった面々が登場・・・ギルキー、サンダース以外にも様々な古書泥棒や古書店主が登場し様々な古書泥棒エピソードは読者を楽しませてくれる、当事者の発言を基にして構成されているために、心理分析や真相解明といった観点があまりないのが期待はずれといえば期待はずれともいえるのだけども・・・ノンフィクション作品なだけに無駄に誇張したり偏見で描かれていない所は潔いかもしれない。本泥棒ギルキーが共犯だった父親を何故か擁護する心理が不思議だと作者は言いつつも聞き出せなかったと正直に書いているあたりも面白い、創作フィクションならばもっともらしい幼年期エピソードで盛り上げて心理レッテルを貼り付けるところだろうから。さて、ノンフィクションで肉付けがあまりないにも関わらず本書は面白く感じるのはやはりギルキーやサンダースといった個性がとびぬけた古書マニアのおかげだろう。一般人には理解できない程に古書を愛している、本を収集する事こそが最大の喜びだと感じるギルキーにとって他人のクレジットを不正使用する事は本を手に入れるための手段の一つといった認識しかなく悪事だと微塵とも思っていない様子が取材から伺えるところはなんとも不気味だ、社会不適合者(ソシオパス)といったレッテルを思わず貼り付けたくなるだろう。また本書の見所の一つは、やはり取材者である作者自身の心境が綴られている点である、対象者を尊重し過度の偏見を持たずに聞き取り書き写すあたりは取材者として評価できるのだけども、あまりにも自分を殺しすぎるのか特異な面々に出会いすぎて影響を受け感化されている場面が見受けられる、犯罪者と長時間共有心理する事で同調してしまう心理って所だろうか・・・これが作家としての表現の一つだったならば見事読者を誘導できているのだけど、真に影響を受けている人物ならばなんて間抜けな人物だろうとも感じてしまう、この推し量れない作者の素質も作品の魅力の一つになっている。本を愛する人ならば、偏狂愛者の物語も読んでみてはいかがだろう?


本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂
アリソン・フーヴァー・バートレット
原書房
売り上げランキング: 377,271

化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。


内容 「BOOK」データベースより


T県T市しぐれ谷で女性の刺殺焼死体が発見される、被害者は化粧品会社の美人OL三木典子。職場の同僚の証言などから浮上した容疑者は三木典子の同期・城野美姫。「白雪姫が白雪姫を殺害!?」と事件発覚当初から情報を得ていたフリー記者赤星は自身のSNSマンマロー(架空)でつぶやきを連発、記事を売り込む為に城野美姫犯行説を裏付ける悪意ある証言を集め始める・・・城野美姫の同級生や旧友の必死の擁護も空しく過熱し暴走を始める周囲の空気・・・インターネットの炎上や報道被害の背後に潜む人間の浅ましい他者に対する無自覚な誹謗中傷を克明に描き出し、誰しもが陥る可能性を秘めた物語は怖さ抜群のエンターテイメントミステリー。

読後思ったのは、この物語はロブ・グリエ「消しゴム」の現代版であるという事だ!殺人事件が発生しているのだけど、被害者や容疑者そして事件の真相が重要視されている訳ではない、関係者をはじめ周囲の人間達の圧倒的な主観に基づく証言が延々と書き連ねられている物語である、幸い日本警察は優秀で事件そのものが迷宮入りしていまうのではないかと思わせる「消しゴム」のような終わり方をしなかったのだけは喜ばしい事ではあるが・・・現代版「消しゴム」なだけに、主観証言の怖さはひしひしと伝わってくるだろう。ゴシップ週刊誌による中傷被害がテーマとなっているだけに最大限の誇張に基づいて形成されている物語である事を差し引いても、人間は愚かなほど他者を陥れる噂話が大好きなのだろうかと感じる事だろうし、またネットの匿名性と広域性により噂話が一人歩きし現実を超越した歪んだ真実として社会に拡散されてしまう恐怖も描かれているように感じる。非常に面白いのは、容疑者城野美姫に対して幼馴染や同級生の数名が擁護する証言をするのだが、週刊誌編集により上手に伝わらない事から城野美姫自身が自らを擁護してもらえる存在が居ないと孤立感を募らせる場面だ!主観によって他人の像を歪めて見てしまう被害を受けている筈の城野美姫自身が状況下で他者を主観で捉えようとしている、個人で物事を考えると行き着く果ては主観のみといった所だろうか・・・原作では後日談のようなものが存在していないため事後城野美姫や周囲の人間がどうなったかは明らかになっていない・・・この終わり方にしっくりこなかった人は是非映画版をオススメしたい。事後に心のあたたまる映画的な終幕を迎えたそうだ、作中に登場した人物も大きく関係した終わり方だったので原作読みの人にも納得の作りだったとの評判も高いので、原作と映画は是非ともセットでお楽しみいただいても良いのではないだろうか?しかし湊かなえ作品の醍醐味でもある後味の悪い幕切れが味わえるのは原作だけ!!

余談、最近の傾向で殺人事件級が発生すればメディアを筆頭に被害者や加害者のSNSやツイッターが紹介されるケースが増えている、パーソナル情報の一部でしかないものを捉えて人物の性格や行動を分析してるといった意識はあるのだろうか?また受け手にも・・・事件当初インタビューで「暗い」印象と言われていた筈が一夜明けて「明るい」性格だと変わっている街の聞き込みなんてもの実際ここ数日の事件でも見受けられたのだけれど・・・本人が発信している情報だから間違いがないという事もあるまい・・・そもそもSNSもSNS用の表面を作っているに過ぎないのだから、情報ってものは取扱注意のレッテルを常に貼り続けねばならないものですね、特に人間性を評価する事なんて実際会って直に話してみるまでは決め付けない事です、そこまでしても最後の部分なんて見えないものなのですから・・・あぁ怖い怖い・・・


白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)
湊 かなえ
集英社 (2014-02-20)
売り上げランキング: 3,081

女優、OL、キャバクラ嬢、資産家令嬢―年齢も職業も異なる四人が耽溺する、美容整形の世界。次第に彼女たちは「触れてはいけない何か」に近づいてゆき…。女性の欲望を極限まで描く、美と恐怖の異色作。


内容 「BOOK」データベースより


老いを恐れ若くあり続ける事を宿命とする女優・條子、母となり失った女の魅力を取り戻したいOL・多岐江、ブスだった自分から脱却を図り人生逆転を狙うキャバクラ嬢・莉子、醜く死んだ母から逃げるように整形を繰り返す資産家令嬢・涼香、そしてそれらの願望をかなえる敏腕美容整形外科医・晶世とクリニック受付の一般女性・秋美の6人の物語。女の美に対する恐怖すら覚える執着を見事に描き、美を求める者と美を与える者双方が生み出した究極の欲望の果てを描く、背筋が凍る戦慄のラストはホラー作品顔負けの一冊。美しくなりたいと思う人ならば是非とも読んでみるべき作品。

美を追求する心は人間性の要素のひとつであり自然な感情である、美容整形は最近でこそ一般的なものとして普及・定着してきているがやはり是が非かで考えられる事が多い、実際私も否定的立場をとる・・・私はマラソン出場の為に日々適度な運動をしている、肉体が如何に自然の産物であるかを自覚しているつもりだ、すこし手を抜くと雑草の様に脂肪が増えるだけでなくまるで天気の如く日によって体調は変わってしまう、美容整形は自助努力なく(金銭的努力や苦痛が必要だが)まるでスイッチ1つで肉体改造できるのだから文字通り人工的な発想の延長線上にあるモノだと考えるからだ。ただこの私の考え自体が1つの価値観に過ぎない事を作品は思い知らせてくれる・・・美の虜となり異常な精神状態に陥る登場人物ではあるが作中描かれる美を求める4人は美容整形に対する完全肯定派の価値観を携えている、4者4様のそれぞれの動機や理屈がそこには存在しており、他者が口を挟む隙間が無い程だ(本来他者が介在すべき事であると思うのだが・・・)。滑稽で愚かと笑って飛ばすか、真剣に深く読むかは読者次第だろうと思います。私は強弱こそあれど、作中描かれた動機や理屈の集積が美容整形という社会現象を生み出したのだと感じました。さて、作品の見所を2つほど・・・まずは誰もが陥り易い状況であるという点、あからさまに精神異常が疑われる登場人物もいるのですが、一般人に限りなく近い存在の多岐江をピックアップします、出産を経て変化した自身の肉体と女から母へと意識チェンジが出来ないでいる多岐江はもう一度男から求められる肉体をと美容整形に手を出します・・・紆余曲折を経て奈落の底に落ちていくのですが・・・多岐江は全ての責任を他者に押し付けようとする欠陥を抱えた精神を持っているとは言えど、それ以外は限りなく一般人女性に近い存在です、だから物語のような結末になりますよという訳ではありませんが、簡単にその道に入ってゆけるという点だけは覚えておかなくてはならない。もう1点は、美容整形に果てはあるのだろうか?という点、プチ整形なんて言葉が流行しポップでラフな印象を与えますが、人間の美に対する際限ない欲望の前にそこで立ち止まる事ができるのかどうか???という点・・・現実社会では金銭的な面でこの欲求を停止せざるを得ないのですが、海外セレブの化け・・・(っと失言)麗しき熟女たちを見ていれば結果は火を見るよりも明らかでしょう。この人間の果てのない欲求こそ作品の見所ではないかと思いますので、大いに恐怖を感じて読んで頂きたい。

最後に、私は美容整形の否定派です、でもその理屈も現段階で簡単に手に入らない肉体を理想として語っているに過ぎません、SF映画のような肉体をロボットにする時代がくればどうだろうか?美しくなりたい願望が実現する社会が訪れています・・・肉体と精神といった言葉がありますが、肉体が人工化しだした今だからこそ自然の部分である精神を見直す必要があると思う。経済・商業主義で安易で簡単に美容整形が持ち出されてはいないか?肉体改造に等価の精神を保ち続ける事は可能なのか?理性と欲望の葛藤を見る一冊。


テティスの逆鱗 (文春文庫)
唯川 恵
文藝春秋 (2014-02-07)
売り上げランキング: 83,886

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」から1年、
村上春樹、9年ぶりの短編小説集。
表題作は書下ろし作品。


内容紹介より


村上春樹9年ぶりの短編小説、表題作をはじめ6作品が収録されている。収録短編「ドライブ・マイ・カー」に関して、ある描写が特定の地域に対する侮蔑的表現ではないかと批難・論争が巻き起こり話題にもなっていたが文庫化に伴い地名変更による措置が取られている。「イエスタディ」に関しても創作歌詞の部分に変更が施される等、雑誌掲載時点とは異なる修正が入っている。文庫化にあたり加筆・修正はままある事ではあるが、その現象自体がニュースの話題になってくるあたり村上作品の影響力の凄さが伺える。“まえがき”にて、作品の本質には無関係な部分なのでテクニカルに円満処理できたとの事なので改めて蒸し返すのは野暮ではあるが・・・あの偏見に近い台詞をあの場面で吐き出すから映えるんですよね~その言葉が真実か嘘かが重要視されている場面ではない、そのぐらい読者だって感じ取れると思うのですがどうなのでしょうか?個人の主張や主義を前面に押し出す作風だからこそ社会や自由の壁にぶつかる事が多いんでしょうね、しかも著名人だからこその影響力を考えての周囲からの圧力であると思います。しかし言葉狩りしかり作家の表現にいちいち文句を言っていればキリなんて無いのでは?とも感じますけどね、「ドライブ・マイ・カー」の女性ドライバーに対する2種類のカテゴライズ発言だってフェミニストには十分な火種を抱えているような気もするし、しかしまぁ論争が巻き起こって当事者が既に矛を収めた話なので良いのですけどね(だったら言うな)。自由論の他者を傷つけない範囲において表現は自由であるべきに抵触しているって事なのでしょうけど、作家の表現の修正・加筆は出来うる限り外部の圧力で成されるべきではない、臭いものに蓋をしているだけでは本当の意味での侮蔑表現は消えないのでは?と私は考えます。でもなぁ~名指しで悪口言われたと感じたら怒るのも人情ですよね~なかなか難しい問題なだけにわざわざ“まえがき”が収録されたのではないだろうかしらん。

くだらない戯言はここまでにして品評開始♪今回の短編集は村上春樹らしくないとの評価を耳にする、題名の通り愛する女性をなんらかの形で失ってしまって打ちひしがれる男たちの短編小説、過去あらゆる作品で様々な“喪失”を描いてきた作者だからこそ短編といった形式で描かれる“喪失”に物足りなさを感じるのだろうか?表題作品「女のいない男たち」は散文的で叙事的、独特の世界観も登場し村上春樹らしいと感じている読者が多くいるようである・・・ふむ、難解で不可思議な世界を描くのが村上春樹だとでも言わんばかりの意見が多い。確かに先の「女のいない男たち」以外の短編に関して言えば、スマートで一般受けしそうな物語となっている、村上春樹フリークでなくても特段の解釈を用いたり曲解が必要な場面が少なく読みやすい物語となっているようにも思える。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」でも書いた事だが入門作品として読んで良い短編集といった印象である。だが作者らしくないに関しては疑問を投げかけたい所で、相変わらずジャズをはじめ音楽的な話題も豊富であるし、他の小説タイトルがどんどん登場する作風は健在で、シンプルな物語の中にしっかりと立ち止って考えさせられる描写や表現が散りばめられている。作品を深く楽しもうと思えば果てがないという奥行きに関しては抜群の短編であり、むしろそれを感じさせなく読ませてしまうあたりは作家としての更なる成熟の表れではないだろうか?ドストエフスキーのように生涯現役を理想とする作者ならではの意欲的作品と感じたのは私だけだろうか?最後に、この短編集を“女を喪失した男たち”の物語と簡易説明する事が多いのだが、若干視点をずらしてみると・・・文字通り心身喪失するまでに失ったモノの大事さに気付いた、そしてそれ程までに女を愛した男たちの物語であると言える。“喪失”にとらわれず“愛”に注目して読んでいただきたい作品。

最後に非常に面白く感じた箇所を一つ、作中にヴィクトール・フランクル「夜と霧」を連想させる作品が登場するのですが、この作品は多くの著名人や作家が影響を受けた作品として広く知られ一般人の知名度も抜群の作品であります、それというのもナチスの収容所を文字通り生きる希望を抱き生き抜いた精神科医の実体験物語で、読者は生きる意味を見出したり、生きている事の素晴らしさを感じる作品として評価されています。が・・・村上春樹は一味違う解釈をもって登場人物にこの作品を読ませています・・・確かにこういった受動があってもしかりと思える描写ですので是非とも味わっていただきたい場面です。



女のいない男たち
女のいない男たち
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村上 春樹
文藝春秋 (2014-04-18)
売り上げランキング: 466