『Nのために』 湊 かなえ | ほんとなかよし

ほんとなかよし

本紹介ブログ(と格好つけてる読書感想ブログw)
ノンジャンル手当たり次第読んだ本を紹介♪

ネタバレ自重・的外れで独断偏見に満ちているけど
読んだ誰かが読書をちょっとだけ好きになるブログ

だったらいいな・・・

超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか?それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。


内容「BOOK」データベースより


読んだ後に厭な気分にさせるミステリー=イヤミスという新ジャンルを確立させた湊かなえさんの第4作品目が「Nのために」、過去の「告白」「少女」「贖罪」という漢字2文字の傾向を打ち破っただけでなく内容も純愛を主軸に添えており、著者の新境地作品とも言われています。「Nのために」はテレビドラマ化がなされており登場人物の追加や物語の違いなどがあるそうです。ファンにも高評価のテレビドラマ作品なので原作を読まれて気になった方は是非映像化作品もお楽しみください。※私は観ていません。


資産家の御曹司にして一流商社マン・野口貴弘(のぐちたかひろ)、その妻・奈央子(なおこ)。超高層マンションの自室で二人は殺害される。容疑者の西崎真人(にしざきまさと)、現場に居合わせた杉下希美(すぎしたのぞみ)、通報者の成瀬慎司(なるせしんじ)、ゲストとして招かれていた安藤望(あんどうのぞみ)。全ての主要登場人物のイニシャルにNが冠している事件。歪な愛が存在し、それぞれのNが誰かしらNのために行動した結果が生み出した悲劇、事件発生当初の供述にあたる前半と10年後各々が振り返った真実によって事件の全容が明るみになってくる・・・


芥川龍之介「藪の中」を読んだ後だけに1つの事件を多くの証言で語る形式がより面白く感じました。4人の関係者がそれぞれの過去や事件に至った経緯を語っていくため何度も同じ場面が登場する事から戸惑いを感じるといった感想をもたれる方も多いようですが・・・よく読んでみると、証言部分と回想部分には大きな隔たりがあるのです!まず前半部分の事件証言は統一性が尋常じゃない、これは計画犯罪なのでは?と疑ってしまうほどの証言の一致です、小説家が緻密に組んだ物語とはいえどこの不気味なまでの統一感はどうなのかと感じてしまったものです・・・ですが、後半部分の事件回想になると関係者それぞれの思惑であったり独白によって事件に隠れた部分、特に心の中の部分にある食い違いや勘違いといったものが噴出しだします。関係者のN(たち)は誰かしらNのために何かをしようとした結果生まれた事件であることが解ってきます、全ての相関関係を思い描き可能な限りのNのためにを読者は想定することで推理を進めることができる!事件そのものではなく、関係者心理を読み解くミステリーといえるでしょう。


心理ミステリなので事件そのもののトリックや推理を楽しみたいタイプのミステリファンには物足りない内容かもしれません・・・凶器から真犯人が割り出せない警察(本書で警察が活躍する事は一切ありませんが・・・)ってのがもはや事件的ミステリを捨てた作品だと言わざるを得ないでしょう。普通血痕だけで犯人特定できっだろなんて冷ややかな視点は置いてお楽しみください・・・

作品を楽しむ上で個人的にオススメの作品は、芥川龍之介「藪の中」と谷崎潤一郎の作品。前者は事件当事者の証言の面白さ、後者は犯人西崎くんの心境(マゾヒズム)に通じる作風って所でしょうか・・・杉下希美と成瀬慎司の二人にはやはりドストエフスキーの「罪と罰」あたりが無難な解釈なのでしょうか。心理系ミステリは読み深めることができるのもポイントですので様々な作品と併せてお楽しみくださいませ。


Nのために (双葉文庫)
Nのために (双葉文庫)
posted with amazlet at 15.03.09
湊 かなえ
双葉社 (2014-08-23)
売り上げランキング: 2,016