妻の不貞に気づいた貴族の起こす猟奇的な事件を描いた表題作、黄金に取り憑かれた男の生涯を追う「ファチーノ・カーネ」、旅先で意気投合した男の遺品を恋人に届ける「ことづて」など、創作の才が横溢する短編集。ひとつひとつの物語が光源となって人間社会を照らし出す。
内容「BOOK」データベースより
1799‐1850。フランスの小説家。トゥール生まれ。17歳で代訴人の事務所に見習いとして入り、パリ大学法学部に通う。このころから文学者を志し、20歳のころパリ市内の屋根裏部屋に住んで小説を執筆し始める。人間を観察し、その心理を精密に描きつつ、社会全体をも映し出す長短編小説を次々に生み出し、巨大な作品群によってフランス社会そのものを表す「人間喜劇」を形成していく。旺盛な執筆活動の他に、年上の貴婦人たちと数々の浮き名を流したことでも知られる
著者紹介より
サマセット・モームに天才と言わしめ、19世紀ロシア文学(ドストエフスキーやトルストイ)の先駆けとなった写実的小説を書いたバルザック、名前のドは貴族を気取った自称であり自他ともに認める最上位の作家といえる。表題作である「グランド・ブルテーシュ奇譚」を含め4つの短編と1つの評論が収録された一冊。他人の心理を丸ごと見透かす特殊能力を持った登場人物が「ファチーノ・カーネ」に登場するのだけれど、これはバルザック自身の事ではないかと思わせる程に人間の心理を見事に描き出し腹の内を曝け出すような作品ばかりなのが印象的である。恋人に夫婦に不倫相手と状況は様々だが男女間にまつわる話が収録されている点も興味深い・・・表題作「グランド・ブルテーシュ奇譚」は、もはや人間喜劇というよりも、ある種男女間に起こりえるホラー物語といって差し障りがないだろうと感じるぐらいにゾっとさせる物語である。ある屋敷に近づいた主人公が公証人から聞かされた不可解な屋敷の相続形態に興味を抱き、真相を探るのだけれど・・・屋敷には主である夫婦の恐るべき秘密が隠されていたのだった・・・とおどろおどろしい紹介文を書いてもピッタリくる物語です。ただホラーと書いたのですが何故か楽しくよめちゃう所が喜劇作家たる所以でありましょうか。面白いです!
バルザックの痛快さを表す上で短編よりもむしろ評論を評価したい!当時1800年代前半の出版業界を痛烈に皮肉った内容の評論なのですが・・・細部の差異や事実確認等は抜きにして・・・新訳とはいえど、これって今の出版業界にも言える事なんじゃないの?と感じた読者が多いのではないでしょうか?バルザック独特の人間観察眼と社会考察能力がずば抜けているからなのか、それとも人間や社会は成熟しているようで実はたいして進歩していないのやら判断はつきかねますが、この評論が今この時代に普通に読めてしまう事の恐ろしさと言ったならばそれだけでバルザックが如何に天才であるかは申し上げる必要無しでしょう。愉快痛快!人間劇場バルザック、新たな面白い名作家に触れる事が出来て良い経験が出来ました。
この年代の作家と言えば神学に影響を受けた道徳的な作風が多いような勝手なイメージをもっていたのですが、不貞の愛や密かな愛といった物語を描いているあたりもバルザックの興味深い所ではないでしょうか?
光文社
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