裕福で育ちの良い美術評論家クレッチマーは、たまたま出会った美少女マグダに夢中になるのだが、そこにマグダの昔の愛人が偶然姿をあらわす。ひそかに縒りを戻したマグダに裏切られているとは知らず、クレッチマーは妻と別居し愛娘をも失い、奈落の底に落ちていく・・・・。
内容紹介
ロリータ・コンプレックス、幼女や少女に性的嗜好や恋愛感情を持つ者を指す言葉。ロリコンの略称で有名な精神状態を指す言葉であるが、医学や精神分析に関連した正式名称などではなく「ロリータ」と「コンプレックス」を混合させた和製英語である。主に軽蔑や侮蔑を込めて投げかけられる場合が多い用語である。その言葉が普及し波及の末定着に至るまでの経緯は諸説あれど、ウラジーミル・ナボコフ著「ロリータ」が起源である事は有名な話。1955年に彼を一躍世界的知名度の作家に押し上げた「ロリータ」は美少女を愛した中年男が没落していく姿を強烈に描いた作品。難解で巧みな技巧とプロットを駆使するナボコフは熱烈なファンを生む一方で初心者にはとっつきにくい作家であると評価されています、本書「カメラ・オブスクーラ」はナボコフの文体が成熟し完成する前の初期作品であり、内容が「ロリータ」の原型ともとれる共通点に満ちた物語である事からナボコフ入門作品に最適とのこと!解説や訳者のこうした意図はまずもって正解だと言えるでしょう。読書暦が長くなると大体1時間でどの程度読める本か掴めるようになってきますが、ナボコフは全く掴めませんでした、順調に歩きたいのだけど道がデコボコしていて足がとられる感覚でしょうか、これで入門作品なのだから「ロリータ」がどれほどのものか恐ろしい気分です。(参考までに、私は近代小説の読みやすい作品ならば60頁毎日ぐらいの読書ペースですが、本書は半分の30頁毎日ぐらいだったかと・・・)
さて、そろそろ内容に取り掛かりたいと思います。妻と娘がおり社会的にも成功を収めている男が、美少女に心を奪われて見事人生を破滅に向かわせるという内容の物語。普通に言っちゃえば阿呆としか言いようがないお話ですね、しかも熱を上げた美少女がとんだ子悪魔的な人間で見事に手玉に取られてしまうのですから哀れとしか言いようがない。恋は盲目なんて言葉がありますが、この物語はまさにこの言葉で構成されているといって過言ではないでしょう、題名「カメラ・オブスクーラ」はラテン語で“暗い部屋”をし現代一般的なカメラの語源であります、ネタバレにならない程度に言いますと、主人公クレッチマーは文字通り“暗い部屋”に陥る羽目になっちゃうのですが・・・その時本当の真実が彼の目の前に突きつけられる!様々なものを見失った男の最後の結末は悲惨そのものであるといえる。悲劇としか言いようのな物語だが何故か読者は憐憫とは違い愉快とも異なる不思議な感情でもって主人公クレッチマーの姿を追う事になるでしょう。この不思議な感覚を生み出している何かがナボコフの凄い所なのかもしれません。小悪魔なんて表現をしましたが、クレッチマーが熱をあげるマグダは恐ろしいまでに狡猾で欲望にストレートな人間です、清廉潔白な登場人物を好む人からすると吐き気がするほど嫌ってしまう人物かもしれせん、特に物語の絶頂期ともいえる奇妙な三角関係の場面は彼女の言動全てに身の毛もよだつ感想持つでしょう!人生を狂わせる程の魅力的な女性が目の前に現れた時に貴方は正気を保っていられるでしょうか?愛ってなんだろうかと考えさせられる一冊。
光文社 (2011-09-13)
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