硫黄鉱山での重労働の果てに暗い坑道を抜け出ると…静かで深い感動に包まれる表題作。作家が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」など15篇を収録。シチリア出身のノーベル賞作家が、突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く短篇集。
内容 「BOOK」データベースより
イタリアの劇作家・小説家、詩人であり1934年ノーベル文学賞受賞者。イタリアは陽気で呑気、少しいい加減な国ってイメージが強いのだが、あれも日本人がチョンマゲ袴に刀を挿しているイメージを持たれているのと同等なのかもしれない、イタリアのカフカと呼ばれるディーノ・ブッツァーティ「神を見た犬」読んだ時にも感じた事ですがイタリア文学に陽気さ呑気さとは真逆の真剣で深刻な人生への対峙といった姿勢を感じます。
イタリアは欧米圏に存在しながら交流の要所として東洋思想も流れているのでしょう、死生観や無常感に対して日本人がスムーズに感じ取れる部分が存在するように感じます、「月を見つけたチャウラ」では15の短編で構成されていますが、多くの作品で登場人物が悟りに近い境地に到達しています・・・といっても私自身が悟りとはどんなモノか理解できていないので、一般的に悟りであろうとイメージされているモノの大まかな括りの状態であると思ってください。死が差し迫って人生観・死生観が変わる事はありがちです、ですが本書の登場人物に明確な死が突きつけられてはいません、周囲の人物や読者にとっては何事もないきっかけが人物の心を蝕み折ってゆく、それも自覚的に深刻に・・・己の人生の中に己が存在していなかった事に気付き抜け殻になった自分を眺め対峙する様は、悪く言ってしまえば統合失調症に近い感覚なのかもしれないが、これもあくまで一般的な読者からの勝手なイメージでしかないだろう。我々が己と思い、社会だと感じ、人生だと思い描いているものの根底が揺らいだ時、悲劇が訪れるのだけれどもそれを眺める読者は何故かユーモラスに感じてしまう不思議な感覚。ロダンの考える人を呑気に眺めているような読書感を味わえる作品。個人的オススメ短編は、紹介文にもある「登場人物の悲劇」です、ピランデッロの作風や作品を味わう上で重要となる様々な悩みを抱えた登場人物を作者自身が面接テストを行なって対話する非常に面白い物語。
この作品を通してピランデッロは物語の中の世界で登場人物を輝かせるべきかを常に意識していた作家ではないかなと強く感じました、物語の中で死ぬ事のない特権を得る代わりに永遠に固定される登場人物をどうやって外の世界(リアリティ)に照らし合わせ生身の存在として感じ取らせる事が出来るのかを追求する作家だったのではないでしょうか?一つの作品、人物を苦悩し葛藤しながら練り上げた究極の短編集。
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