1941年、リトアニア。ナチスは乾坤一擲のバルバロッサ作戦を開始し、レクター一家も居城から狩猟ロッジへと避難する。彼らは3年半生き延びたものの、優勢に転じたソ連軍とドイツ軍の戦闘に巻き込まれて両親は死亡。残された12歳のハンニバルと妹ミーシャの哀しみも癒えぬその夜、ロッジを襲ったのは飢えた対独協力者の一味だった…。ついに明かされる、稀代の怪物の生成過程。
愛する者をすべて喪ったハンニバルは、無感動な孤児院生活を過ごす。そんな彼を引き取ったのはフランス人の叔父ロベール。ハンニバルはその妻である日本人女性、紫夫人の薫陶に与るとともにその魅力に強く惹かれてゆく。だが、凶事の悪夢は去らない―。最年少でパリの医学校に進んだ彼は、持てる英知と才覚を駆使して記憶の一部を取り戻し、復讐すべき獣たちを狩りはじめる。
内容 「BOOK」データベースより
「レッド・ドラゴン」「羊達の沈黙」「ハンニバル」で登場したハンニバル・レクター博士の幼少期・青年期が描かれレクター4部作最新刊にして、全ての起源となる作品、ついに怪物レクター博士の誕生秘話が明かされる!シリーズファン必見の一冊。
精神科医にして連続猟奇殺人犯、人肉嗜食を交えた殺人を快楽ではなく観察や実験の如く平静と行い、圧倒的な頭脳と話術から他者を操り時には殺害すら可能なレクター博士。超人的で圧倒的な人物像に神秘的な魅力を纏った人物だった彼も、前作「ハンニバル」では深層心理に影響を与えたと思われる妹・ミーシャにまつわる過去の事件が語られたり、趣味・趣向が明らかになる等の人格面の輪郭が少しずつ定まってきた様に思えた、そこにきて彼の幼少期・青年期が描かれるのだから作者は非常に挑戦的な作品を提供していると言える。過去のエピソードや隠された真実といった展開は読者がもっとも興味を持ち関心を抱く事であると同時に下手をするとシリーズ作品が台無しになる可能性も秘めた、いわば秘策中の秘策ともいえる・・・特に常人に理解できない怪物の素顔を曝け出す事は、神秘性や謎を捨てる行為でもあり、致命傷になりえる!それでもあえて語られるレクター作品の起源。凄いの一言である!!おそらく本作を読んで、レクターシリーズが終ったなどと考える読者はいないだろうし、俄然興味が沸いたと感じる人が多いと思う。物語は過去シリーズ作品に比べると意外な展開や複雑な人間交差などが少ない為に非常にシンプルに感じられる、それだけに怪物誕生の切欠となった悲劇が純粋にどす黒く胸を掬ってゆき、その後の復讐劇には奇妙な爽快感を伴った悲哀に満ちた感情を沸き立たせられる。起きた事とやるべき事が明確な作品なので読者側は状況を把握しやすい作品となっています、反面レクター博士自身の内面的な謎が多く残る作品でもあります・・妹・ミーシャ関連の悲劇の真実を知った(知っていた?)時の背信的な価値観や言動の謎、宗教圏の異なる日本文化が登場し象徴として存在した紫婦人との奇形の愛とその結末の奇妙奇天烈、特に一番最初の殺人に関しては解釈次第でどのようにでも出来そうで謎が募るばかり・・・怪物誕生のエピソードは語られるも怪物そのものは語られずといった印象を受けました。まだまだ怪物レクターは健在と言えますので今後も続くのかな?「ライジング」に始まり「ハンニバル」で終わりそうな雰囲気はありますが~その間の話やサイド・ストーリーなんかが出てもトマス・ハリスなら完璧に構成してくれそうなので期待!!
個人的に本作でオススメなのは、良く紹介文などでも言われていますが本作は日本文化に影響を受けた作者が意図的に日本人や日本の描写を挟んでいるいる作品です、細かい差異は差し置いて日本人読者にとって親しみやすい作品だと感じると同時に、そういえば前作品にもときどき“日本”の文字が出ていたので親日派の作者なのかなぁ~なんて思いながら読んでみると愛着も沸くものです^^
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