『海と毒薬』 遠藤 周作 | ほんとなかよし

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腕は確かだが、無愛想で一風変わった中年の町医者、勝呂。彼には、大学病院の研究生時代、外国人捕虜の生体解剖実験に関わった、忌まわしい過去があった。病院内での権力闘争と戦争を口実に、生きたままの人間を解剖したのだ。この前代未聞の事件を起こした人々の苦悩を淡淡と綴った本書は、あらためて人間の罪責意識を深く、鮮烈に問いかける衝撃の名作である。解説のほか、本書の内容がすぐにわかる「あらすじ」つき。


内容 「BOOK」データベースより


人間の「良心」とは何か?「罪と罰」の罰はどこから発生するのか?を問われているかのような作品。戦時中の病院という死生観を描くに最適な時代設定と場所、命が尊いなどと平生と口にするもその重みを推し量る事のできない現代人とはかけ離れた、本当の意味で命の重さを経験した時代や人々が描かれているように思える。ただ「海と毒薬」の凄い所は、命そのものの価値を描く事よりも、命に対する行為を通して見える「良心の呵責」(作中で何度も使用される言葉)にスポットを置いている点だろう。集団や組織、国家といった中で生まれる職責や責務、又個人の経験や性格から発生する個性などが複雑に絡み合う事で生じる潮流に個人の良心が流される(形成されていく)。あの戦争は何だったのか?と問われ続け60年経つが、その答えが明確に示せないのと同じく、人間の良心とは何か?と問うても答えが出るものでは無いのかもしれない・・でも「海と毒薬」はその良心とは何か?を問い続けてくる作品である。そして「海と毒薬」が最高にイかす所は答えが書かれていない点。明確な答えはおろか指針や方針すら描かれる事なく終幕を迎えているのである。過去の事件を知った男性が、当事者である医師に対して今後どう接するべきか?と男性自身が自らに問うているのだが、その答えすら描かれていないのである。偶然や必然が絡み合い発生した事件に至るまでの当事者個人の心理背景等が克明に(自伝的に)描かれているにも関わらず事後の様子は簡潔に書かれた裁判処理であったり当事者1名の自殺記録だけである。まさに未完の作品と言える。物語を展開させるならば、自殺した教授1名をピックアップして展開させるだけでも同頁分の作品が生まれるのでは無いか?と思える程に深いテーマを扱っているにも関わらず潔いまでの事後経過部分が抜け落ちている所も興味深い。「良心なぞ考え方一つだ」という台詞が作中に存在するが、これは「海と毒薬」の作品そのものを指す言葉なのかもしれない。未完部分を埋めるものがあるとすれば、それは読者の良心そものもではないでしょうか?埋まりそうで埋まらないパズルのピース。そんな作品。