人間の思考を超えた心的跳躍のかなた、究極の中心クロスホエン。この世界の中心より暴力の網は広がり、全世界をおおっていく・・・現代における“パンドラの箱”寓話を描いてヒューゴー賞を受賞した表題作はじめ、核戦争後、瓦礫の山と化したシティを舞台に力で生きぬくちんぴら少年と言葉を話す犬との友情を描く「少年と犬」など、全15篇を収録。米SF界きっての鬼才ハーラン・エリスンのウルトラ・ヴァイオレンスの世界。
背表紙紹介文より
本書を紹介する上で真っ先に伝えねばならぬ事は、いわゆる「セカチュー」と呼ばれる名作では無いって事。題名を聞いて平井堅「瞳をとじて」が流れ出して長澤まさみが思い浮かんだならば勘違いだと悟っていただいて今からツタヤにでも走ってレンタルして涙でも流してくださればよろしい。SFの世界では有名な本作品、本の逸話として表題タイトルがテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」最終話タイトルに引用されている事がよく取り沙汰されている・・・が実際エヴァ作者は本作品を読んでいないのだとか・・・どないやねん。
本書を一言で表現すると、「暴力」。全15篇も収録されているにも関わらず一切ぶれない作品のかもしだす暴力性に驚かされる、エリスンの描くSF世界はおよそ常識の範疇を超えている世界や舞台で繰り広げられており、また背景設定や細かな描写を読者に説明するといった生ぬるい空気など一切出さずに圧倒的空想物語を投げつけてくる辺りも挑戦的だ!ベッドルームで愛を誓った男女、その刹那男が女の父親をぶっ殺し女がベッドでゲロゲロしちゃう!そんな描写が出ても平気な方ならばハードボイルドな世界を堪能できるでしょう。全篇通じて胸糞の悪さは超一級品で、正直ついていけない話題も多い。しかし狂っているだけでなく各作品に恐ろしいまでの魅力が潜んでいるのも事実である。その魅力を紹介したい。僕が気に入った短編の一つに「星ぼしへの脱出」というものがある、惑星間戦争の最前線惑星でのお話、ある青年が惑星侵略の危機に際して最終兵器に改造されちゃう物語!主旋律だけ奏でればハリウッド級の超大作が出来上がりそうな物語もエリスン節が唸る!まずこの青年、末期の薬物中毒者・・・臆病で逃げ腰を買われて兵器として改造される事になる、しかも改造といってもサイボーグなんて生ぬるいものでもなく人間魚雷ばり非人道的犠牲兵器なのである。陰謀と孤独の中で生き抜く青年の姿は醜い、極限で目覚めた狂気は身震いすら感じる。ただ、絶望や孤独、殺戮や狂気の感情で進む物語の最後を飾る展開が素晴らしいのだ、戦局を大きく変える程の兵器に改造された青年がとる最後の選択は、ダークではあるが一種のヒロイズムに満ちた意思そのものである。そしてそれを勇気や決意なんて言葉で表現せず自然発生的に存在したかの様に淡々と描ける点がエリスンの恐るべき才能なのだろうと感じた。こういった隠れた感情を作品の中から見出すのも本作品の醍醐味ではないだろうか?その他オススメは「101号線の決闘」と「少年と犬」ですね♪特に後者は、ゲーム「Follout3」や映画「ザ・ウォーカー」等と酷似した世界観なので米SFイメージに最適な作品だと思います。SF読むならこれを読め!と言われて読んで、同じことを人に言いたくなる一冊。
