2023・2024年に「週刊文春」に掲載され、単行本化された本。
【あらすじ】
妻子のあるお笑い芸人の天童ショージ(35歳)が不倫をし、SNSによる誹謗中傷に耐えられず自殺する。
1981年に15歳でデビューし、80年代に一世を風靡した伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
元音楽ディレクターの瀬尾政夫は、天童ショージと奥田美月に対してSNSで誹謗中傷を繰り返した83人の加害者たちの個人情報(名前や年齢、住所、職場、学校など)を、枯葉というアカウント名で「踊りつかれて」というサイトから公開する。
天童を批判していた人々も掌を返し、今度はこの誹謗中傷していた加害者たちを叩き始める。
やがて83人の人生は次々と壊れていった。
瀬尾は逮捕され、罪に問われてしまう。
天童の中学校の同級生だった弁護士の久代 奏は、瀬尾の弁護を依頼される。
奏は瀬尾の生きて来た道をたどっていくと、この三人には深い繋がりがあった。
【感想】
「誰かが死ななきゃ分かんないの?」という問いかけは、重く心に響いてきました。
今まさに大きな社会問題となっている、SNSに対する警鐘であると感じました。
「自分が欲しい情報ばかりを集めて、都合よく解釈する」
閉鎖的な情報空間において価値観の似た者同士が交流・共感し合うことで、自分の意見や思想が肯定され、そのことによってそれらが世の中一般においても正しく、間違いないものであると信じ込んでしまうエコーチェンバー現象。
「真実(リアル)よりうそ(フェイク)の方が広まる」
フェイクニュースはリアルニュースよりも拡散されやすく、そのスピードは速く、範囲も広いと言われています。
フェイクニュースの方がセンセーショナルで目新しく、怒りや不安をあおるような内容が多いため、拡散されやすいそうです。
フェイクとリアルを見極めるために、ファクトチェック(社会に広がっている情報やニュース、言説が事実に基づいているのかどうかを調べること)がいかに大事なことかを、改めて考えることができました。
【雑感】
芸能界や業界の裏話がよく分かりました。
伝説の歌姫・奥田美月は、倉田まり子さんや中森明菜さんを頭に浮かべながら読み進めました。
主に昭和(1970〜80年代)に活躍されたの歌手やタレント、曲、映画などが実名で登場していたので、当時の自分自身が何をしていたのか、思い起こすことができました。
また、当時の歌番組が連想できる「ランキング・テン」「歌声ヒットステージ」や、オーディション番組「あしたのスター!」(あしスタ)も出ていました。
昭和は、お笑い芸人をはじめ役者、芸能人以外のプロ野球選手やプロレスラー、大相撲の力士などもレコードやCDを出していた時代だったなぁ、と振り返ることができました。
〔本書に登場したもの〕
昼メロドラマ「真珠夫人」
映画「評決」
映画「裏切りのサーカス」
映画「Shall we ダンス?」
映画「Love Letter」
小説「月と6ペンス」
映画「追憶」でバーブラ・ストライサンドが歌う主題歌「The Way We Were」
ショパンの遺作「ノクターン第二十番 嬰ハ短調」
江利チエミ「テネシー・ワルツ」
内藤やす子「NO MORE ENCORE」
トニー谷「さいざんす・マンボ」
丸山圭子「どうぞこのまま」
渚ゆう子「京都慕情」
ペドロ&カプリシャス「別れの朝」
あべ静江「みずいろの手紙」
菅原都々子「踊りつかれて」
アンドレ・ギャニオン「セピア色の写真」「シネマのように」「めぐり逢い」「踊りつかれて」
アンドレ・ギャニオンのアルバム「その風の頃」
瀬尾政夫のブログのタイトル「踊りつかれて」の由来は、アンドレ・ギャニオンの曲「踊りつかれて」からで、奥田美月もアンドレ・ギャニオンをよく聴かされて好きになったとのこと。
アンドレ・ギャニオンを接点に、瀬尾と美月と奏はつながっていたことが印象深かったです。
読みながら登場する曲が脳裏に浮かんで聴こえてきました。
私自身、アンドレ・ギャニオンさんの曲とは、1996年放送のドラマ「Age,35 恋しくて」で出逢いました。
ドラマの挿入曲は、哀愁が漂うイントロの曲想が多く、曲の後半から希望と未来が感じられる優しく美しいメロディーとなっていく、心安らぐ曲ばかりで、ファンになりました。
曲を聴いているだけでドラマの各シーンが、今でも思い浮かんできます♫
「潮騒」「雨降りの後で」「愛につつまれて」「麗しのアマンダ」「夜の舗道」「めぐり逢い」「さよならは言わない」「印象物語」「セピア色の写真」「小さな願い」「遠い夕陽」「朝もやの中で」「さよならの訪れ」は、私の特にお気に入りの曲です。
ぜひ、聴いてみてください🎶
