魂の歌が聞こえるか 真保裕一 | なほの読書記録

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【あらすじ】

主人公の芝原修は、音楽制作を手がけるカノン・ミュージックでA&R(アーティスト・アンド・レパートリー)として、音楽アーティスト(歌手、演奏者、バンドなど)や作家(作詞家、作曲家、ソングライター)の才能を発掘し、アーティストをサポートする業務(イベンターやマーケティングとして宣伝、広告、営業、販売、照明、音響、映像、音源製作、警備など)に従事する。


A&Rとして日々忙しなく仕事をこなす芝原は、部長からデビュー15周年を迎えるが落ち目となっている扱いづらいベテランミュージシャン御堂の担当を任され、苦行難行しながらも売り込んでいく。


ある日、送られてきたデモ音源の中から「ベイビーバード」という素晴らしいバンド(原石)を発見し、デビューを提案する。


しかし、芝原が見い出した天才バンド「ベイビーバード」はメンバーの顔や名前を出すことは望んでおらず、デビューすることが決まっても喜んでいるように見えない。


後半は、「ベイビーバード」の隠している秘密を解き明かすというミステリー展開でした。


​【真相の鍵】

「神様から与えられた贈り物」と言われるサヴァン症候群は、成長していくと急に能力が消えることもある。

サヴァンは、早産で生まれた者に多い。早く生まれ過ぎた子の命を救うために、高濃度の酸素が与えられ、その酸素と反応することで、脳の一部が急激に発達するのではないかと言われている。

さらに、女性よりも男性の方が5倍もサヴァンの症例が多い。
男性ホルモンの一種が、大脳皮質の発達を遅らせてしまうという研究成果がある。

大脳皮質は、右側より左側の方が後で発達していくと言われている。
左脳は言語や文字の認識や、情報処理の能力などをつかさどっている。

けれど、その機能が何かのきっかけで破壊されてしまうと、発達保障といって、脳を守ろうとニューロンの急激な移動が起きて、右脳が優位発達をしていく。

右脳は、音楽や図形の認識を受け持っている。

早産児の治療として高濃度の酸素を供給することで、ホルモンの分泌が崩れる。
遅れて発達するはずの左脳の機能が弱まってしまう。
代わりに、脳が飛び抜けて発達して、サヴァンが発症するという説もある。

つまり、遅れて発達する左脳が、機能訓練などで少しずつ回復することで、再びニューロンの移動が発生して、右脳の優位発達が消えてしまうということである。


ベイビーバードの石田俊介(ジュン)の弟のコウスケは、このサヴァン症候群の特性があり、どんな曲でもドミナントや代理コードを使ってあっさりと楽しそうに電子ピアノを弾いてしまう。
音色を自在に変えられる高機能の
5オクターブ61鍵のキーボードでも、ミスタッチなく曲をなめらかに奏でていく。


このことが本ストーリーの中で起こった事件(秘密)の鍵となっていました。

《「魂の歌が聞こえるか」真保裕一 著
講談社 刊より一部引用》