「第1話 コロッケ(三上沙也加)」「第2話 トンカツ(雑色みさえ)」「第3話 から揚げ(三上沙也加)」「第4話 ハムカツ(常連客の高津)」「第5話 カレー(三上沙也加・雑色みさえ)」「第6話 握り飯(三上沙也加)」「エピローグ(雑色みさえ・三上沙也加)」の全6+1話が収録され、各話の話し手(主人公)が変わる連作短編集。
第1話の「コロッケ」を読み始めると、
「あれ?この話、読んだことあるかも?」と思って過去の読書記録を振り返ってみたら、
「ほろよい読書」に掲載されていたお話でした。
離婚したい理由が分からない沙也加は夫の浮気を疑い、真相を探るため、夫が仕事帰りによく立ち寄って飲んでくる町の定食屋「雑」に行ってみる。
定食屋「雑」の店主、雑色みさえ(ぞうさん)は生き方が不器用だが料理に関しては
何となく、平野レミさんのような大胆かつ相手のことを考えて調理する人物で、高齢ながらも一人で店を切り盛りしていた。
沙也加は、定食屋「雑」でアルバイトしながら夫の浮気相手を突き止めようと考える・・・・・。
定食屋「雑」を舞台に繰り広げられる温かな人間模様が描かれていました。
性格も世代も考え方も異なる沙也加とみさえ(ぞうさん)は、互いによい方向に影響し合い、人生感や生き方、価値観や気持ちが少しずつ変化していき、コロナ禍を乗り越えて前向きに未来を切り拓いていくという、心温まるストーリーでした。
文字が大きくて会話文が多い短編集でしたので読みやすく、あっという間に読了しました。
第4話「ハムカツ」の文中で、旨味がすごいと紹介されていた秩父の武甲酒造の辛口の日本酒を飲んでみたくなりました。
また、鯛のかぶと煮の残った煮汁にそうめんを入れて煮た「鯛そうめん」をはじめ、各話のタイトルとなっている料理も食してみたくなりました。