>カバーアルバム
>タイトル:ACTOR'S THE BEST
>アーティスト:柴咲コウ
>リリース日:2023年 11月 29日
>記事作成日:2024年 1月 25日
聴きました!
どういう性格の作品集なのか、最初よく分かんなかった(笑)。いや、結果的にはアルバムタイトルその通りの意味合いだったんだけど。
最初、BESTというワードが目に入って“歌手・柴咲コウのベストなんだろう”と思ったんだけど、曲目を見るとそんな感じでもない。で、「あ、既発のカバー曲を集めたベスト盤か!」と思ったらそうでもない(笑)。もちろん純粋なオリジナルアルバムでもない。どういう事かと思ったら、役者さんとして関わった作品に関する楽曲を集めた作品集、つまり本当に“アクターとしてのベスト盤”でした。ご自身が提供した曲もあれば、俳優として関わった作品の主題歌をカバーした楽曲も収録されてる。
『静かな日々の階段を』
上記のコンセプトが分かってなければ、中々に謎な選曲からスタート(笑)。柴咲コウとラップ曲、ピースシチューとスケボーくらいの意外な組み合わせ。
…で、違和感がない事に驚いた。「きっとラップ部分も極力メロディアスに置き換えてるんだろうなー」と予想してたんだけど、(確かにそういう部分もありつつ)要所要所できっちりラップしてる感じがあって。でもまごう事なき柴咲コウだし…不思議。いい意味で不思議。
『月のしずく』
役名であるRUI名義でリリースした、ご自身の曲ですね。コレ初めて聴いた時、「ビジュアル的にお美しくて演技も出来る上に歌まで上手いのかよ」という、半ば絶望感みたいなものを味わった記憶があるな(笑)。
しなやかなストリングスとそれ以上にしなやかで尚且つ儚げなボーカルが絡み合う、美しいバラード。
『RIDE ON TIME』
大御所アーティストの名曲をカバー。なんちゅーか、違和感がない。大名曲なのでオリジナルアーティストのバージョンも勿論聴いた事はあるけど、柴咲さんの歌声で聴いても「コレがオリジナルだよね」っていう錯覚に陥る程、自然。
『思い出だけではつらすぎる』
柴咲さんのオリジナル曲。
伸びやかでしなやかな歌声に、流麗なストリングスが絡む。オーケストラの、“パンチ”は無いけど迫力が十二分な音が良い。リリース当時、この音でヒットチャートに食い込んで、いわゆる“J-POP”とやり合ってた訳ですよねぇ…リズム隊の重みとギターの歪みにモノを言わせる(?)J-POPに、遜色がないインパクト。凄い。
『いくつかの空』
ご自身の楽曲。
当時は、あまり歌詞に注目が向かず「綺麗なバラードだなぁ」「歌声が凛としていていいなぁ」くらいの印象だったのですが…今回は、なんか歌詞がぐいっと頭に入ってきて。それこそ、その凛とした歌声のおかげで、歌詞のメッセージ性がより深くまで刺さってきた感じ。
多分、別れの歌という解釈でいいんだとは思うんだけど…湿っぽさはなく、むしろ次の一歩を踏み出す指針をくれるような。人との出会いとか別れに限らず、人生の岐路に立った時に歩を進める勇気をくれる感じがします。
『Sign』
本作を手に取った理由の、半分くらいはこの曲かも(笑)。Mr.Childrenが描く普遍的な愛の歌を、柴咲さんの透明感のある歌声で。
恋愛ドラマアレルギーのあるぼくでも知ってる(見た事はないけど)、大ヒットドラマ『オレンジデイズ』の主題歌。俳優としての柴咲さんの出世作だと思うし、ミスチルにとっても2度目のレコ大受賞という節目の曲(この時代のレコ大は、1億円で購入するタイプの賞ではなかったと信じてる)。
オリジナルの持つやわらかであたたかな雰囲気が、より強調されてる感じがしました。とにかく優しい。
『瞳をとじて』
大ヒットチューンのカバーが続きます。平井堅さんの代表曲の、カバー。
この方の歌声は、本当に、“救いがある”。こんなに切なくて悲しい歌詞なのに、“悲しみに浸る”というよりは“上を向く”力を与えてくれる感じ。理屈というより、技術というより、声そのものに陽性のエネルギーが宿っているんだと思う。
『最愛』
柴咲さんの代表作である『ガリレオ』シリーズの、映画第一弾の主題歌。これ、オリジナルはしこたま聴いたなぁ…。切なさが胸をえぐってくる、“殺傷能力”が高いバラード。こちらは、オリジナルではなくてKOH+の最新EPのほうに収録されているリアレンジver。ストリングスが聴いていて、深みがあるバージョン。オリジナルが即効性だとしたら、こちらは遅効性のセンチメンタル。ゆっくりと、でも確実に胸を締め付ける。
『わたしが竜宮小僧だったとき』
ご自身が主演の大河ドラマの主題歌だったんですね。大河は見た事が無くて。曲タイトルだけ見た時には、なんかこう『まんが日本昔ばなし』的なヤツなのかと思ったけど(笑)。
わらべうたっぽい雰囲気。一度聴いたら忘れられなくなるような耳馴染みの良さと、そこはかとなくおどろおどろしさと、日本の伝統音楽特有の湿度感と…そういうのがない混ぜになってる。作曲、菅野よう子さんなんですね。楽曲の幅に節操がない(最高の褒め言葉)。
『silence』
オリジナルは、MuseKさん…どなたかのカバーかと思ったんだけど、柴咲さんの別名義だったんですね。知らなかった。
神経質とすら言えそうな程に集中力の高いピアノと、普段よりもつぶやくような歌い方のボーカルとの対比が面白い。
幾何学的というか、数学的な美しさのある曲。
『コール・ミー・クルエラ』
これもご自身の曲。初めて聴いたけど、最初の時点で「あぁこれはミュージカル音楽だな」と思った。結果、ミュージカル音楽ではなくディズニー実写映画でしたが…身振り手振りが大袈裟なくらいのまさに西洋的な映像作品に、よく似合うんだろうなーって感じの曲。
歪んだベースに、硬質なガットギター(多分)に、悲鳴のようなコーラスに…今回のアルバムの中でも、特に異質な曲。
『ヒトツボシ』
現時点で、KOH+としての最新曲ですね。ぼくはドラマ『ガリレオ』が大好きで、主題歌も『KISSして』『最愛』辺りはもう大大大好きで。そういう流れで当初この曲を期待値ガン上げで聴いちゃったので、「…あれ。悪くはないけどもぉ」とか思っちゃったんだけど(苦笑)。今回、変にハードル上げたりする事なくさらりと聴いたら、なんかとても良かった(笑)。シアトリカルというか、ちょっと大仰なアレンジではあるけれども、歌がその感じに圧倒される事なくちゃんと芯を食っていて、聴き応えがあった。
『銀の龍の背に乗って』
ラストは、中島みゆきさんの大ヒット曲。ぼくは今回、この大ヒット曲をサビしか聴いた事がなかった事や、そう言えば大ヒットドラマである『Dr.コトー診療所』を一切見た事がなかったなぁとか、色々気付く(笑)。
マイナーなメロディラインなのに、Bメロとかで急に(そして一気に)メジャーに展開する感じとか、歌謡曲感が凄い。こういう曲が2000年代にヒットするなんて、本当に日本人は歌謡曲が好きなんだなぁと思いました。その感性は、遺していくべきだと思う。日本人のアイデンティティとして。
そんな、計13曲。
バリエーション豊かな選曲。しかし一方で、アルバムとしての統一感もあって。凄くよく練り上げられた作品集だなぁと感じました。だって、Dragon Ashと中島みゆきの曲が一緒に収録されていて違和感がないって(笑)。
やっぱり、歌い手としてのこの方の事が好きだ。KOH+の相方の福山雅治さんもまさにそうだけど…ぼくは俳優さんが音楽活動をしていると「片手間でやってんじゃないの?」「俳優の知名度で音楽を売ろうとしてない?」みたいな嫌な見方をしちゃいがちなんですが、福山さんにしろ柴咲さんにしろ、音楽家としての魅力も認めざるを得ない域の人なんですよね。
今後もぜひ、音楽家としても頑張ってほしい。
お気に入りは、
#01 『静かな日々の階段を』
#02 『月のしずく』
#05 『いくつかの空』
#06 『Sign』
#08 『最愛』
#12 『ヒトツボシ』
この作品が好きなら、
・『あの歌-1-』/上白石萌音
・『BESTYO』/一青窈
・『BEST』/中島美嘉
などもいかがでしょうか。
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