>オリジナルフルアルバム
>タイトル:音楽
>アーティスト:東京事変
>リリース日:2021年 6月 9日
>記事作成日:2021年 7月 10日 





聴きました!

まさか、令和の時代に東京事変の新作アルバムの感想を書くとは…思いもしなかったなぁ。



『孔雀』
もう、のっけから、予想の斜め上過ぎる…。この曲における林檎さんと浮雲さんは、“ボーカル”ではなく“ラッパー”ですね。バンドの重厚で深淵なグルーヴの上で、かなり本格的なラップがうねる。
ねっとりと、じっとりとした日本の夏のような…そんな曲で幕開け。

『毒味』
亀田師匠のベースが豪快に、でもエレガントに鳴り響く曲。師匠のベースのみならず、すべての楽器が侘び寂びで成り立ってる感じ。存在感はあるけど前に前に出てこようとする感じではなく、適切なトコで出てきて適切なとこで引っ込む。とにかくこの曲は、演奏陣が圧巻。
これもまた、『孔雀』に続いてねっとりとむっちりとした感じの、アダルティなミドルチューン。

『紫電』
しっとりとしていて、なおかつ艶かしい…そんな雰囲気は引き継いだまま、この曲はもっとダンサブルな印象を受ける曲。ドラムスが、落ち着きがありつつかなり手数が多くて奔放さを兼ね備えてる感じがして。
組曲みたいに、いろんな展開を見せる曲。

命の帳
配信シングルでしたね。
これは…復活以降の事変を、象徴するような曲なんじゃないかと思います。日本的な侘び寂びと奥ゆかしさを前に出しながら、オトナの遊び心を炸裂させるという。それが、端的に現れている曲な気がします。

『黄金比』
シンセの鋭角な音が派手に耳に刺さってくるけれども、繰り返すうちに分かるのはやはり(特にリズム隊)の、生音のダイナミズム。リズム隊がこれ程までに安定しているからこそ、ウワモノのボーカルがこんなに映えるんだよなぁ。
ぼく的には、このバンドのメンツがまさに『黄金比』。

青のID
ゴキゲンなナンバー。ひたすらに伸びやかな林檎さんの歌声と、奔放でヤンチャな演奏陣と。全員が好き放題に勝手に好みの音を鳴らしているような雰囲気なんだけれども、実のところ呼吸のピッタリ加減が想像を絶しているという。奔放な演奏を聴いて「心配になる」のではなく「それを楽しめる」のって、手練れ揃いのこのバンドの音だからこそ。

『闇なる白』
シリアスな匂いのするピアノから始まる、林檎さんと浮雲さんのデュエット曲。事変は、どんどん、“ボーカリスト・浮雲”の存在感が増している。林檎さんの個性的な歌声に、クセの少ない浮雲さんの歌声はかなり高相性。

『赤の同盟』
ゴシック調というか、格式高い感じの音。いや、本作収録の曲はすべてそうなんだけれども、この曲はアレンジ的もサウンド的にもそれを強く感じます。ピアノが効いてるからかな。ロックな曲なんだけれども、ドレスコードがありそうな感じ。

『銀河民』
タイトルは物凄いスケール感ですが、曲の雰囲気としてはオトナ向きのバーって感じ。夜の匂いと、煙草の匂い。ぼくはまだ入れないクラスの、高級なバーの香り。ドキドキしちゃう。

『獣の理』
タイトルこそ物々しいですが、洒脱で軽快な曲でした。サウンド(音質)は引き続き重厚なんだけど、アレンジが小気味の良いもので、聴いてると少し心が軽くなる感じ。歌詞に関しては、そんなお気楽な感じでは無さそうですが…まだ意味がよく分かってない(笑)

緑酒
前曲の軽快な空気感を弾みにするようにして、更に軽快で聴きやすいポップチューンへ。
歌詞的には、ある意味で凄くヘヴィ。WBSのテーマソングだという事もあってか、今の日本で我々世代が生き抜く事に非常にキビシさを感じる…そんな風に色々考えてしまう歌詞です(苦笑) いや、別にそんなにネガティブな事を言ってる訳でもないんですけどね…。

『薬漬』
タイトルすげぇよな…。
前半の、トロンとしたエレピに蠢くベースにマイナーな響きが乱反射するギターに艶かしいウィスパーボイスのボーカル。そして、中盤で爆発する狂気。昭和の白黒映画みたいな重厚感。

『一服』
ラストは、むしろ“メインボーカル・浮雲”って感じの曲。凄くデジタルな質感の強いオケは、これリズム隊とかってどんな感じなんですかね? “バンドサウンド”ってよりも“EDM曲”ってイメージ。だいぶ低音に重きを置いた、野太いEDM。
切れ味鋭いサウンドは分かりやすくて、ノリやすい。『長く短い祭』を彷彿とさせる感じ。
歌詞は、これ…何⁉︎    こういうの、超好き(笑)



そんな、計13曲。

ぼくは当初、このバンドを“ギターロックバンド”だと認識していたんですけども、今回の作品で受けた印象は“ピアノロックバンド”。弦よりは鍵盤の面白味が生かされたアレンジが、とても多かったような印象を受けました。動きも多く言葉数も多くコード的にも“違和感(=面白味)”の強いボーカルラインも、「ギターを聴かせる」っていうコンセプトだったら絶対に選ばないようなものばかりだった気がするし。
折に触れていっているように、ぼくは(ご本人曰く)「フルテンでギャーン」のギターロックをこのバンド(及び林檎さんソロ)に期待し続けたままここまで来ちゃったんだけど(いい加減頭切り替えろ!と、自分でも思います)、その「フルテンでギャーン」とはもう完全に別物でした。
…一方で、それが嫌だったのか?と問われれば、「意外と良かった」という答えになる事に気付いたんですよね。今回のアルバム、アレンジと音の質感が本当に素晴らしかった。“詰めるところ”と“抜くところ”が絶妙なバランスで構成されていて、濃淡というか緩急というか侘び寂びというかそういう感じの使い分けが絶妙に配置されていた。「やってて気持ち良い」ものを突き詰め、しかし同時に「聴いてて気持ち良い」を与える事にも余念がないアレンジに、鳥肌が立つ感覚さえありました。そして音(そしてミックスのバランス)。低音の存在感が半端ない。かといって悪趣味な派手さは皆無で、常に上品なまろみを帯びている。低音にカネかけた、質のいい再生環境で聴いてみたい。何となくのイメージだけど、クラシックを楽しむために組まれた再生環境で本作を聴いたら、物凄く良さそうな気がする。
歌詞とか、メロディとか、そういう分かりやすいところで良し悪しを判断しがちなぼくにしては珍しく、「音が良かった」と思うアルバム。だから、「好きな曲が多かった/少なかった」というよりは、アルバムを通しで聴いていたい感じ。まぁ、半分は、「こんなにアダルティで“難解”さを伴う音楽を好意的に受け取れたぼく、素敵」という、おかしな方向の自己陶酔なんだと思うんですが(笑)





お気に入りは、
#01 『孔雀』
#02 『毒味』
#13 『一服』





この作品が好きなら、
・『Fantome』/宇多田ヒカル
・『接続』/AJICO
・『クチナシ』/Cocco
などもいかがでしょうか。





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