>オリジナルフルアルバム
>タイトル:Fantome
>アーティスト:宇多田ヒカル
>リリース日:2016年 9月 28日
聴きました!
宇多田さんの新作をまた聴ける喜び。兎にも角にも、まずはそれに尽きますよね。
あんな感じで第一線を離れて、もう二度と戻ってこないパターンも多いですからね…そうならなくて、本当に良かった!
ではでは早速、新作の感想へと。
『道』からスタート。
もう…宇多田汁100%!(笑)ダンサブルなビートに、メロディアスなボーカルラインに、独特な言葉の選び方&乗せ方に、、、その全てに「おかえりなさい」と言いたい!
しゃべり言葉に近いフランクな歌詞なのに、曲全体で感じれば凄くクールで都会的で。そのギャップに、ソッコーでヤラレます。
インパクト大の歌詞&トラック、『俺の彼女』。
オトコ目線…厳密には、「女性が再現するオトコ目線」だと思うのですが…で展開する歌詞が、新しくて懐かしい。思えば「歌謡曲」の時代って、歌い手の性別に関係のない歌詞って結構ありましたからね(最近も、何故か女性のソングライターは一人称を「僕」にした歌詞を量産してますけど、それとは違うと思います)。そういう意味では懐かしい感じがするんだけど、そこで描かれる男性像だとかトラックの雰囲気自体は、まさに現代的と言える感じで。そういう諸々を含めて、「新しくて懐かしい」。
宇多田さんがドスを効かせて「俺の彼女は〜」って歌い始めた時点で、この曲は「勝った」と思います。インパクトが半端ない。
先行配信シングルの、『花束を君に』。
ストリングスがふんだんで、リズム隊はシンプルに刻んでいて。なので配信時に単体で聴いた時には正直、宇多田さんの従来の作風から比べ物足りなさを(少しだけ)感じた記憶があるのですが…こうしてアルバム全体を通して聴いてみると、この曲の良さが一気に伝わってくる感じがします。派手さはないけど、まっすぐに伝わってくる想い。この曲は、歌詞のメッセージ性を伝えるために全ての要素が組み立てられているように感じました。
椎名林檎さんとのデュエット、『二時間だけのバカンス』。
同期デュエットですね。かつ、宇多田さんのトリビュートに椎名さんが参加されたりもしていたので、親交があるのであろう事は知ってましたが…それにしても意外な組み合わせ。「意外」というか、、、豪華過ぎるでしょ!この名前が並んでるだけでドキドキしちゃうわ。
ヴィンテージ感のある演奏陣の音を従えて、そこはかとない艶かしさが香るミドルチューン。個性の強いふたつの歌声がつむぐひとつのストーリー。聴き応え充分!
ハープの音が流麗な、『人魚』。
中盤からバンドのアンサンブルが加わり、段々と音が厚くなっていく過程が何だか気持ちいいです。
夜明けを眺めるような、もしくは夕暮れを見届けるような、そんな穏やかさと少しの切なさが香る曲。
ダンサブルに、『ともだち』。
野太いビートはそれでも重たさがなく軽やかで、そこに絡むギター(ガットギターかな?)のアルペジオも同じくらいにアグレッシブで。
歌詞の世界もストーリー性が強くて面白いし、メロディラインもトリッキーなのに耳馴染みが良いし、だけどもこの曲で一番特筆すべきところとしてはトラックのオシャレさだろうなと、少なくとも僕はそう思いました。
配信シングル、『真夏の通り雨』。
日本的な情緒が詰まった曲。それは「日本音階を使ってる」とかいう分かりやすい範囲の話ではなくて、侘び寂びというか何というか、そういう「空気」が日本的なのです。
ゾクりとする程に、美しくて繊細な曲。
再び野太いビートがうねる曲になって、『荒野の狼』。
ウーファーだけに着目するならば「R&Bを得意とする宇多田さんの十八番」って感じもするのですが…ブラスのパートを聴くと、なんだかポップでキャッチーで陽性のニュアンスがあって。その両者を組み合わせてくる辺りに、さりげない新機軸を感じます。
KOHHさんを迎えての、『忘却』。
荘厳で厳粛な空気のイントロを経て、まず真っ先に炸裂するのはKOHHさんのラップ。そこで展開される内向的でネガティブな言葉の羅列は、宇多田さんの包容力ある歌声で救われる感じがします。
クールなんだけどポップな曲、『人生最高の日』。
派手ではないんだけれども、日常の中にある身近な幸せを思わせるような曲調。
深みは相当に増しているけれども、曲の雰囲気や色合い的な感じで言えば『Distance』とかに近いかもなー、と思ってみたり。
最後は、配信シングルだった『桜流し』。
この曲、配信リリースからもう4年も経つの⁉︎まずはそれにびっくり!年々、時の流れが早くなってきます…。
で、曲の感想へ。ピアノとストリングスを中心とした、壮大で雄大な曲。
聴く人によって、そして聴くタイミングにもよって聴こえ方が違うだろうなーという曲です。時に絶望の歌であり、時に希望の歌。
そんな、計11曲。
いやぁ…圧巻。これだけのブランクを経て、これだけシーンが変動していて、その中でも守りに入る事なく奔放に音楽を創っているんだなぁと、それがよく分かる一枚でした。
もちろん、同じコンポーザー、同じソングライターなので、過去作と共通する独特の「色」というのはありました。でも、「○○っぽい」とか「△△かと思った」とか、そういう曲は1つもなかった!全てが、新しい宇多田作品でしたよ。
しかし…以前よりも少し難解になりましたかね?以前から…それこそデビュー作『Automatic』の頃から「大人びて」はいましたが、本作はそこを超えて「大人な」作品だったと思います。
これ程に音楽至上主義な作品が、2016年のシーンにおいてもトップを獲れるという事が、結構嬉しかったのです。
だって、投票券も握手券も付いてなければ、初回盤のタイプごとに違う楽曲が収録されているわけでもないんですよ?
純粋に音で勝負をして、それで勝利した事にとてつもない喜びを感じるのです。
お気に入りは、
#01 『道』
#02 『俺の彼女』
#04 『二時間だけのバカンス』
#06 『ともだち』
この作品が好きなら、
・『日出処』/椎名林檎
・『diverse journey』/YEN TOWN BAND
・『アダンバレエ』/Cocco
などもいかがでしょうか。
iPod nanoにも入れておきたいレベル(^.^)
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