>オリジナルフルアルバム>タイトル:クムイウタ>アーティスト:Cocco>リリース日:1998年 5月 13日>記事作成日:2019年 6月 8日




久しぶりに聴きました!
“あの頃はよかったシリーズ”!!!不定期でもちょくちょく継続していく事にしました、このシリーズ。コンセプトとしては…「最近の音楽シーン、ちょっとつまんなくない?」「それって、単なる懐古趣味とは違くない??」という印象を禁じ得ないぼくが、往年の名盤に再度刺激を貰いたい!!!…という事で、「あの時代のシーンは面白かったよなぁ」という時期の音楽作品をぼくの独断と偏見でピックアップするっていう。そーゆーコンセプト。
今回はCoccoさん。一旦ね、音楽活動から離れた時期がありましたが。本作は、その活動休止よりも前の時期…というか、この完成度でまだ2nd.アルバムだったんですね!   刺々しくて、悲壮感すら漂う作風だった時代の作品です。


『小さな雨の日のクワァームイ』わらべ歌的な雰囲気の曲からスタート。人懐っこいメロディなのに畏怖のような本能的な“怖さ”も感じる…そんなわらべ歌の、そのテイストが正に再現されている曲。まぁ、本作のタイトル自体が、沖縄の方言で子守唄を意味するそですからね。そういう意味では、本作のイントロダクションとしては最高の一曲。
『濡れた揺籃』前曲の伴奏なしで訥々と歌われた曲調から一転して、ヘヴィでラウドなバンドサウンドの『濡れた揺籃』。揺籃…読めなかった(笑)。ようらん、ゆりかごの事らしいですね。「濡れた」の言葉が象徴するように、新たな命を喜び讃えるような幸福感のある曲ではなく、ある意味ではむしろその真逆のような世界観の曲。この時期のこっこさんを、とても象徴するようなサウンド。
『強く儚い者たち』名曲。控えめに言って、名曲。とにかく優しくて、美しいサウンド。でも、人っていうのはつくづく、“優しいだけ”“美しいだけ”には惹かれないんだなぁと思わされる。この曲ももちろん「優しく美しいだけ」ではなく、そこに圧倒的な感傷がある。喪失感というか、虚無感というか…ぽっかり穴の空いたような、そんな感覚。それがサウンドによく表れていて、歌詞の持つ世界観を最大限に具現化している感じ。そう、歌詞ね。強烈にシニカルで、でも圧倒的にピュア。ピュアだからこそその皮肉が殺人的に鋭利に響くし、鋭利だからこそ純真が純真として光る。この歌詞は、後世に語り継がれるべき(大げさじゃなく)。悪い引き合いに出すのは気がひけるけど、こんなフルボディ的歌詞を知っちゃうと、最近の「会いたい会いたい」とか言ってるだけのような歌詞に「…」ってなる気持ち、分かってもらえるのではないかと。
『あなたへの月』これもまた悲壮感が漂う…その悲壮感が圧倒的に甘美で魅力的な曲。こんなにラウドなサウンドなのにこんなにもメロウ…この時期のこっこさんの作品は、もちろんこっこさんのソングライティングの素晴らしさもありつつ音作りも神がかり的なものがありましたね。
『Rose Letter』場末のライブバーでのプレイ的、特に前半にはそんなイメージを受けるサウンド。それくらいに、それぞれの音が生々しく響いている。ドラムスが淡々と奏でるリズムに、ざらっとした質感のアコギが武骨に重なって。そこに、しなやかで艶やかな歌声が重なる。後半ヒステリックに絡むシンセもいいです。
『My Dear Pig』一気に、牧歌的な雰囲気へと転換して。いや、ただ“可愛い” “楽しい”な曲をこの流れに入れ込むわけがないんですけどね(笑)。歌詞で言うなら、本作中で最もストレートに怖いかも。こんなに可愛いサウンドで、こんなにキャッチーなメロディで、こんなにグロテスクな物語…人間の業のようなものを感じます。
『うたかた』緊張感が張り詰めているストリングスとボーカルという編成の曲。ストリングスにしろボーカルにしろ、圧倒的にしなやか。しなやかで、美しく、そして悲壮。この曲は、言葉を重ねて感想を述べるべき作品ではない気がする。
『裸体』オールディーズのレゲエ的なグルーヴから始まってエッジの鋭いハードロックにつながっていく、『裸体』。もう、その混沌とした雰囲気には、ある種のプログレを感じます。サウンドというよりも、精神的プログレ。中途半端な人がやると野暮ったくなりかねないこの感じだけど、もう本当にドキドキが止まらなくなりますからねぇ…こっこさんは、“本物”ですよ。
『夢路』美しいタイトルだな、『夢路』。アレンジ面では比較的王道な感じのロックバラード。ヴァースにはドキドキするような緊張感がありつつ、サビでは包容力がある感じで優しく展開する。もちろん、曲全般としては悲壮感みたいなものはあるんですけどね。
『SATIE』アコースティックサウンドのワルツ。歌詞カードの和訳のほうを見ると、決してハッピーな歌詞ではない事が分かるのですが…サウンドと声の“表情”を聴く限りでは、このアルバムに似つかわしくないとすら言えそうなくらいに優しくてあったかい質感の曲。でも、このサウンドだからこそ、この歌詞のラストが映えるとも言えるんですよねぇ。
『Raining』大名曲。控えめにいって、大名曲。歌詞に関しては…とやかくは言えない。ぼくは常々、作詞者の私生活と歌詞の内容とは切り離して楽しむべきだと思っています。でも、こっこさんの歌詞は、こっこさんのパーソナリティとは切り離せないものだと思うし、特にこの曲は切り離す事なんか出来ないと思うんですよね。だからこそ、迂闊にとやかくは言えないという思いが…でも、この歌詞に感動する人、勇気をもらう人はかならず居るから。だから、この歌詞は、下手な事は言えないけど圧倒的に素晴らしいものだと思っています。メロディも、サウンドも、何回聴いても聴くたびに鳥肌が立つんです。圧倒的に美しくて、それ以上に儚い。でも、そこにはたしかに力強さもあって。歌詞にしろ、音にしろ…聴くたびに、心が揺さぶられます。ぼくの解釈でしかないけれども、ここまで“生”を礼賛している曲は他にないと思う。
『ウナイ』ラストチューン。穏やかで優しい曲。自然への畏怖というか、尊敬というか、礼賛が感じられます。それは近年のこっこさんの活動に通じる部分もある。『ジュゴンの見える丘』とかを聴いた時の感動に、近いものがあります。


そんな、計12曲。
多分、(少なくともこの時期は)音楽をやるのが“苦しい”タイプのアーティストさんなのだと思います。近年、多くのシンガーソングライターは“創作した物語を朗読する”感覚なんじゃないかと思うんですが、こっこさんは“自伝を朗読する”感覚に近いと思うので。でも、表現する事で救いにもなる事が、活動再開以降には気付けたのかなぁって。この方とか、(昔の)ミスチルの桜井さんとかを見てると、ほんとに痛々しい感じがして、でもそれがナマの痛みだからこそ、深く共感出来るしその言葉やその歌詞を心から信用する事が出来るんですよね。
最近の若い人は、「音楽なんてもっとさらりと楽しみたい」って人が多いように感じるのですが…こういう作品を聴いて、一旦その圧に打ち負かされて病んで、そこから希望の光を見出して…そういう風に音楽を聴きながら大人になっていってほしいなぁって。そんな事を感じたりするわけですよ(笑)。
とにかく本作は、マスターピース中のマスターピースだと思います!




お気に入りは、#01 『小さな雨の日のクワァームイ』#03 『強く儚い者たち』#06 『My Dear Pig』#07 『うたかた。』#11 『Raining』#12 『ウナイ』




この作品が好きなら、・『LAS VEGAS』/鬼束ちひろ・『標本箱』/黒木渚・『無罪モラトリアム』/椎名林檎などもいかがでしょうか。




CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/









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