夫と息子とは別行動になることは最初から分かっていた。だから待ち時間にやることを決め、読み物も持参した。50分で見終わった私と2時間半以上かけて鑑賞した2人。

 

まったく趣味が合わない。私は作品の説明を読んでも実物を見ても忘れてしまう。だから、さらっと見て、雰囲気を味わうだけで充分なのだ。絵画も音楽も映画も小説も同じ。

 

売店の前のベンチで読み物を広げ、ブログを書き、少し仕事をして、2時間弱を有意義に過ごした。時間差は有効活用できる。プロポーズしたのも美術館のベンチだった。

 

私が ≪ On va se marier ? ≫(「結婚する?」)とカッコよく決め、夫がしおらしく ≪ Oui ≫ と返事したのは23年前。夫に配偶者ビザを与えるための手っ取り早い方法だった。 

 

 

中之島に来るのは久しぶりだった。私は20代後半、真ん中にあるビルで1年半だけ働いていた。夫は20代後半から40代後半まで実に18年間、ここ中之島で働いていた。

 

夫がカツラを被っていた頃(笑)、私が女装していた頃。新婚の初々しさが残っている。偶然、徒歩5分圏内で勤務することになった1年半、週1回、ランチしていた。

 

再開発され、大きく変わった街並みを眺めながら3人で歩くのは不思議だった。16歳になったばかりの息子は高校で美術を学んでいる。

 

 

目的地に到着した。2022年に開館した大阪之島美術館。ずいぶん前から土地だけは確保され、私たちも川縁でランチデートしながらぼんやり眺めていた場所に巨大な美術館が出現。

 

 

開場時間の少し前に着くと、既に列ができていた。今日が展覧会の最終日だったからか。2021年から世界を巡回し、ここ大阪が締め。ロンドンへと戻っていく。

 

 

芸術に疎いのに情報を見つけて外出を提案するのはいつも私。テート美術館には10年ほど前、母とロンドンを旅行した時に行ったことがある。

 

 

目的は、ウィリアム・ターナー(William Turner)の作品鑑賞。でも、作品を初めて見たのはフランスだった。記憶が正しければ、留学先のナント(Nantes)の城で特別展を見た。

 

ロワール川を描いた作品を中心に展示されていたと思う。1人で鑑賞。その柔らかいタッチが気に入り、ロンドンでは母と2人で、今回は家族3人で出掛けた。

 

 

「ターナー、印象派から現代へ」と銘を打っているが、光がテーマで、ターナー以外に、私でも知っているカンディンスキーやロスコの作品もあった。

 

 

これは夫が描いたロスコのイミテーション。うちのリビングに飾ってある。夫は芸術大学を出ている。絵画や音楽にほんの少し詳しくなったのは夫のおかげ。

 

 

これは、息子が田舎に帰省中にささっとペンで描いたピカソの模写。高校の宿題だったそうだ。なんだ私の家族、芸術一家じゃないか。

 

この冬休み、息子は大きなキャンバスを持ち帰り、制作にかなりの時間を費やしていた。息子らしいキャラクターが勢揃い。カラフルで、みんな笑顔。夫が描く絵とは全く違う。
 

その名も「Creative creature」たち。
 
説明を読んでも、作品を見ても忘れてしまうけれど、自分の書いた文は忘れない。作品の説明はやはり大事だ。どうせ先生が添削するならと、息子の下書きを参考に私が書いた。

 

モノトーンなビルや工場が建ち並ぶ地球に宇宙人がやって来て、カラフルな世界に変えていく。均一的な大量生産、大量消費社会からエコフレンドリーで個性があふれる社会へシフト。「量より質を大事に」という想いで、このイラストを描きました。

 

今日のランチ。仲良し父子。私は一人で自由でいられる。つまり一家安泰だ。

夫のオススメのレストラン候補1が梅田へ移転、候補2は週末につき閉店。下調べの甘さを私になじられ「だから人生も計画通り行かないんだよ!」と悪態をつかれた後の満面の笑み

 

後日、日本語レッスンのホームページに3か国語で投稿した。↓