「毎朝、何を食べますか。」

「何時に朝ごはん食べますか。」

 

初級レベルのレッスンで当然のように出てくる例文。学習者の人数が増えてくるにつれて朝ごはんを食べない人が一定数いることを知るようになり、食に関する意識が変化した。

 

なかでもUさんの存在は大きい。来日前はズンバとピラティスのインストラクターだったそうだ。早朝からジム通い、またはアルバイトをした後、午後は日本語学校で勉強。

 

筋肉が付きにくい私は、その筋骨隆々の体が羨ましくて、体型を維持するために、どんな食生活を送っているのか興味津々だった。

 

ある時、1日1食しか摂らないことを知り、私が驚いていると、「Shizukoさん、人間の体はもともと1食で済むようにできているんですよ。」と手を叩いて笑っていたUさん。

 

しばらくして東京へ引っ越していった。元気だろうか。食事する姿を見たのは一度きり。レッスンが始まる前にサンドイッチを頬張っていた。恐らくその日の食事はそれだけ。

 

こんなことも言っていた。「breakfast は break fastでしょ。」と。母語の仏語でも(petit) déjeuner。こちらもjeûner(断食する、絶食する)をやめることか。なるほど。

 

去年あたりからレッスンで冒頭の例文が出てくると、まず「朝ごはんは食べますか。」と確認するようにしている。それに加えて気を付けているのが何を食べて、何を食べないか。

 

初級のレッスンで食の話題は必ずといっていいほど取り上げられる。皆がファストフード店に行くわけでも肉や魚を食べるわけでもない。つまり↓これが使えない場合もある。

 

(国際交流基金提供、無料ダウンロード可の教材『いろどり』。音声付きで教える側も学ぶ側も本当に助かる。)

 

私のレッスンを受けている人の中にも健康上の理由から肉を摂らない人が複数いる。その一人、上級レベルのVさん。体験レッスンの時点でベジタリアンだと教えてくれた。

 

テーマを決めて情報や意見交換がしたいという依頼を受けて、こんなメールを送ってみた。

 

先週、Lさん(Vさんの夫)とのレッスンでペットについて話しました。
それで、ペットに関する文章を選んでみたのですが、動物愛護とか菜食主義とか、もう少し広いテーマで話ができればと思っています。

最近、フランス語の試験勉強で« Quels droits pour les animaux ? (動物の権利)» « Être végane, le véganisme »という2つの記事を読みました。
1時間で足りるか分かりませんが、ぜひ、Vさんの意見を聞いてみたいです

 

すると、期待どおり食い付いてくれた。

 

教材ありがとうございます! ベジタリアンとしてとても気になるテーマ。やっぱり一時間で話しきれそうもない!

志津子さんがこのトピックに興味がある理由もぜひ知りたいです。

 

事前に送っておいた記事の語彙や表現を確認した後、「肉を食べないのは動物愛護の精神から?それとも健康のため?」と率直に聞いてみた。

 

5、6歳の頃から自主的に肉と魚を食べなくなった(食べたくなくなった)、一人暮らしを始めてから完全に食べなくなったとのこと。

 

乳製品は食べるし、医者に相談して、最近は栄養補給のためにツナやサーモンを食べるようにしているらしい。そこで、数か月前に受講したヨガ哲学セミナーの話を持ち出した。

 

 

どうやら、あまりヴィーガンを好きではなさそう。立場によって、いろいろこだわりがあるらしい。こういった対立は食だけでなく、どの分野でもあるから理解できる。
 

私からは日本語レッスンだけでなく、仏語の試験勉強を通じて食に対する考えが変わってきたことを伝えた。というのは練習問題にも実際の試験問題にも本当によく出てくるのだ。

 

1年前の試験では学校給食にベジタリアンの曜日を設けることに対する論争。2か月前の試験でも肉食から菜食への移行を阻むものについて。そして1か月前(どんだけ試験好き)の試験では動物愛護に関する作文が課された。

 

Vさんも、この出題傾向にはびっくり。さらに驚かせてしまったのは、うちの夫がベジタリアンに関心があると言ったのを10年前には撥ね付けた私がこんな話をしていること。

 

夫の場合、健康面でも動物愛護精神でもなく環境問題が根っこにある。さて、私は日本語学習者や夫、それに試験勉強で読んだり聞いたりした素材に洗脳されているのか否か。

 

と、明日から遅めの仕事始めという前日の夕方に問題提起。結論が出るにしろ出ないにしろ、私にとっては大事なテーマなので仕事の合間に考えて、ブログに記してみよう。