相手の要望に応え、テーマを用意。今までに扱ったのは

・生成AIを含む人工知能
・動物愛護と菜食主義
・人間の欲と環境問題

 

それぞれ事前に参考となる文章を送り、そこから上記の話題へと広げるようにレッスンを構成した。使ったのは私が去年お世話になった英検の教材。

 

日本人向けの文章だからレベルはJLPT N1以上だけれど、日常的に日本語で小説を読んでいる相手にはそれほど難しくなさそうだった。

 

遡ること1年。相手は「N1の試験勉強をすればするほど分からない言葉が出てくる。」と嘆いていた。ちょうど仏語の試験(TCF)を目前に控えていた私も悩みを吐露。

 

こうして私たちは試験仲間となった。相手はどう思っているかはともかく、私は同志のように思っている。そんなVさんは来日6年目で、日本語を本格的に学び始めたのは3年前。

 

半年にわたる独学を終え、今年7月にN1を初受験し、見事に合格した。その知らせは、ご本人ではなく、週1回レッスンでお会いする旦那さんから間接的に聞いた。

 

9月末、久しぶりにご本人とレッスンをした時、試験対策、本番、今後の学習等について聞き取り。日本語を教える立場としてだけでなく、外国語を学ぶ立場としても関心があった。

 

180点中132点、つまり7割以上の正答率だったというのが頭に残り、1か月後に仏語の試験(DALF C1)を控えていた私も7割以上を目指そうと再び奮起した。

読解の配点が1/3を占めるJLPT N1。非漢字圏の出身者で独学、初受験で、この点数は大したものだと思う。

 

 

試験の言語も内容も形式も異なるが、合格の喜びを共有できる相手がいるのは、孤独な試験勉強の支えとなる。しかも、Vさんと私はお互いの母語を学習している。日本語と仏語。

 

出会ったのが1年半前とは思えないほど親近感がある。体験レッスンでは相手の深層心理を知ることになった。その後も話題は大抵、人間関係や社会問題に辿り着く。

 

 

勝手な思い込みかもしれないが、大学で自ら心理学を専攻した人には共通の特徴があるように思う。18かそこらで「心」を学ぼうとするのだから。

 

私も文学部出身の端くれだが、そういうわけで同じ学部の中でも心理学専攻に(それに哲学専攻の人にも)一目置いている。私は両方とも一般教養科目でほんの少しかじった程度。

 

このVさんの専門が心理学だと聞いて、納得した。ちなみに仏語も日本語も相手との距離を測る道具がある言語。普段、私たちは日本語でまさに心理戦を楽しんでいる。

 

先週は珍しく仏語で返事が届いた。私が送った日本語によるくどくどしい謝罪メールに対して。レッスンの前日にドタキャンしてしまったのだ。理由は風邪で声が出なくなったから。

 

クリスマス休暇に帰国される方一人を除いて、結局、先週の全てのレッスンをキャンセルすることになってしまい、反省。なかでもVさんとは数か月ぶりのレッスンだった。

 

いつも忘れた頃にレッスンの予約が入り、ふらりと現れるのだが、実は確実な日時を選んでいるのは何となく分かる。心身ともに繊細で、消耗しやすい性質なんだと思う。

 

今年中にレッスンできなかったら心残りだった。来週こそ体調万全で臨めるように。「試験仲間」に結果、過程、そして今後について報告することで、2023年も無事に締めくくれそうだ。

 

余談

ご夫婦、別々にレッスンを受けてくれるので、それぞれの別の一面を知ることもある。Lさん(旦那さん)によると、このVさん、試験日に「もう帰りたい」と泣き言を吐いたらしい。

 

読解の時間が足りなくて、全問を解くことができず、前半の試験が終わった時点で電話してきたのだとか。「今まで努力してきたんだから後半の試験も受けなさい」と諭され、最後まで頑張ったそう。

 

もちろん逆バージョンの逸話もある。微笑ましい二人だ。