催促のメールを送る時、胃がキュッと痛む。できることなら送りたくない。私にも経験がある。

 

営業事務でお客さんと社内他部署の板挟み。一般事務で会員企業に年会費支払いの催促。大学事務で外部の偉い先生方に事務連絡などなど。

 

外国語で催促するとなると、強さの匙加減や丁寧さの度合いも分からない。これは日本語学習者が実際に送ったメール。

 

ちょっと確認したいんですけど、ご入金は難しそうでしょうか。何か不明点や質問などがありましたら、ご連絡ください。😊  お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

 

アニメが好きで、そのグッズを海外から取り寄せるために思いついたのがグループオーダーだったそうだ。その取りまとめをしている。
 
皆で送料を折半すれば負担が少なくなるし、英語でのやり取りが苦手な日本人にとってはネイティブが間に入ってくれるのは助かる。

 

4月から始めたグループオーダーは、アニメ愛好家の間でそれなりに需要があるらしい。日本語を使う機会がないと嘆いていたのが、突如、日本人とやり取りすることになった。

 

なかにはルーズな人もいるようで、冒頭のメールは商品代金を払った後、音信不通になった相手に送った催促メール。送料が払われないのでグッズが発送できず困っているらしい。

 

2回目の催促メール↓。習った文法を駆使して、語彙や表現はネット検索して頑張って書いているのが伝わってくる。

 

お世話になっております。お振込みのリマインダーを送るつもりです。金曜日の朝までに入金を確認できましたら、荷物を発送いたします。よろしくお願いいたします。🙇‍♀️

 

たまにレッスン中に「あのー」と苦笑いしながらメールの書き方を質問される時もある。3回目の催促メールは一緒に考えてみた。まずは状況の説明。

 

お世話になっております。Aさんのグループオーダーの送料の件ですが、まだお振込みの確認ができていないので、もう一度連絡いたしました。

 

1回目、2回目とは違う催促の仕方をあれこれアイディアを出し合って考え、結局、ここに落ち着いた。グッズは縫いぐるみ。

 

すみませんが、荷物が少し大きくて、場所を取るので、できるだけ早目に発送させていただきたいと思っています。

 

最後に支払期限を定めて、丁寧に、ただし、しっかり催促した。この方との最終レッスンは27日だったが、その後、どうなったか聞いていない。

 

お手数をお掛けしますが、送料を12月23日までにお支払いお願いいたします。

 

「来年の目標は敬語をマスターすることですね。」と半ばおどけながら様子をうかがうと、相手は「自然な日本語も話せないのに」と謙遜する。

 

ところで、「正しい敬語って何だろう」「自然な日本語って何だろう」という気持ちで、毎朝、少しずつ読んでいる記事がある。

 

 

日本人の中に「私、敬語、完璧です。」と胸を張って言える人がいるのか。20年に渡って、職場を転々としてきた経験から、敬語ほど時代や場所によって変わりやすいものはないと思っている。

 

例えば、4年前まで勤めていた職場にハキハキ、テキパキ働く同僚がいた。よく通る声で「おっしゃられる」と言うのを聞いて、あちゃ~と思っていたのだが、言葉は変わっていく。

 

先月、毎年1回通院しているクリニックに予約した時、「その日は先生、出張されているんです」と聞いて、「あれ?」と思ったが、お隣の韓国では絶対敬語だしと考えてみた。

 

敬語が発達していない言語はもちろんのこと、敬語を使う言語でも使い方には違いがある(日本語の相対敬語に対し、韓国語の絶対敬語等)。

 

外国人にとっては、日本人が内と外で敬語を使い分けるのは不可解なんだろうと想像してみる。

 

と、年内に書こうと思った文章を元旦に書いている。この学習者とのレッスンが始まって今月で丸3年だ。これからも日本語の「不可解さ」「もどかしさ」を共有し続けたい。

 

この方とのレッスンは毎回、文法と語彙プリントの答え合わせから始まる。少し前から作文に盛り込んでくる形容詞が、まさに「もどかしい」。

 

2回挑戦するも今のところ、なかなかピタッと文に当てはまらない。短期的な目標は形容詞「もどかしい」を適切に使えるようになること。中長期的な目標は日本語を使う時の「もどかしさ」を軽減することか。

 

Tさん、今年もよろしく。