私は大阪からですけど、どちらからですか?
オンラインレッスンで初めてお会いする方に聞くようにしています。特に意味はなく、挨拶代わりの質問です。
家にいながら遠方に住む人と話せる、というのはオンラインレッスンの面白いところだと思います。
<方言コンプレックス>
冒頭の質問「どちらから?」の返事が「東京です」の場合、脳内に緊張が走ります。相手がたとえ東京生まれ東京育ちでなくても。
内心、まぁ、気取っちゃってと思っているのですが、現地では、きっと、あれが普段の話し方なのでしょう。家でもあの話し方では、くつろげないだろうに、というのは余計なお世話かと。
という私も、家では外国語と日本語が半々です。慣れれば日本語を使わないほうがかえってリラックスでき、日本語と離れる時間、空間を持つことで母(国)語を客観視できる気がします。
話をオンラインレッスンに戻し、今までに画面越しにお会いした東京在住の方はみなさん、こちらが圧倒されるぐらいのお喋りでした。
予め用意しておいた質問の半分もできず、参考になるサイトにいたっては全く紹介できないままレッスン時間終了ということも。
話を聞いて欲しいだけの方もいらっしゃるようなので、まぁいいかと思うようにしています。
以前、読んだ本には、レッスンを提供する側の役割として、
①教えないこと
②環境(コミュニティ)を作る
③動機付け
④共感・傾聴
⑤学習方法とリソースを提案する
⑥(学習者に)質問する
が挙げられていました。ご相談を受ける時は、④と⑥を中心に③と⑤ができれば、ある程度満足してもらえるのではと思っています。
私が住む地域は、「どうも。」より「ありがとう。」が使われ、しかも、アクセントは後ろに来ます。京阪式アクセントです。
ある時、不思議に思ったのは、ヨガレッスン終わりの「ありがとうございました」は、ここ大阪でもなぜか東京式アクセントになること。
心身を研ぎ澄ました後に京阪式アクセントは似合わない、のが理由だと思っているのですが、実際のところはどうなんでしょう。
それはさておき、確かに「ございます」を付けると、東京式アクセントに近づくようです。私にとっては京阪式アクセントの「ありがとう」との使い分けは丁寧さよりも親しさです。
家族や友人には「ありがとう」、店員さん、バスの運転手、宅配ドライバーには「ありがとうございます」。あくまでも自分と他者との距離の取り方です。
ところで、日本語教育の勉強中、一番、苦労したのはアクセントの問題でした。「大阪で東京人になる」と宣言したものの、レッスンの途中で、京阪式アクセントになった、と自覚することもよくあります。
ちょうど1年前、友人に外国人向け日本語レッスンをこっそり見学してもらったのですが、簡易アンケートでは:
標準語に比べて
□かなり関西寄り
☑混ざっていて微妙
□結構がんばっている
(標準語と関西弁が)混ざっている感じで、いつもの口調とそんなに変わらない。
と指摘されました。
そんな私は、地方出身の人と話すほうがリラックスできます。英語ネイティブと話すより、ノンネイティブ同士で話す方が気楽なのと似ているかもしれません。
放送大学の講座をテレビ視聴。方言がテーマの回の副題は「言語行動の地域差」でした。挨拶や感謝など場面における地域差を東北ご出身で、関東と関西在住の日本語研究者が解説。
特に興味深く思ったのは、店を出るとき、東は「どうも。」、西は「ありがとう。」と言う人が多いという調査結果です。
「どうも。」は外国人向け日本語のテキストでも目にしますが、私は普段使わないので、少し違和感がありました。
「どうも。」は「どうもありがとう」か「どうもすみません」か分からない曖昧な言葉ですが、曖昧にできるのがいいところ、と講師のお二人の意見が一致。
「どうも」一つにしても、どうして、その言葉が使われるのかを知ると、単なる違和感から一歩進んで、他者への理解が少し深まるような気がします。
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方言については以前にも書きました。
コールセンターに電話する時の緊張感。子供時代、湯船の中で鍛えられた京阪式アクセント。
一時期、日本語教師の掲示板を見ていた時、「きれいな日本語話せます」という文言に感じたこと。