前回のテーマは「面接」
就職面接でカムフラージュしましたが、念頭にあったのは仏検1級の「面接」
昨日は、朝から2次試験でした。
仏検1級について書かれたブログは数える程です。10年ほど前の記事や準1級、英検にまで範囲を広げて検索。
限られた情報ですが、試験対策に役立ちました。私の体験談も誰かの目に留まればと思い、残しておきます。
結果も大切ですが、その過程で学ぶこともあります。モチベーション維持やら時間のやりくりやら。もちろん、体調管理も。緊張で食欲がないのに、空腹を訴えてくる胃。
面接の前はいつも同じ。困ったものです。出掛ける前に少しヨガをして、電車の中では、ポッドキャストでひたすらフランス語を流しました。
〜トンデュ/緊張して〜
大阪会場。1次試験の受験者は50人ほどだったでしょうか。2次試験の控え室に集められたのは7人ほど。男性は1人だったはず。ほとんどが同世代か少し年上の女性でした。
1次通過後、10日という短い時間で、間に合わせの試験対策。そのメモを取り出して復習。再び、ポッドキャストを聴こうとしたら、楽しそうな会話が耳に入ってきました。
会場は、フランス文化センターの役割を果たしている学校。ここ、10年以上、フランス人会とは距離を置いています。少し苦手でありながらも懐かしい雰囲気。
一般的な試験会場の張り詰めた雰囲気と違い、リラックスできるのです。ポッドキャストを聴くのを止め、友人から届いた日本語のメールから好きな言葉を探し、待つことにしました。
〜ルラックス/リラックス〜
集合時間を過ぎて、しばらくすると、私を含め、4人の受験者が呼ばれ、階下に移動。4部屋の前に、一脚ずつ椅子が置かれ、腰を下ろして待ちます。
そこに、白髪に頰ヒゲを蓄えた恰幅のいいフランス人男性と、どこか見覚えのある日本人男性が談笑しながら入室。
ルール通り、試験開始3分前に1枚の紙を渡されました。そこに書かれていたテーマは
A : 日本にカジノを導入する事に賛成か、反対か。
テーマとして悪くないと思い、次に、Bに目を移し、頭から読み始めると
「日本社会は十分に意識していると思うか」・・・「セクハラについて」
我が家の日常会話なんですけど。ど真ん中すぎてビックリ。
1秒ほど考えました。
「試験官は、2人とも男性・・・でも、今はフランスにいるようなもの。自分の意見をはっきり述べよう。」
と思い、Bを選びました。
フランス語では、こんな感じの質問でした。
Pensez-vous que la société japonaise prend suffisamment conscience du harcèlement sexuel ?
3分でスピーチを組み立てるのは、日本語でもなかなか難しいもの。10分くらいあれば、フランス語で考えますが、ここは効率的に日本語でメモ。
緊張のあまりメモする手も震え、書いているというより、頭に叩き込む作業。そこに、いくつかのフランス語のキーワードも入れ・・・
〜トンデュ/緊張して〜
「時間です」という掛け声とともに、ドアをノックをし、Bonjour ! と言いながら部屋の中へ入りました。
日本人試験官に親近感を覚えたのは、どうやらテレビのフランス語レッスンでお見かけした先生だったから。
まず、氏名の確認があり、どちらのテーマを選んだかを聞かれ、Bと回答。
緊張の余り、「テーマを読み上げてください」が聞き取れず。正直に緊張していることを伝え、結果的に両試験官の顔から微笑みを引き出すのに成功。
3分間のスピーチ開始。伝えたのは
・女性として個人的に興味のあるテーマである。
・日本社会で、セクハラに関する意識は十分でない。
・去年の秋、アメリカのハリウッドで明らかになったセクハラ問題。
・それに続いて、世界中で巻き起こった「me too」運動。
・パリを始め、フランス各地でも行われた同様のデモ。
・日本でも被害を訴えた(dénoncerという単語が出て来ず・・・)女性がいたが、男性だけでなく女性の中にも大したことではない、という反応が多かった。
ここまで話し、スピーチの制限時間3分に対し、何分経過しているのかが気になりました。
政治家の失言問題、教育現場での問題と、話があちこち飛び、後はグダグダ。説得力のある結論を出せず、堂々巡り。
スピーチを打ち切って欲しくて、試験官の顔を交互に見るも、日本人の先生は困っている私を見て失笑。フランス人の先生の顔には僅かな苛立ち。
結局、スピーチを尻すぼみで、無理やり終了させました。着地点を探しながら、空中旋回し、遂にはガタガタと不時着。
〜エガレ/さまよって〜
続いて、スピーチに対して、フランス人試験官からの質問。
Q : 日本でセクハラに対する意識が低いのは、女性側にも責任があるか。
ここは、自信を持って「Oui」と答えました。常日頃、同性の同僚や友人たちと話して感じていること、その原因は家庭や学校の教育にあると思っている点も説明。
面接では触れませんでしたが、折しも、酒井順子さんの「男尊女子」(ご注意:「男尊女卑」と一字違いです!)を読み終えたところです。女性の中にも、男性より一段下がった地位に甘んじている節があると思います。もちろん私の中にも。
Q : フランスに住んだことはあるか。日仏でセクハラ意識の違いを感じるか。
Ouiと言ったものの、具体的な例が思いつかず、痴漢に対する女性の態度を取り上げましたが、今一つ説得力に欠けました。
ここで、終了時間を知らせるノック。
フランス人試験官は、気に留めず、自身の娘から聞いた話を持ち出し、政治家の失言問題については「どうしようもないね」と。私も、あの方々が政界から引退するまで待つしかありません、と。
Q : 日本は変わって行くと思うか。
ここで、2回目のノック。ドアと試験官をそれぞれ一瞥し、どうしても話したかったので続けました。
仕事柄、大学生と話して感じるのは、自分の若いころに比べ、性別に対するこだわりが少ない点。
「優しい男の子」「勝気な女の子」がいても良い。それぞれ違うのだから、性別ではなく、個性を認めるべき。息子の時代には、そういう世の中になって欲しい。
と締めくくりました。3分どころか、恐らく4分半スピーチでも出せなかった結論。テーマから少しズレていますが、試験官との質疑応答を通して、導かれた私なりの結論です。
〜ジョワイユー/愉悦を覚えて〜
立ち去り際に、フランス人試験官から
「今日は、地下鉄で来ましたか? じゃあ、女性専用車両に乗らないといけませんね。」と皮肉混じりのジョーク。試験も終わり、リラックスして切り返しました。
「日曜なので女性専用車両はありません。
(大阪メトロでは)
ご心配なく。私、フェミニストではありませんから。
男性も女性も尊重しているんですよ。
さようなら。良い一日を!」
試験官は、きっと、大学の偉い先生なのでしょうが、この10年間、大学で勤務してきた私は、良くも悪くも、その実態を知っています(笑)
さらに、フランスを始め、欧米では、肩書き、性別を超えて、本音を語ることが許されるというのも。
緊張と快感の混じった10分半ほど(本当の持ち時間は9分)
スピーチの出来は良くありませんでしたが、どのように判断されるのでしょう。合否結果が分かるのは8月2週目です。
落ちても、来年は1次試験が免除されます。再び2次試験の緊張と快感を味わえる!? 出来れば、胃痛は避けたいもの。
昨夜は、家族3人でW杯決勝をテレビ観戦。素人目には、クロアチア側が攻めていたように思いましたが、見事、フランスが優勝。
20年前の優勝と重なって、感慨深いものがありました。
昨日から仏検の面接、W杯決勝戦と勝負続き。
結局、寝付けず、久しぶりの早朝ジョギング。
ここで終わればいいものを・・・
W杯の表彰式。試合終了とともに降り出した雨。
雨脚が強まる中、選手、ロシア、フランス、クロアチアの大統領の後ろには、人形のように同じ服を着せられた女性たちの姿。
帽子は被っているものの、雨が打ち付けようが、笑顔で微動だにせず。
フランス人女性なら、大雨の中、立たされたら、しかめっ面の一つも見せるでしょう。
日本人女性は、やはり表彰台の後ろで、着物姿に笑顔で耐えることでしょう。
思い出すのは、「me too」運動に対するロシア人女性の意見。フランスのニュース番組での街頭インタビューでした。セクハラに対する意識が、日本人女性と似ていたのが印象的でした。
なんて書くと、それこそ「フェミニスト」と言われそうです。これでも、フランス人夫との議論を通じて、軟化したつもりです。
仏検にご興味のある方へ:
ご参考になるか分かりませんが、これでもかと書きました。