和気あいあいとした職場。その中に1人、浮いている女性がいました。面白いほど協調性がないのです。仮にAさんとしておきます。

 

今でもよく覚えています。職場見学に行ったとき、一斉に立ち上がった10人ほどの女性たち。

 

その中にポツンと座ったままのAさん。周りに促されて、慌てて立ち上がりました。

 

私は思いました。「ここ、いろんな人がいて、面白そう!」

 

大部屋で働くのは、久しぶりのことでした。

 

全幅の信頼を置いていた同僚。いつもノートとペンを持って、彼女の後を追っていました。

 

転職回数の多い私のポリシーは、前職の常識を持ち込まないこと。仕事の飲み込みは遅くても、その態度が、同僚の気に入ったようでした。

 

一方で、彼女のAさんに対する言動には、どう反応して良いのか困りました。そりが合わない2人。

 

我が道を行くAさんを何とか懲らしめてやろうと、徐々に中学生のイジメの様相を帯びてきました。

 

本人不在の昼休みに吐き出される悪口は、性格、服装、髪型、持ち物、家族構成にまで及びました。

 

面と向かって、注意する勇気はなくても、話題を変えようと試みました。でも、どうしても、そこに戻って来てしまうのです。

 

Aさんの言動に尾びれ背びれを付けて、意気揚々と教授に報告メールを送る同僚。心底がっかりしました。

 

裏表のない、さっぱりした人だと思っていたのに。

 

ますます悪意に満ちていく職場。私は傍観者でした。

 

Aさんは、私より15歳以上も年上。一流大学卒業後、国費留学生となった経歴の持ち主。

 

私なんかに情けを掛けられたら、彼女のプライドが許さないだろう、と。でも、本当に恐れていたのは、彼女の側に立つことで、自分に矛先が向くことでした。

 

「私も言われる」「私もやられる」かもしれないと思うと、次第に言動を慎むようになってしまったのでした。

 

続く

 

Charlotte Pardi, When Stella Lost her Hair