あたし 光ってるでしょう?
エナメルの靴が言った

そうね 光ってるわ
隣の革靴が答えた

あたし 光ってるでしょう?

反対側の
合成皮靴にも聞いた

そうね 光ってるわね

光ってるからって
べつにエラくないわ

正面の運動靴が言った

誰も エライい なんて言ってないわ

エナメル靴が言った

すると
向こうのサンダルが
クスっと笑った

何で笑うの?
あたなには 関係ないわ

エナメル靴は怒った

サンダルは身を縮めたけど
でも面白いもの と思った

エナメル靴は光ったまま
ツンとして口を閉じた

あたし 身軽なの
と サンダルが飛び跳ねた

エナメル靴は横目でちらっと見て
またツンとした

あたしって早く走れるのよ
運動靴も走ろうとした

合成皮靴も負けじと体をよじらせて
あたし やわらかいのよ と言った

革靴はそんなやり取りに呆れて

何も見なかったフリをした

光るエナメルの靴は
まばたきもせずツンとすましたまま思った

 

棚に並んでいるだけの毎日が退屈

 

早く誰かの持ち物になりたくて

 

 

小さな心を

贈ります

 

あなたの愛で

しあわせになれた

お礼に

 

わずかばかりの

心を贈ります

 

今夜

感謝の思いを込めて

 

紅い雲の間から

明日の希望を見つけるまで

どうか もう少しだけ

このままでいてください

 

太陽の暖かい光を

心にあてていたいから

ほんの少しだけでいいですから

色を変えないでください

 

暗闇が押し迫ってくる前に

今日のこの悲しみを

捨ててしまいたくて

 

だから

あと 少しだけ

このままでいてください

 

あと 

少しだけ

このままで

いさせてください

 

夕暮れ時の

商店街から漏れてくる

やさしい灯りに

陽炎を見た

 

ゆらゆらと

立ち昇るその灯りは

一日の疲れを癒してくれるような

不思議な力を持っていた

 

お花屋さんの店先では

かすかな花の匂いが

陽炎と重なって

忘れかけていた

自分自身の大切な心も

気づかせてくれた

 

いつもはそのまま通り過ぎる

いつもの商店街

 

不思議な陽炎の商店街

 

 

 

 

お店から流れる曲がBGMのよう

 

それに合わせるかのように行きかう車や人々

まるで異国の景色と見間違う

 

バスが来て 停車場で止まると

何人か降り それぞれの方向に

大型トラックが響きながら通り過ぎて行き 

ワンボックスカーは早めに過ぎ去る

ハウリングの効いたシャコタンの車が来て

赤信号で止まる

 

自転車の学生が角を曲がり

舗道では学生たちが

楽しそうにおしゃべりをしている

家路を急ぐサラリーマンやOL 

買い物に行く人 帰る人 散歩途中の人

 

それぞれがそれぞれの人生

 

太陽は西に傾き 夕焼け雲は紅く

 

ウインドウから見ているような街の夕方

 

特に意味のないその景色は

スクリーンの映画のにように

人々の姿を映し出す