けれども幸せというのは、本当は目の前の好都合とは全く関係ないものなんです。トルストイが、
『努力は幸せになるための手段ではない。努力そのものが幸せを与えてくれるのだ』
と書いていますが、私もそう思います。
 ですから経営者は、いまのことだけを考えていてはダメなのです。十年、ニ十年と遠きを慮って、この仕事をこのまま続けるべきではないと思ったならば、どんな障害を乗り越えても方向転換するべきだと思います。実際に私も扱う商品こそ変えていませんが、販売先は何度も大きく変えてきました。




「努力することが幸せ」
なんかわかるような気がします。僕自身は学生時代、ボクシングをしていました。大学時代、大学の事情で自分のベストの階級の一階級下の階級で試合に出場せざるを得ませんでした。自分が好きでボクシングをやっている以上言ってはいけないのですが減量がきつくて仕方ありませんでした。もちろん当時は「減量がきつい」とは言わなかったのですが。大学4年時に選手として引退した時に嬉しくて仕方なかったのを覚えています。
「これで毎日、腹一杯食える生活ができる」
と思うと嬉しくて仕方ありませんでした。しばらくして大学の同級生がプロの試合をするので応援に行きました。すると自分がリングで闘ってきた姿が頭の中で走馬灯のようにフラッシュバックされました。そうなると
「もう一度リングに立ちたい」
と思うようになりました。不思議です。あんな苦しい思いしたにもかかわらず、また『リングに立ちたい』と思うんですから。その気持ちが抑えられず先輩のジムでプロ希望として活動したことがありましたが、自分が『リングに立ちたい』という気持ちだけでプロになるなら、その気持ちを仕事にぶつけたいと頭を切り換えることができたと思います。そのジムの先輩が執筆した「ボクシング中毒者(ジャンキー)」の中で

「いつもこんな楽しい思いをしているのか。俺もこれから仲間に入れてくれよ」

と言ったら、その友人が

『俺らはいつも遊んでいるから楽しいとはお前はそれでいいのか。苦しいけど夢に向かって頑張っているお前が羨ましい』

と言われた言葉が頭の芯まで響き、その日からジムに戻ったとのこと。
 僕が大学卒業して社会人になり直前までジムに行こうとする時に母に
『あなた何もジムに行くことないじゃない』
と言われたので
『嫌だ。最後までボクシングやるんだ』
と応えたら
『あなた変わったわね。大学卒業したらボクシング辞めて違うことやるんだ、って言ってたじゃない』
と言われ
『あっ〜そんなこともあったなぁ』
と思い出しました。
『苦しい時』『辛い時』その時は、とてもそんなこと思うことは難しいと思います。けど、それを乗り越えることができれば、成長できるし、楽しさに変わる。『苦しい時』に思い出し、頑張りたいと思います。