石原は田口の心と技術の成長を感じ取った。明らかに練習中の集中力が増した。3分間のシャドーボクシングやミット打ち、ボクサーはどこかで気を抜いてしまう。だが、田口はそれがなくなった。まるで少しでも緩めたら「その瞬間、井上のパンチをもらってしまう」と思っているかのようだった。一発ももらってはならない。絶えず神経を研ぎ澄まさせていた。
 技術的にも、ディフェンスの意識が高まった。これまで打たれ強さを自覚していたため、多少パンチを食らっても大丈夫という慢心があった。だが井上を通じて、いいパンチを浴びたら倒されると悟ったようだ。



練習での「集中力」ということに対して考えさせられました。僕は高校、大学はアマチュアでボクシングを、今は本格的な選手ではないのですが極真空手をしています。この文章のような集中力、緊張感を持っては練習はできていないかな、と思います。
 僕自身、空手の先生にご指摘を受けたことがあります。

「シゲさんはミットを2分3回やるとしたら、スタミナを配分してやる傾向がある。2分2回やってバテてしまったらそれはそれでいいんです。バテてしまったら、その時にできる最大限のことをすればいいんです」

と言われたことをよく覚えています。それ以降はそれを意識して稽古してはいるのですが、やっぱりどこかでペース配分してしまっている部分があるのかな?と思います。僕は一番強くなる方法は試合だと思っています。だからできる限り試合に出場したいと考えています。試合前での稽古は当然ですがきついものになります。そのときに、そのことを意識するのはもちろんですが、一つ一つの稽古を真剣にやらなければ強くはなれないと思います。型、移動稽古、突き、蹴り、ミット、スパー、すべての稽古を一時間半集中して行わなければいけないと思います。気が緩んだり、手を抜きそうになった時に、このことを思い出したいと思います。そして勝利を掴みたいと思います。