PRESS TO PLAY/PAUL McCARTNEY
●Side-A
1. Stranglehold
2. Good Times Coming/Feel the Sun
3. Talk More Talk
4. Footprints
5. Only Love Remains
●Side-B
1. Press
2. Pretty Little Head
3. Move Over Busker
4. Angry
5. However Absurd
私の場合、PAULの作品に関しては基本的には好意的に聴くようにしているんです。
・・・で1983年に発売された『PRESS TO PLAY』を聴いた時は聴き続けていけば
どんどん良いところが見えてくるし、Billboardのチャートの上がっていけば、
おのずと好きになるだろうなんて思っていました。
ところが何日たってもすごく良いところが見えてこないですし、
期待していたBillboardのチャートも上がってこない・・・
当時は呪文のように「このアルバムは傑作なんだ・・・」と唱えていました。
結果、このアルバムへの評価は上がる事はなく、下がる一方だったわけです。
Billboardでは結局30位と考えられないランクで止まり、
ゴールドディスクすら獲得出来ない唯一のスタジオ盤となってしまいました。
(2000年に入ってゴールドディスクの認定方法が変更されているので、
いろんなミュージシャンが獲得できていないですね)
この頃まではBillboard1位は当たり前と思っていた時期ですから、
かなり凹んでしまいました。
個々の曲はそんなに悪くはないと思いますけど、アルバムとしてのクオリティが
低くなってしまっいてはどうしようもありません。
まっ、これは曲だけの問題ではなくプロデューサーにHugh Padghamを起用した事が
大きな問題だったのではないでしょうか。
Hugh Padghamは自分の仕事をちゃんとやっていると思いますので、
あくまで起用した方の問題だと思っています。
オープニングの「Stranglehold」からして飛びつきたくなるようなインパクトが
あるわけでもないので、なんとなく淡々と聴いてしまう曲なんです。
途中からの盛り上がりはさすがだと思いますけど、ちょっとホーンが入りすぎなような
気もします。この曲はUSと日本でシングル・カットされましたが、
撃沈しています・・・ちなみにBillboardでは81位止まりという結果に終っています。
曲が持っている魅力は感じ取れるんですけど、あくまでもこちらから探して見つかる
ような雰囲気なので厳しいですね。
それにこの曲をオープニングに持ってきたというのもどうかと思います。
こういう曲でスタートした時は次に控えている曲に明確なフックがあればいいんですが、
そうでない場合はなし崩し的な雰囲気になってしまいますから・・・
続く「Good Times Coming/Feel the Sun」の出足もイマイチ抜けが悪い感じが
して何となくそのまま
いていて大丈夫かな~なんて思うですけど、「Good Times Coming」からメドレーで
「Feel the Sun」に繋がるところは「おっ、やっとキター!」と思わせてくれます。
「Feel the Sun」はPAULらしい曲で個人的にも大好きな曲です。
メドレーにしないで単独で曲を作ってほしかったです。
でも短い曲で展開も難しいから繋いだのかもしれませんが・・・
メドレーはPAULが得意としているやり方で、過去にもメドレー(メドレー風)にして
成功していますけど、それはあくまで曲のクオリティが高いから成功しているわけで、
普通の曲を繋いでも飛距離は伸びていきませんからね・・・
こうやって聴いていても一向に吹っ切れた感じがしないまま「Talk More Talk」が
始まります。LINDAさんと息子のJAMESの声が入っていて、
出足はかっこいいかな~と思った途端ズッコケてしまいます。
PAULにはこういうアレンジはあいませんよ~~~。
この曲ではPAULの声は出ていませんし、曲自体もシングルのB面か未発表曲並の
レベルだと思います。なんとも先が見えない曲で話のしようがないといった状態です。
何を思ってこういう曲を収録したのかがわからないんですが、
もしかしたら時代に合わせた雰囲気を出そうと思ったんでしょうか・・・?
できればこういう曲は5分もやらないで、繋ぎとして短くやっていた方が
良かったのではと思うのですが・・・
そんな状態を少し和らげてくれるのが次の「Footprints」なんです。
シンプルな雰囲気でアコギの弾き語り的な感じがすごく良い曲で、
個人的にはやっと落ち着いて聴ける曲が出て来た感じがしました。
メロディの流れや展開も素晴しくて、さすがPAULだな~と思わせてくれる
至極の一曲ではないでしょうか。
ここでのアレンジは他の曲のように出しゃばっていないので、
耳に馴染み易いいい感じで入ってくると思います。
そんな素晴しい曲に続くのが「Only Love Remains」です。
間違いなくこのアルバムの中で一番いい曲はこの「Only Love Remains」でしょう!
これを私は待っていたんですよ~と叫びたい感じのバラードです。
ストリングスも控えめですごくいいアレンジとなっていますし、
PAULの良い面が発揮されていて本当に聴きごたえのある曲だと思います。
何と言っても途中からの盛り上がりは素晴しくて泣きそうになりますよ。
この曲はUKのみでシングル・カッットされ32位まで上昇しています。
こういうしっかりとした曲が多く入っていてば、アルバムの評価も変わっていたと
思うんですよね・・・個人的には世界統一でシングル・カットして欲しかったです。
もう個人的にはこのアルバムはここで終了しても納得しそうなくらいなんですよ。
ここで面が変わって1曲目が「Press」となります。
このアルバムからの1stシングルながら、UK25位、US21位とまったく不本意な
結果となったわけですけど、言うほど悪い曲ではないんです。
単純にヒット性に乏しかったというだけで、メロディはまずまずではないでしょうか。
ただアレンジが好きになれなくて、最初から「なんとかダブ・ミックス」みたいな
感じですから困ってしまいます。まっ、それでもちゃんと聴けるからいいのかな・・・
できれば過度なアレンジを排除して、いつものPAULらしいアレンジにしたものを
このアルバムには収録して欲しかったです。もうこのアレンジがすでに12inchに
収録するようなミックスがなされていますから困ってしまいます。
・・・・まっ、あの地下鉄のPVは嫌いじゃないですけどね。
このアルバムで一番インパクトがある曲はと考えると、「Pretty Little Head」の
ような気がします。
今までにないPAULのアレンジですが、この曲に関してはあっていると思います。
メロディもなかなかで、なんとも土着な雰囲気も漂ってクセになりそうな曲なんです。
曲調やアレンジは全くらしくないんですけど、曲としては非常にフックが強くて
好きなんです。ただパッと聴いたらPAULが作った曲とは思わないですけどね・・・
このへんも普通のアレンジだったらとは思ってしまいますけど、
いろいろとチャレンジしてみたかったんでしょうね、きっと。
局地押しては気に入っているのでシングルだったらヒットする要素があるかも
・・・と思ったら、UKでカットされていました。
ただ76位までしか上昇しませんからね・・・どれもこれも撃沈です。(T T
もうちょっと何とかなるのではと思うんですけどね・・・・
続く「Move Over Busker」「Angry」では
善し悪しは別にして吹っ切れています。
いつものやりっ放し的なロックを披露してくれているんです。
普段はこういうロックをPAULがやるのは好きではないのですが、
このアルバムにいたってはノッてしまいました。(^^
「Move Over Busker」は出足のリフがかっこいいんですけど、
そのリフを弾いているギターの音がなんだか細くて気になります。
ただこういう感じで全体を作っていたらフックの強い曲になっていたと
思うのに反して、歌い出されると普通にロックンロールになっていて
あれあれって感じなんです。展開が弱いんですよね・・・即興風なのは良いですけど
それ以上のものが出てこないのが難です。
このタイプはPAULがよく手軽に作っちゃう感じの曲ですけど、
それなりにイントロ部分のメロディを織り混ぜたりして映えてはいますが、
なんだか物足りないんですよね・・・
次の「Angry」はPete TownshendとPhil Collinsが参加して盛り上がってます。
多分曲のベースはあったんでしょうけど、Pete Townshendたちが来た段階で
即興で作った感はあります。
ある意味PAULらしさが出ている曲ともいえるでしょうね。
失礼ですけど、手始めの音合わせ的な感じでやっているようにも聴こえます・・・
Pete Townshendのギターも個性爆発しているとは言えない音なので
物足りないですし、こういう曲でPhil Collinsがドラムを叩かせるのは
勿体ないような気がします・・・めちゃ上手いんですけど彼には合わないですよ。
そしてエンディングを迎えるわけですが、最後を飾る「However Absurd」は
すごくいいです!ちょっとヴォーカルに加工が入っているのが気になりますけど、
全体には素晴しい内容のバラードではないかと思っています。
本当にエンディング~~~みたいな曲を最後に持ってきているのは
気にならないでもないですけど、これはOKにしましょう〜。(^^
この頃になると高い音域が苦しい感じになっているので、聴きにくい印象もうけて
しまうんですが、衰えは仕方がないことですからね・・・
いい曲がここで聴けたと思えば万蔵ですからね。
全体を通して聴いていると、やはりいつもの雰囲気が伝わってこないのが
このアルバムの欠点のような気がしますけど、これはHugh Padgham の起用と
初顔合わせのようなミュージシャンを多数起用しているからでしょうね。
それに参加ミュージシャンが多すぎというのも纏まりの無さに
つながっているのかもしれませんね・・・・
ここまでがアナログ収録曲なんですけど、通して聴くと曲の不出来さを
つっ突かれても仕方がないかなという印象のアルバムです。
ヒット曲が一曲でも収録されていればイメージも違うのですが、
もうこの時点で昔のような大ヒット曲が出て来なくなっていますから、
全体にのクオリティをあげるしかないんですよね。
この後もずっとそういう問題を抱えての作品発表になっていくので
ファンとしては非常に辛いですよ・・・・
このアルバムですけど、CD化によって下記のボーナス・トラックが
当然のように追加されています。
「Write Away」「It's Not True」「Tough On A Tightrope」
さらに再CD発売で「Spies Like Us」「Once upon a Long Ago」も
追加されているんです。「Once upon a Long Ago」は『ALL THE BEST』に
収録されているんですけどね・・・
「Write Away」「It's Not True」「Tough On A Tightrope」は
シングル「Pretty Little Head」「Press」「Only Love Remains」の
B面曲として発表されていたものです。
個人的にはアルバム収録曲の不出来な曲よりは、こちらのボーナス曲の方が
いいのではないかと思います。
特に「It's Not True」はシングルB面曲というのはもったいないです。
「Talk More Talk」あたりを外して、「It's Not True」を収録していた方が
絶対によかったと思うんですけど・・・
「Tough On A Tightrope」もPAULらしさが出たメロディを持っていて、
聴いていてもなんだかホッとするんですよ。本当にもったいない感じです。
最後にこのアルバムではEric Stewartと半分くらいの曲を共作していますけど、
PAULにとってはEric Stewartは刺激が足りなかったでしょうし、
飛躍的なプラスαは望めなかったのが残念です。
最終的にはPAULの人材の起用の仕方の問題が、このアルバムの出来を左右したと
私は思うのですが・・・といろいろ言っていますけど、その後発売された数々の
アルバムよりはよく聴いていますし、好きなんですよね・・・(^^;