『まぐたら屋のマリア』原田マハ
原田マハさんの著書を読むのは、この本で3冊目である。原田マハさんは多くのタイトルを出しているため、3冊目というのは極めて少ない方だと思う。でも僕が原田マハさんの本を手に取るときは、いつもどこかで勇気づけられたい時が多いと思う。『生きるぼくら』は何度も何度も読み返した。そして何度も何度も涙した。それくらい自分には大切な作品である。『まぐたら屋のマリア』もそれくらい大切にしたい。遠方で一人暮らしをしている人が多い。そしてコロナでなかなか帰りにくいや、他にも事情があり、帰りにくい人がいるだろう。僕も大学から一人暮らしを始め、かれこれ7年半過ごした。そのうちにどこか実家に出戻ることがどこか逃げのように感じていたことがある。仕事で成果を出して胸を張って戻るんだ、と意気込んだのも束の間、社会という空間で息をすることさえも難しくなる時がある。そんな時に真っ先に思い浮かぶのが、故郷であった。この本の主人公もそのように親元を離れ、東京へ出てきたは良かったが、毎日朝から晩まで働き、上司からの叱責などに疲弊していた中、会社ぐるみの食品偽装に少し加担してしまう。後輩の自殺もあり、身も心もすり減らした主人公は自殺しようと名前で惹かれた、「尽果」という土地は赴く。そこで出会った人らに助けて貰いながら生気を取り戻しとともに自身の過去と向き合うまでの話である。不覚にもこの本を読んでいくなかで、2回ほど泣いてしまった。作中に何度も「死ぬな、生きろ」という言葉が出てくる。僕はまだその言葉を心の底から理解できていないと思う。なぜなら時々自信がなくなってしまうからだ。本当に自分は生きていても良いのか。社会に役に立つ人になれているのか。今後なれるのか。まったくわからないし、先も見えない。だけど待ってくれてる人がいる事だけは忘れてはならない。それが近くにいるかもしれないし、すごく遠くにいるかもしれない。もしかしたら出会っていないのかもしれない。でも自分には少なからず頭に思い浮かぶ人がいる。だから明日も頑張って生きようと思う。それが社会の役に立つかはわからないが、頭の中の人たちの役に立つなら嬉しい。その中のSさん。一緒に山に登ったり、ブログを薦めてくれた。確か故郷にあまり帰っていなかったような気がする。もしそうならこの本を読んで、少しでも故郷を思い出すきっかけになったら嬉しいです。大きなお世話かもしれませんが、「待ってくれてる人は案外います。」