今回は、原作者である不法氏からのリクエストを受けて書き下ろした作品です。
 ソラとシルバーのお話が見たい!との要望に、じゃあデートのお話かなとプロットも切らずに書き始めました。
 もう一山二山あってよかったかなと思わないではないですが、まさか朝帰りさせるわけにも行かずw 一日限りの王道的なデートコースになりました。
 タイトルがソラの恩返しなのに、全然恩返しできてないやん!という突っ込みもございましょうが、恩返ししようと奮戦するソラがもてなされてばかりであることに葛藤する様が、ひとつのテーマであったことや、ラストでお利口な勘違いをして再びシルバーをデートに誘う事もふまえてのネーミングでした。
 今回一番悩んだのは、やはりソラの新衣装でしょうw
 なにせソラよりファッションに疎い私ですから、シルバーに買ってもらった服をどう表現していいかわかりゃしません。ぐぐって調べようにも検索すべきフレーズが出てこないんだから困ったものですw
 結局不法氏にラフデザインを数点いただき、中から気に入ったデザインを文面化することで事なきを(?)得ました。

 閑話休題としてはまずまずのまとまりではなかったかなと自負しておりますが、いかがでしょうか?


 さてお正月は少々お休みをいただきとう御座います、次回更新は1月8日を予定しております。忘れないようにモニタにポストイットで貼っとこう。
 次回は文章にする上でコメディの次に難しいアクション長編に挑みたいと思います。
 題して『魔王の卵』
 お楽しみに。


 では皆様、よいお年を。


「キールからリク。状況を報告せよ」
「こちらリク。お姉ちゃんは2025時に帰宅。行きと違う服を着て帰ってきました。すごく楽しそうでした。オーバー」
「キール了解。シルバーに変化は見られず。本日も寝坊して遅刻しやがったのであとでシメとく。オーバー」
「って人の後ろで何やってんだ二人して!しかも丸聞こえだっつーの!」
 シルバーが盛大に突っ込んだ。翌日のAEGIS本社は、いつも通りの光景である。
「シルバーさん!要所要所で手とかつないだんですか!?」
「お姉ちゃんに洋服買ったのは京華さんへの対抗心からですか!?」
「芸能リポーターか!デートの中身べらべらしゃべるほど野暮じゃねえよ」
「え~?とか言って実は大して気の利いたことできなかったんじゃないのー?」
「おぅケンカ売ったか?表出るかキールぁあ!?」
 傍から見ればじゃれあってるようにしか見えなかった。
 そこへソラがやって来た。
「シルバー、またデートをしよう」
「はい!?」
 ソラの言葉に、三人が同時に素っ頓狂な声を上げた。
「今度は私がシルバーをもてなすんだ。シルバーに喜んでもらうんだ」
 どうやらシルバーの言ったデートの原則を、利口に履き違えたらしい。リクとキールはシルバーを引きずって廊下の陰へ行った。
「で?どーするわけ?行っちゃうわけ?」
 キールの目は全く笑っていない。
「いやーまぁそれはあれだぁ、本人が折角誘ってくれてるわけだしー、無碍にするのも男としてどーかなーと…」
「コピペしたような事言わないで下さいよ。貸し借りは一回きりでしょう?」
「そうよねぇ、ギブアンドテイクのバランスは大事よねぇ」
「しゃっ社長!?」
 甘ったるい声が混ざったと思ったら、いつの間にかアテナが会話に混ざっていた。相変わらず薫り立つ美人だ。
「なーんか面白そうな声がしたから来てみたんだけどぉ。昨日ずいぶんカイが落ち込んでると思ったら、ソラとデートしてたんだぁー?」
 アテナはシルバーの首を抱えるようにして、頭をちょいちょい小突いていった。
「いやぁ、あはははははは」
 無味乾燥とした笑いを漏らすシルバー。シルバーはさる理由から、社長が少し苦手だった。
 アテナはシルバーの耳元で、周囲に聞こえるように囁いた。
「キメちゃいなさいよぉ。あんな可愛い子いつまでも一人じゃ可哀相じゃなぁい。得意でしょう?撃・ち・抜・く・のッ」
 シルバーの頬にキスをして、アテナはいたずらっ子のように立ち去っていった。入れ違いにソラがやってくる。
「またみんなで何してるんだ?あ、それよりシルバー。デートの参考にしたいんだが、シルバーって、何をするのが好きなんだ?」

 その刹那、恐ろしいほどの殺気がシルバーに向けられた。出所は2つや3つではない。繕う事も隠す事もしない、むき出しの殺意だった。
 シルバーはその場に石像のように立ち尽くし、いっそ石像になってしまいたいとすら思った。



(了)

 コンコン。と、扉をノックする音。
「はい、ちょっとお待ちくださいね」
 ややあって扉が開き、老齢の婦人が現れた。が、玄関の前には誰もいない。夫人はあたりを見渡す。と、玄関先のコンクリートの上に、メモ用紙の上に乗った髪飾りが置いてあった。
「まぁ…そんな…!」
 婦人は転びそうな姿勢でそれを拾い上げた。それは紛れもなく今日奪われた髪飾りだった。添えられたメモを開く。


   バッグとお金は取り戻せませんでした。ご容赦下さい。
   お詫びにブルーラインホテルでのお食事を予約させていただきました。
   ご都合のよい日にこのメモを持って行って頂くと、お好きなお食事が召し上がれます。
   おいしいケーキもありますので、どうぞご遠慮なくお訪ね下さい。


 婦人はメモと髪飾りを、抱きしめるようにして目を閉じた。目から涙があふれた。
「いいのよ…いいのよ…これが戻ってきてくれただけで…本当にありがとう…」

 やや離れた場所で、二人は車の中からその様子を見ていた。
「喜んでくれてる。よかった…」
「だろ?メシの予約なんて要らなかったんだって」
「それはわかってる。でもそうでもしないと…」
「はいはい、ソラちゃんはいい子だよホント」
 アクセルを踏み、シルバーは車を走らせた。
「さて、そろそろ送ってやらんと。遅くなるとリクに鳥よけ網にされちまう」
「なんだそれ?」
「こっちの話だ。家この道であってるよな?」
「あぁ…」
 ソラの声のトーンが下がった。
「なんだオイ?なんか忘れ物か?」
「ん…結局、デートになってたのか?私だけ食べたり買ってもらったりして、挙句ミッションみたいなことして…」
「お前はどうだったのよ?今日は退屈したか?」
「まさか!あんなおいしいケーキを一年分は食べて、こんなかわいい服を買ってもらって、それにおばあさんにあんなに喜んでもらえて……あ」
「どした?」
「いや、あの………」
 ソラが珍しく語に詰まった。が、やがて少しぎこちない笑顔で言った。
「楽しかったよシルバー。ありがとう」
「お、おう。こちらこそ」
 突然の応対に、シルバーはあせった。
 ソラはシルバーの言っていた意味が、少しわかったような気がしていた。