ブログ管理の杉山丈彦でございます。

 

杉山卓はその後、自宅に戻り療養中です。

帰宅時は車椅子で家の中を動けるようにとバタバタしていたようです。

年齢が年齢だけに、もう歩き回れるようにはならないかもなあ

などと考えておりましたが、酒井一美によると早くも家の中を

すたすた歩きまわってお医者様をびっくりさせているとのこと。

今後とも経過が良いといいのですが。

 

ワンダーくんにまだ残りがありますのでひとまず続けさせて頂きます。

 

  ×   ×   ×   ×

 

この企画にあたっては手塚さんがかねてから大きな興味を持っていた
実写とアニメキャラの共演が制作上の大きなテーマとなりました。

もっともNHK的にはこの作品以前から続くアニメと実写の組み合わせの延長
としての意味もあったのかも知れません。
そもそも前述の「銀河少年隊」でも宇宙船の外形が登場するシーンなど
人形劇での表現が難しいシーンでは虫プロ製のアニメーションが使われて
いました。

更に「銀河少年隊」の後番組にあたる「宇宙人ピピ」という番組ではもう一歩進んで
実写人物とアニメキャラクターの掛け合いなども試みられたようです。
ちなみにこちらの方のアニメーション部分は私が抜けた後のテレビ動画(株)が
手掛けたとのことです。

さて、こうした条件で全くオリジナルな作品を構想するにあたって、手塚さんは
これまた実に奇抜なアイデアを盛り込んできました。

 


タイトル画面


これが主人公の太郎くん。
そして肩に乗っているのがワンダーくんなのですが…

このワンダーくん、みなさん見覚えがありませんか?


そう。こちら。→→

このプロフィールのアイコン、実はワンダーくんなのです。

ただし、ツノがちょっと違います。「初夢宇宙旅行」のワンダーくんは
宇宙らしくアンテナ風(?)に先に玉が付いた円錐形になっていますが、
こちらのワンダーくんの角はバイキングの兜のような湾曲した角が付いています。

このアイコンは息子がこのブログを立ち上げるときに、このブログの原稿に
使っている原稿用紙から採ったもののようですが、この原稿用紙はずっと後の
ことではありますが、私専用の原稿用紙を纏めて注文したときに入れたもので、
実はこの放送の時分からずっと私のプロダクションあるいは会社の
シンボルとして使っているものです。

そう、このキャラクターは私のキャラクターなのです。


これはこのブログの原稿。
杉山卓もかつてはワープロを使っていたことも
ありましたがノートパソコンには馴染むことが出来ず
なんと手書き原稿に戻ってしまいました。
この調子の悪筆なので大変読み辛いですw


これが原稿用紙のワンダーくん。

実は最近は内容のメモ書きや電話での打ち合わせだけで
作文自体は私(丈彦)に丸投げの部分も増えていました。
とりあえず原稿を一字一字全文書くのは体力的な問題も
抱えてしまいましたので当面無理そうですが、
続きの打ち合わせくらいは徐々にできそうですし、
虫プロ以降については酒井一美も事情をよく
存じていますのでこのブログは続けて行けると考えています。


こちらは参考出品。
私(丈彦)が幼稚園で使っていた酒井一美作の
「れんらくちょういれ」です。


「T・S」のイニシャルとともにワンダーくんの刺繡付きです。
私(丈彦)が幼稚園に入園したのは昭和44年の4月のことですから
この刺繡はワンダーくん放送の直後に作られたことになりますね。
しかし。こちらも角はバイキング・バージョンです。
この「れんらくちょういれ」や「海底少年マリン」を描いた水筒
(こちらは市販品)を持って幼稚園に通っていたのは
今考えてみると随分と贅沢なことだったのかも知れません。




つまり、この作品は、役者さん(もう今では60代になっている
勘定でしょうか)と私のキャラクターが主役で、なんと手塚さんの
キャラクターが脇役に回っているのです。

 

ワンダー君の声は三輪勝恵さん。パーマンで有名な声優さんですね。

三輪さんには後年「火の鳥2772」のヒロイン「オルガ」も

演っていただきました。

 


そういえば今見ると手塚さんのクレジットもいつもの「原作」
ではなく「原案」となっています。例によって脚本や演出は
私と手塚さんの二人でわいわいと仕上げた作品なのですが
この作品に関しては手塚さん的にも大いに変わった
ことをやってみようという心算があったのかもしれません。

まあ、1回限りのスペシャルで、尺も20分と短く(ただし、NHK専用
なのでいわゆる「20分番組」とは違いきっかり20分です)、
さらには実写パートはNHKがどんどん協力してくれるといった塩梅
でしたから、虫プロ的には「余力」で作れてしまったような作品
だったのかもしれません。

昭和44年(1969)1月2日、無事「ワンダーくんの初夢宇宙旅行」は
放送されました。
上記のように1回ぽっきりの単発番組で、その尺も長いものでは
ありませんでしたから、虫プロという会社にとっても、ごく小粒な
仕事であったのは間違いなく、残念ながらNHKとの関係もそこから
大きく拡がってゆくような流れにはなりませんでした。

もっとも手塚さんはこの作品から手ごたえを得たものか、
この年の秋には更なる本格的実写アニメ合成のシリーズ作品として
「バンパイヤ」を作っています。この作品は名優水谷豊さんの
デビュー作としても有名ですが(主役、トッペイ役)、アニメシーンは
ギっちゃんこと杉井ギサブロー君らが手掛けました。
そしてこの作品、脇役として更に意表を突いた人物が出演しています。
なんと、作中漫画家「手塚治虫」役として手塚さん本人が
出演しているのです(笑)

思えばこのあたりの流れは「展覧会の絵」の冒頭の実写パートあたりから
始まっていたのかもしれません。手塚治虫という漫画家、アニメーターは
漫画、アニメ、実写、といった作品の垣根だけでなく現実との垣根まで
壊してみることにも大きな興味を持っていた、といったところでしょうか。