「九尾の狐と飛丸」キャラクター(デザイン:杉山卓)
飛丸
玉藻
スタッフを集めるにあたってはそれまで私が在籍した東映、テレビ動画、
虫プロを始め、参加してくれそうなアニメーターに広く声を掛け、
各方面から集まってもらいました。
一方、源太郎さんの心当たりの中にも一つだけ、実績あるアニメスタジオが
ありました。
TCJです。TCJというのは現在のエイケン、「サザエさん」を作っている
プロダクションです。TCJは「鉄腕アトム」に続くテレビアニメ第2号
「鉄人28号」の制作プロダクションでした。
そんなわけで「殺生石」の実制作はTCJの青物横丁にあったスタジオを
借りて始まりました。
私はこの頃から「ストーリーボード」の制作に取り掛かります。
「ストーリーボード」とは、実写映画などでは監督などが撮影前に、絵などを使って
シーンごとにこれからどんな画を撮っていくのかをスタッフに示すようなモノを
言いますが、この映画では、いわゆる絵コンテに近い形式のもので、絵に説明と台詞の
付いたものをカットの数だけ描いたものです。
ほぼ1ページ絵1枚の絵コンテのようなものですから、この作品ではいわゆる一般的な
絵コンテの制作は省略いたしました。
アニメでの絵コンテやこのストーリーボードは机上でめくりながら何度も参照するもの
なので、片面コピーであり(この作品の時分はまだゼロックスではなく、設計図面の
ような青焼きでした)、おかげで1枚に5~6カットを縦に連ねた絵コンテ形式でも劇場作品の
ものとなると1本分で厚さが2センチほどになるものですから、この作品の
「ストーリーボード」は1冊に束ねることは出来ず、数冊組となりました。
これはとりあえず出てきたストーリーボードの1冊。
表紙からも判るように、この作品は製作中はタイトルはずっと
「殺生石」と呼ばれていました。
「No 3」とあります。シーンだと56から70。
ちょっと中も見てみましょう。
シーン56は中盤。那須の地で兄妹のように仲睦まじく育った飛丸と玉藻。
左大臣忠長に出会うことで玉藻は妖怪九尾の狐「まみるめ」として覚醒、
忠長に気に入られて京に上り、雨乞い術を陰陽師安倍泰成と競うことで
宮中深く取り入って行きます。一方、飛丸も玉藻を那須に連れ帰るために
京に向かいます。
玉藻は泰成に対抗して雨乞いを成功することで
忠長を関白に押し上げ、操縦していきます。
このあたりは完成画面だと
このへんでしょうか。
とまあこんな感じで作品の制作は進んで行ったのです。