ブログ管理の杉山丈彦でございます。

前回のブログでワンダーくんの声優として三輪勝恵さんに
触れたところ、すれ違うように三輪さんの訃報が入ってきまして
大変驚いていたら、続いて「海底少年マリン」の小原乃梨子さんの
訃報まで入ってきてしまいました。

今年はTARAKOさん、増山江威子さん、三輪さん、小原さん…
挙げきれないほど大物女性声優の訃報が続いてしまっています。
昭和の声優界はごく少数の精鋭で回していましたのでどなたも
名優ばかりで、また杉山卓ともご縁のある方がほとんどです。
一同謹んで哀悼の意を捧げさせて頂くものであります。


今回は「ワンダーくん」の後日譚ですが、三輪さんにも再度関連する
おはなしです。


  ×   ×   ×   ×

さて、そんなわけでこの作品、わたし的にはワンダーくんの
ルーツとして忘れることはありませんでしたが、世間的には、
なにしろ1回こっきりのスペシャルですし、その後に繋がる
作品もなかったこともあり、すっかり忘れられた格好に
なっていました。

 

「ワンダーくん」は実はクレジットされている以外にも

多くの方々に手伝って頂いており、この「野球」の

シークエンスは実は月岡貞夫さんの手になるものとか。

たしかにこのシーン、登場キャラクターからしてあまり虫プロっぽく

ないというか東映風というか月岡風な感じがしますね。(丈彦記)



ところがはるか後年。というか、つい先年。この作品に関して
NHKからの連絡があったのです。
なんでもNHKで、いにしえの番組を発掘する企画の番組があり、
いろいろな映像を発掘していたところ、ひょんなことから
とある関係者が「ワンダーくん」のフィルムを持っていることが
判り、さらに確認してみると「ワンダーくん」の映像はNHKにも
現在の虫プロダクション(再建新社)にも残っていないことが
判ったというのです。

この関係者というのはシモザキ君。シモザキ君はこの作品の当時
虫プロにいて、「W3(ワンダースリー)」やこの作品の進行をやって
くれた人です。


(丈彦注・下崎闊=しもざきひろしさん、この作品でのテロップ表記では
「下崎弘嗣」になっていますね。現在は「真佐美ジュン」の名前で
後に関わった日テレ版の「ドラえもん」の情報を集積されていることで
知られます)


シモザキ君と言えばこの電話のさらに少し前、私が自作のパラパラアニメ機の
アピールをするために東京国際アニメフェアに出展した時にブースを
訪ねてきてくれて、数十年ぶりに挨拶を交わした記憶も新しい時期でした。
とりあえず詳しいお話をするためにNHKに出向くとNHKのスタッフと共に
シモザキ君が私を迎えてくれました。シモザキ君は私に言います。

「タクさん、『ワンダーくん』のフィルム、ボクのところに1本あったん
ですが…」
「おお…それは良かった…」
「でも音が入ってなかったんです」
「音?」

どうもシモザキ君のところにあったフィルムは音なしであったようで。

スタッフ「それでですね、番組企画として、今新たに音を作り直してみよう

ということになったんです」

どうやら画像と記憶を元に音声を作り直して、その音声作り直し自体を
番組企画として成立させてしまったらどうかということになったので
監督である私が呼ばれたということのようです。


とりあえず、アフレコ用の台本もありませんので、画面を眺めながら記憶を
辿って台本を作り直すことから始めます。
ワンダーくんは昔と同じに三輪勝恵さんが演ってくれることになりました。
 

三輪さんにはワンダーくん以降にも「火の鳥2772」のヒロイン、オルガを
演って頂いています。
当時と違ってもうベテランですが、三輪さんは当たり役の「パーマン」が
時を経て復活したときにも昔と全く変わらぬ声で主役をつとめた実績の
持ち主でいらっしゃるから、それはもう昔と寸分違わぬワンダーくんです。
 

問題は太郎くんです。実写の子役の役者さんですから、もし役者を続けて
おられてもちょっと昔の自分へのアフレコは厳しいでしょう(笑)
そこでここはNHKにお任せすると、NHKは清水富美加さんを用意してくれて

いました。
連続テレビ小説にも出ていらっしゃる若手の女優さんで、声当ても初めてとの
ことでしたが、勘も良く、違和感のない太郎くんを演じてくださいました。

あとは現在のNHKのスタッフが効果音や音楽を入れてくれ、無事完成。
この音声作り直しバージョンは平成27年(2015)9月25日に「金曜eye 幻の名作
発掘大作戦!~あなたの“見たい”がよみがえる~」と銘打った番組の1回として
放送されました。


しかし、実はこの作業が進むにつれて私の中にある疑問が湧き上がって
来ました。

「あれえ? なんか、ワンダーくん…ウチにもフィルムがあったような気が
してきたなあ…」

我が家には長年の「作ったもの」やその副産物、参考物やらその残骸、
果ては今となっては何だったのか思い出せないものなど随分と溜まっては
います。その中にはケースや缶に入ったフィルムもいろいろとあるのです。

番組放送後、「思いあたるフシ」を求めて我が家の物置を探してみると
…「虫プロ」と書いたフィルムケースがあります。いやこれは「鉄腕アトム」か
何かだったと思ったけど…。と、山から引っ張り出してみると…表のラベルには
「ワンダー君」と書いてあります。間違いありません。「ワンダーくん」の
フィルムです。…音は…どうでしょう?
 

これがビデオですと規格にあったデッキに掛けてみないと中身を確認すること

すら出来ませんが、フィルムはこの点は便利で、ちょっと出して透かして
見るだけでおおよその中身は判ります。うん、音声トラックが付いています。

光学式なので、今、音を聞くことは出来なくてもちゃんと音が付いていることは

目で見て判るのです。

ここからの細かいてんまつはNHK側で詳しく纏めたページがあるのでそちらを
ご参照頂きましょう。
https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail102.html


こうして「ワンダーくん」はどうにか平成末の世に蘇ることが出来たわけです。
なにしろ作ることに夢中で、我が家の物置にはまだまだ怪しいモノがいっぱい
貯まってしまっています。解るものがいるうちにとりあえず大体はあらためて

おかなければいけないと息子と話し合っているところです。