【怪談】山形の温泉旅館 | 柳川淳二の怪談部屋

柳川淳二の怪談部屋

実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。

アタシね、この季節になると・・・怪談のオフシーズンなんでね、良く旅行に行くんですよ。
自分じゃね、心霊探訪と呼んでるんですがね・・・。
で、今年の心霊探訪でね・・・ありましたよ、怖い体験。

山形県のね、とある温泉宿なんですがね・・・ここ、詳しい場所は言えないんだ。
言っちゃいますとね、ホラ色々語弊があるもんでね、ええ。
なんでね、山形の歴史ある温泉旅館とだけ言っておきましょう。

で・・・この旅館なんですが、いい所なんだ。
周りを緑深い山でもって囲まれてましてね、すぐ近くを川が流れているもんで部屋で書き物なんかをしていてもザァーっと川のせせらぎが聞こえて来る。

都会の雑踏を離れて、大自然の中でね自然の声を聞く・・・いいじゃあないですか。
普段の疲れも吹き飛びますよねぇ。

宿に入ったのはね、もう日も暮れる頃なんでね、すぐに夜になって宴会が始まったわけだ。

山形の名物のね、芋煮やら鯉の煮付けやら稲子の佃煮とかね、普段食べられないものがもう食べられないってくらいね、わんさか出てくるんだ。
どれも美味しかったな~。

そんな素晴らしい料理を頂きながらねぇ、美味い酒を飲んで気の置けない友人達でもってあーでもないこーでもないってねぇ、くだらない話に華を咲かせる・・・至福の瞬間ですよねぇ。

で、大分いい時間になって来たんでね、アタシ・・・

「俺、疲れているもんで、ひとっ風呂浴びて先に寝るわ」

ってね、先に宴会抜け出してね温泉に向かったんですよ。
温泉は4階にありましてね、板敷きで黒塗りの・・・ピカピカの廊下を歩いてちょいと急角度なんですがね、階段を上って行くんだ。

でね、温泉の入り口に来たときなんですが・・・案内板がありましてね、「1Fに洞窟風呂もあります」って書いてあるんですよ。

(へぇー、そうなんだ・・・明日の朝風呂にでも行ってみようか)

アタシそう思いましてね、時間を確認したんですよ。
そうしましたらね、「洞窟風呂は深夜12時~6時の間は清掃の為利用できません」って書いてある。

そこでアタシ、妙な事に気づいたんだ。
今、入ろうとしている4階の風呂・・・ここはね深夜1時~5時が清掃時間になっている。

洞窟風呂の方は・・・2時間も清掃時間が長いんですよ。
おかしいなーと思ったんですがね、まぁ旅館の方でもねぇ・・・いろいろ事情があるんだろうとね、その時はさして気にも留めなかったんですよ。

温泉の方はというと、実にいい湯でしたよ。
硫黄の香りがね、結構強いんですがね・・・湯加減も丁度良くてねぇ、とても身体が温まりましたよ。

で、ゆっくり温泉に浸かりましてね、い~い気分でもって部屋に戻って来た。
時間は丁度12時を回ったあたり。
冷蔵庫からビールを出して一杯飲むとね、とたんに睡魔が襲って来た。

疲れていたし・・・もういいやってんでね、アタシそのまま布団に潜り込んで寝ちゃったんだ。

ふと目が覚めるとね、窓の外はまだ真っ暗。
川の音がザァーッと心地よく聞こえてる。
遅くまで飲んでたんでしょう、皆はまだグーグー眠ってるんだ。

何時だろうと時計を見ると5時を少し回ったあたり。
アタシね、昨夜見た洞窟風呂に行ってみようと思いましてね、清掃時間が6時までなんでまだちょいと早いんですがね、まぁもう終わってるだろうとね・・・思って行ってみたんですよ、駄目なら上へ入ればいいやってね。

で、1Fの洞窟風呂に行ってみると扉は開いてる。
中に入りますとね、小さな脱衣所があって・・・ガラス張りの引き戸がついている。

その扉の向こうは階段になってましてね、地下に降りていく形になっているんだな。

(あ~それで洞窟なんだ、こりゃ面白そうだな)

アタシ思いましてね、服脱ぐ前にその引き戸を開けてね・・・中、覗いて見たんだ。
まだ掃除中かもしれないんでね、脱いじゃうと面倒なんでね。

見ると結構急な石の階段が下まで続いてる。
薄暗い電灯が2~3個ポンポンと途中に点いているんですがね、なんだ~か暗いんだ。

階段を下りきった所は行き止まりになっていて・・・右に曲がる通路があるんですがね、どうやらその先が温泉になっているらしい。
でもそこからは光が漏れていない、真っ暗みたいなんですよねぇ。

誰もいないのかな?思ったその時ですよ。

ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・

足音がする。
(あ、やっぱり掃除中だったんだ~)
アタシ思いましてね扉から顔だけ突っ込んで声、かけたんですよ。

「すいませーん!まだ掃除中ですかね?」

・・・返事がない。

そしてまた・・・

・・・ピタ、ピタ、ピタ・・・

足音がしてる。
でもねぇ、なんかおかしいんだ。

その足音、ぐるぐる歩き回るばっかりで少しも水を流す音や、ブラシで床を擦る音なんかがしてこない。
おかしいですよねぇ・・・だって清掃中なんだから。

「すいませーん!まだ入れませんか?」

もう一度声、かけてみたんだ。
するとね、今度は・・・足音ピタリと止まったんですよ。

(気づいてくれたかな?)

アタシ耳、澄ましたんですがね・・・一向に声が聞こえて来ない。

(やだなー気持ち悪いなー)

思っていると・・・

・・・ピタ、ピタ、ピタ・・・

足音、今度は階段に向かって来てる。
でね、その歩き回っていた人物が下の通路からねヒョイッと顔、覗かせたんですよ。

「うぅわぁああっ!!」
アタシ思わず叫んじゃった。
身体、カチーンと凍り付いちゃってる。

それね、その壁から覗いた顔ってのがね・・・

髪がチリチリに焦げてねぇ、顔中赤黒く焼けただれて・・・白く濁った目をした女の顔だったんですよ。

その女、ゆっくりと階段上がって来ようとしたんでね、アタシ飛び跳ねるようにして部屋に逃げ帰りましたよ。
不思議と身体・・・動いたんですよねぇ。

朝になって朝食頂いてからね、アタシ旅館の女将に聞いてみたんだ。
これこれこういう事があったんだけど、あそこは一体どういった事があったんですかってねぇ・・・。

最初はね、なかなか口ごもって話してくれなかったんですがね・・・旅館の名前や場所を絶対に口外しないという約束でね、話してくれましたよ。

どうやらね、過去に傷心旅行でこの宿に来た女がね・・・あの洞窟風呂でもって深夜に焼身自殺をしたらしいんですよ。

でね、それからというもの夜中に洞窟風呂に入った客や従業員がね・・・焼けただれた女の幽霊を見るという事が多発したということなんです。

旅館としてはそんな温泉入らせても悪い噂が立つし、いい事無いんでね・・・封鎖も考えたそうなんですがね、でもどうやらその幽霊が出るのが深夜2時~5時過ぎくらいまでらしいって事が分かって来た。

なもんでね、その前に清掃済ませちゃってね・・・あとは入れないようにしちゃおうとね、そういう事らしいんですよ。

「鍵、かけておいた方がいいんじゃないかな~」

アタシ、言いましたらね・・・いつもはかけてあるんですが、今日はたまたまかけ忘れていたらしいという答え。

貴重な体験させてもらってねぇ・・・アタシはいいんですがね、ちょっと一般の方々にはねぇ・・・気をつけていただきたいですよねぇ。

やっぱりね、決まっている時間というのはね・・・それなりの理由があっての事なんでね・・・守った方が身のためなんですよねぇ。

じゃないとね、見なくてもいいもんや、見ちゃいけないもん・・・見ちゃうかもしれないんでね・・・。
どうぞお気をつけ下さいねぇ・・・。

今夜の怪談はここまでです。
また次回、お会いいたしましょう・・・。

それじゃまた。