【怪談】黒ナンバー | 柳川淳二の怪談部屋

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実話も織り交ぜたオリジナル創作怪談をメインとして、その他色々と記して行きます。
当ページの怪談は怪談朗読師のIsAM(136)殿にも朗読頂いておりますのでゼヒ、ソチラもお聞きになってみて下さい。
YouTubeの知的好奇心CLUBでは心霊部隊に所属。

こんばんは、柳川淳二です。

アタシの友人にね、平尾君ってのが居るんですがね・・・これ、もう長い付き合いですよ・・・中学校以来かなぁ。

この平尾君がね、先日ちょいと会った時にね・・・言うんですよ。

「淳ちゃん・・・俺さぁ、怖い体験聞いちゃったんだよ。」

「なになに、何があったんだい?」

聞くとね、平尾君が話してくれた噺ってのがね・・・
黒ナンバーっての、あるじゃあないですか。

アタシらが子供の頃なんてのはね、黒ナンバーの車が通ると不吉だから親指隠せなんて言ってねぇ・・・

変な迷信があったもんなんですがね、今考えるとこれ霊柩車が通ったら親指隠せってのから誰かが勝手に作った噂なんですよねぇ。

霊柩車が通った時には親指隠さないと親の死に目に会えないってのは有名な、これも迷信なんですがね・・・黒ナンバーについては迷信の迷信って感じなんだな。

これもう、デマの領域ですよねぇ。
でもね、子供の頃は半分ですがね・・・本気で信じてたんだ。

で、久しぶりに会ったその平尾君が・・・もう30代も後半ですよ?
その彼がね、真面目な顔で言うんだ。

「俺の知り合いがさ・・・見たっていうんだよ。」

「何をさ?」

「黒ナンバーの車だよ。」

アタシね、何言ってんだってね、笑いましたよ。
黒ナンバーてのは事業用の軽自動車が付けるナンバーですからねぇ・・・そんなの一杯走ってるんだから。

「そりゃあ見ることもあるだろうさ。」

言ったんですがね、違うんだ。
平尾君クスリとも笑わない。

それどころかね、さっきより神妙な面持ちでもってさぁ、こんな話、始めたんですよ。

平尾君の友人でね、仮にAさんとしておきますがね・・・このAさんが、夜遅くに自宅へ帰るために県道を歩いてたんだそうですよ。

その日は蒸し暑い夜で・・・県道とは言っても田舎なもんでね、ほとんど車は通らない。

ハロゲンランプの電灯がね、数十メートル置きにあるもんでその周りだけがオレンジ色の光にボンヤリと照らされてる。
たまにタクシーやらトラックやらっていう車がね、ガーッとエンジン音を響かせて通り過ぎていくんだ。

でね、やがて道の向こうからね、1台の車がやってきたってんですよねぇ。
それ、見た時ね・・・Aさんなんだかゾクーッと背筋に寒気を感じたんだそうです。

なんでかってね、その車・・・真っ黒なんですよ。
車体だけじゃあなくてね、窓も、ナンバーも数字がない漆黒の黒、真っ黒だったっていうんですよ。
しかもね、ヘッドライトも点灯していない・・・無灯火なんだ。

夜中に、真っ黒に塗りつぶされた車が一切の光も無く接近して来る・・・異様ですよねぇ。
一瞬にして日常が非日常に変わる・・・そんな感じですよ。

その車が前方からゆっく~りと近づいてくるんです。
大分近くなったんですがね・・・運転席は真っ黒で、全然運転手が見えないんですよ。

たとえフィルムなんかを貼っていたとしてもね、少しは中・・・見えるもんじゃないですか、計器類の光とかねぇ。

でもね、なんに~も見えない。
おかしい、これ・・・この車なんかおかしい。

でね、その真っ黒な車がAさんのすぐ横をまさに通り過ぎようとしたとき・・・

Aさん見たんだ。
その真っ黒な車の、真っ暗な後部座席に青白~くボンヤリと浮かび上がる2人の人間の顔を・・・。

Aさんそれ見てドキッとした。
その顔ね、見覚えがあったんですよ。

暗い車内に浮かび上がる青白い顔だけの二人・・・それね、Aさんのご両親だったそうですよ。

その顔は無表情でピクリとも動かず・・・じぃーっと前方を見つめてる。
Aさんが言うにはね、まるで「死人の顔のようだった」ということです。

そんなバカな・・・
実はね、その時間Aさんのご両親はバス旅行でもって長野に行っていましてね、帰るのは明後日・・・
こんな所にいるわけないんだ。

でもね、いくら見てもその青白い死人のような顔はAさんのご両親に間違いないんですよねぇ・・・。

Aさん嫌~な胸騒ぎを感じたそうですよ。
で、その真っ黒な車がAさんの横を通り過ぎ・・・見えなくなるまで見送ったそうなんですがね・・・結局最後までご両親は無表情で前方をじぃーっと見つめているだけだったらしいんです。

そしてAさんが自宅にたどり着くと・・・

トゥルルルルル・・・
トゥルルルルル・・・

電話が鳴ってる。
こんな夜遅い時間の電話・・・嫌~な予感がした。
緊急か訃報か・・・どうせロクな知らせじゃないに違いない。

「はい、もしもし・・・」

Aさん電話に出た。
聞くとね、Aさんのご両親がバス旅行中に転落事故に巻き込まれて亡くなったっていう・・・知らせだったんですよ。

Aさんその時、ああ・・・やっぱりな。
思ったそうなんですがね、あの車・・・真っ黒なあの車に乗っていた青白い顔のご両親。

二人が亡くなったのはね・・・まさにあれを見た、その時間だったっていうことなんですよ。
平尾君、言ってましたよ・・・

「淳ちゃんさぁ・・・その車、なんだろうねぇ・・・一体どういったもんなんだろうねぇ・・・もし、見ちゃったら、どうすればいいんだろうねぇ・・・。」

アタシ思うんですがね・・・その車は誰かの死を知らせる車なんじゃないかってねぇ・・・しかも、まともじゃない・・・なんか不幸な死に方をした時に見えるんじゃないかとね。

もしかしたら・・・ですがね、それ「死を運ぶ」車なのかも・・・しれませんがね、もしそうだとしたら・・・親指、隠してみますか?
後部座席の顔が、万が一自分だったりしたら・・・どうなるんでしょうか?

この話、まだ探せばなんかありそうですよねぇ・・・。
でもねぇ・・・できれば、見たくないもんですよねぇ。

しかし、こんな非日常は・・・常にあなたのすぐ隣に存在しているのかも知れません。
ただ見ていなかった・・・気づかなかった・・・それだけの事なのかもしれない。
でも、確実に・・・あるんですよねぇ、たぶん。

今夜のお噺はこれでおしまいです。
また次回、お会い致しましょう・・・

それじゃまた。