こんばんは、柳川淳二です。
このお噺は・・・怪談と言って良いのかなぁ・・・ちょいとこれはね、怪談ではないのかもしれない。
でもね、こういうお噺・・・アタシいいな~と思うんですよ。
ほんの少しだけね、お付き合いくださいな。
・・・寒い朝だった・・・
僕は暖かい布団の中で、夢とも現実ともつかないまどろみの中にいた・・・。
もう起きて会社に行かなきゃならない時間だが・・・もう少しこの暖かい布団に包まれていたい・・・。
「ヒロシ、起きなさい」
母の声が僕を夢の世界から現実へと引き戻した。
「もう少しだけ・・・」
「なにいってるの、もう起きないと・・・会社に遅れるわよ」
最初は優しい母の声、だがこのままいつまでもグズっているとカン高い叱責へと変貌するのだ。
「ヒロシ・・・母さん、もう行くよ・・・ちゃんと一人で起きて、会社に行きなさい」
母ももう、パートに行く時間なんだろうか?
そう考えたとたん、僕は反射的に大きな声で叫んでいた。
「待ってよ!母さん、もう少しここにいてよ!!!」
・・・叫んだ自分の声で目が覚めた僕は、なんだかとても大きなものを失ったような気持ちでとても悲しくて、涙をボロボロとこぼしていた。
母が亡くなって、もう随分と立つというのに・・・こんな夢を見たのは久しぶりだ。
・・・そういえば昨日は母の命日だった。
母さん、来てくれていたのかな・・・。
誰も居ない、一人暮らしの僕の部屋。
今朝はなんだか微かに母の香りがしたような気がした・・・。
懐かしい、母の声で目覚めた朝・・・なぜか悲しい気持ちになった・・・
久しぶりに夢で聞いた母の声。
嬉しいはずなのに、なぜか悲しい。
心に残る喪失感。
それは、大切な人を失った事への悲しみのせいなのか・・・
それとも・・・
もっと母に優しくしておけばよかった・・・もっと感謝の気持ちを伝えておけばよかった・・・もっと親孝行しておけば良かった。
そんな誰もが持っている後悔の念から来るものなのか・・・
「親孝行、したいときには親はなし」
ホント、そんなもんなんですよねぇ・・・アナタはいかがですか?
当たり前だと思っていたもの・・・それはとても有難いもの。
生きているときには気付かなかった。
気付いていたけど、上手く気持ちを表せなかった。
色々あると思いますがねぇ・・・
できるうちに、しといた方がいいと思いますよ、親孝行はねぇ。
そう思うんですよ、アタシは。
では、今夜はこのへんで。
次回はまた、とびきり怖いお噺でお会いいたしましょう。
それじゃまた。