〈健康PLUS〉 各種の話題から2024年7月6日
今回は、研究で明らかになった飲料とうつ病の関係や、高齢者の若返りなど、健康に関する各種の話題について紹介します。
◆甘味飲料でうつ病リスク増
中高年期に、甘味飲料や炭酸飲料など糖分を含む飲み物を多く飲む人は、うつ病になるリスクが高く、ブラックコーヒーでは低いとする分析結果を、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)のチームが、栄養学専門誌「クリニカル・ニュートリション」(4月17日付)に発表しました。
2011年から、国内7県に住む人を対象に行われている次世代多目的コホート研究。その蓄積されたデータを活用し、16年までにうつ病などになっていない40~74歳の約10万人の調査結果と、そのうち5年後にうつ病と評価された人のデータを踏まえて、飲料の種類と摂取量、うつ病の発症リスクを調べました。
甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りコーヒーを多く飲む人は、それぞれ全く飲まない人と比べて、うつ病のリスクが2・3~3・6%高く、ブラックコーヒーを多く飲む人は、逆に1・7%低いとの結果になりました。摂取量については、少ない、中ぐらい、多いの3段階で、全く飲まない人と比べたうつ病のリスクを評価しており、おおむね量が多いほどリスクの増減が大きくなりました。
これまで、野菜や果物自体は、うつ病の予防効果があるとされてきましたが、ジュースで代用すると逆効果である可能性が浮かび上がりました。コーヒーは、砂糖入りかブラックかで、うつ病への影響が正反対になることが示されました。
チームによると、糖分は、脳神経に栄養となるタンパク質を減らし、炎症作用もあるとされ、他方、コーヒーに含まれるカフェインの抗酸化や抗炎症といったプラス作用が影響した可能性があるということです。
チームの成田瑞・同センター精神機能研究室長は「全体としては糖分を含む飲料の摂取を控えることが、うつ病の予防にはよいと考えられる」と話しています。
◆血糖値は認可機器で測って
米食品医薬品局(FDA)は、人気のスマートウオッチやスマートリングを、血糖値を測る目的では使用しないよう、消費者や医療関係者に求める安全性情報を出しています。
血糖値を測定する医療機器には、指先などの皮膚に微小な穴を開けて体液で測る方法があります。
一方、皮膚を傷付けずに血糖が測れるとうたうスマートウオッチやスマートリングなどの製品は、安全性と有効性が審査、承認、認可されたものではないと注意喚起しています。
FDAは、不正確な血糖測定は、糖尿病患者にとって、薬の使用量の判断を誤るなどの血糖管理のミスにつながり、危険だとし、有害な事象が発生したと思われたら、同局に報告するよう奨励しています。
◆社会参加増え若返りか
2016年度の高齢者は、10年度の高齢者と比べ、要介護の認定を受けるリスクが約25%減少し、若返っていると言えるとの分析結果を、日本福祉大学健康社会研究センター(名古屋市)のチームが米医学誌(※)に発表しました。
日本の高齢者はここ10~20年、体力の向上や健康寿命の延伸によって若返っているとされており、それを裏付けるデータだとしています。
チームは、日本老年学的評価研究(JAGES)という研究事業が調査対象とする全国5市町のデータを使い、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者について、10年度は約2万3千人、16年度は別の約2万6千人をそれぞれ3年間追跡。
双方のグループで要介護2以上の認定を受けた割合を比較し、要介護認定の発生リスクとその要因を分析しました。
その結果、65~74歳の前期高齢者では、16年度に調査対象になったグループは10年度のグループと比べて要介護認定の発生リスクが25%低下、75歳以上の後期高齢者では27%低下していました。
要介護認定の発生リスクの差は、就労やボランティア、スポーツや趣味の団体への参加といった社会参加と、社会参加によって改善が期待される要因を調整すると消失しました。
チームの渡辺良太主任研究員は、社会参加が増えたことや、それによって外出頻度、歩行時間、友人と会う頻度、またうつが改善したことが、要介護認定の発生リスクの低下に関連していた可能性を指摘。「高齢者の社会参加を増やす取り組みが若返りをさらに促進するかもしれない」と話しています。
※「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・ディレクターズ・アソシエーション」
◆お酒の飲み方パンフレット
厚生労働省は、“適切な酒の飲み方”について解説するパンフレット「みんなに知ってほしい 飲酒のこと」を、ウェブサイトで公開しています。
本年2月に公表した初の指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」に基づき、自分の飲酒の状況を把握する方法、避けるべき飲み方や飲酒後の行動、年齢・性別・体質によるアルコールの影響の違い、過度の飲酒の悪影響などについて解説しています。
また、実際に飲んだ酒の種類と量を選ぶと、アルコール量とその分解にかかるおおよその時間が分かるツール「スナッピー・パンダ」や、全国の相談窓口、ガイドライン全文などへのQRコードも掲載しています。
◆医療の学会が気候宣言
地域で身近な総合診療に取り組む医師らでつくる「日本プライマリ・ケア連合学会」は、最近の異常気象が人々の健康を脅かしているとして、「気候非常事態宣言」を発表しました。
医療系の学会が気候変動対策の重要性を訴えるのは、国内では珍しいことです。
宣言では、自然災害による人的被害や暑熱による熱中症の多発、虫が媒介する感染症の流行など、気候変動が健康や生活に深刻な影響を及ぼしていると指摘しました。
人類の健康と地球環境を両立させる「プラネタリーヘルス」という考えを医療者や市民に周知させるほか、医療現場で発生している温室効果ガスの排出削減を図るとしています。6月に浜松市で開かれた学術大会で表明しました。
◎イメージ写真はPIXTA