家庭でも簡単! 切れ味戻し 2024年5月31日
料理に使用する包丁。購入時は、スパッと刃が入ったのに、いつの間にかスムーズに切れなくなって……。例えば、トマトの断面がつぶれることはありませんか。包丁の切れ味は、家庭でもよみがえらせることができます。今回は、刃物の製造で有名な岐阜・関市にある岐阜関刃物会館を訪れ、包丁の研ぎ方について桜田公明専務理事に聞きました。
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家庭でも簡単! 切れ味戻し
料理では、野菜や魚、肉など、さまざまな食材を切ります。硬い食材を切ったり、まな板に当たったり、包丁は使うたびに摩耗します。
たまに、切れ味が良すぎる包丁は、けがをしそうで怖いという声を聞きます。そんなことはありません。切れ味が悪いと、変な握り方になったり、余計な力が入ったり、失敗して指を切ることがあります。逆にスパっと切れると、無駄な力が入らないので、けがのリスクも減ります。一度研ぐと分かりますが、切れ味がよみがえると、切ることに対してのストレスがなく、料理も楽しく感じます。
今回は、一般家庭で重宝されている三徳包丁の研ぎ方について紹介します。三徳包丁は、裏表に同じ角度で刃が付いている両刃になります。表側だけに刃が付いている片刃の和包丁とは研ぎ方が違い、簡単です。包丁は手入れを続ければ、自分の使いやすい形に整えることができる道具です。ぜひ、家庭で長く使ってあげてください。
道具
砥石……600番。番号は、砥石の目が細かくなるほど大きくなります。家庭で切れ味を保つのは600番で十分。切れ味を求める場合は、もっと数字の大きいものを使います。
砥石台……台がない場合は、固く絞ったぬれ雑巾を敷くと、砥石を固定できます。
水……砥石が乾かないように適宜、砥石に数滴落とします。
新聞紙……研ぎの仕上げに使用します。
●手順(右利き向けの解説です。左利きの場合は、左右を反対に行ってください)
1 水でよく湿らせた砥石を用意します(水に浸す時間は素材によって違いがあるので、商品説明等で確認してください)。右手に包丁を持ち、刃先を手前に向けます。包丁は、砥石に対して斜め45度~60度に構えましょう。左手の人さし指、中指、薬指の3本で、砥石に乗せた包丁の刃先の少し上を押さえます。
2 刃の部分だけが砥石に触れるようなイメージで、刃を砥石に当てたまま、包丁の背中(峰)を少し持ち上げます。持ち上げる角度は15度が目安。
<ポイント> 唯一のコツが、この角度を一定に保つこと。角度を維持するための器具もあります。
3 包丁の角度(15度)を保ちながら砥石の上を前後にスライドさせます。20回繰り返します。奥に押し出す時に少し力を込め、手前に戻す時に、力は必要ありません。
※押し出した際に峰を起こしたり、手前に戻す際に包丁を浮かせたりしない。
4 うまく研げたかどうかは、刃に包丁の削りかす「カエリ」がついているかどうかで判断。刃に対して垂直に指でなぞり、ひっかかりがあればそれがカエリです。
※刃に沿ってなぞると、指が切れます。注意しましょう。
カエリは少し出れば十分。たくさん出す必要はありません。カエリが分からなければ、まだ研いでいない部分と、なぞり比べてみましょう。
5 包丁は、一度に砥石に乗らないので、刃先から刃元まで数回に分けて研ぎます。研ぐ際は、砥石が乾かないように適宜、水を砥石に数滴垂らします。研いでいくと、水と研いだかすが、表面に残りますが、これは研ぎを手助けしてくれるので、洗い流しません。
6 刃元まで磨いたら、切っ先を磨きます。切っ先は砥石に接地しやすいよう、柄を少し持ち上げると研ぎやすくなります。
7 刃を裏返して(刃先が奥。峰を手前に向ける)、同様に研ぎます。今度は奥から手前に引く時に少し力を加えます。奥に戻す際は力を入れず、刃を滑らせる程度。先ほど同様、刃に少しカエリが出るまで全体を研ぎます。
8 刃元を研ぐ際は、斜めに包丁を構えると、柄が砥石に当たってしまいます。刃元を研ぐ時だけ、包丁を横にしましょう。
9 最後に「カエリ」を取ります。机に新聞紙を敷き、刃先の側面が当たるよう包丁を寝かせます。新聞に刃を付けたまま、峰の方に向かって軽く擦ります。両面を数回行い完成です。
●砥石の手入れ
砥石は使用する部分が削れていきます。平らに見えても、使用後は、へこみができます。砥石自体に凹凸があるとうまく磨けないので、平らに直す必要があります。包丁を研ぐ前か後のどちらかに、砥石の手入れをしましょう。
用意するもの
砥石
面直し砥石……砥石を手入れするための砥石
手順
1 砥石の表面に鉛筆で、上下左右に何本か線を引く。
2 「面直し砥石」を当て、上下に数回削る。
3 砥石を確認し、鉛筆の線が消えるまで、全体的に削る。
頻度の目安はありますか。
月に1、2度を推奨していますが、料理の回数や食材によっても変わります。日頃使う食材がスムーズに切れなくなったら、そろそろです。刃が完全につぶれてからよりも、簡単に戻り、時間も短縮できます。私は「トマトの切れ味が悪くなったら研ぐ」をオススメしてます。
高価なものは研がなくてもいい?
包丁の値段の違いはさまざまな要素がありますが、分かりやすい違いの一つとして、刃の硬さがあります。一般的に高価な包丁の方が、硬い金属を使っています。そのため、鋭い切れ味が長く続きます。ただ、刃に負担がかかる以上、使い続けると、切れ味は落ちます。値段が高いからといって、研がなくていいわけではありません。
包丁を選ぶポイントは?
包丁は、刃の素材や形、持つ部分に違いがあります。持ち手に工夫がされ食洗機で洗えるものもあります。
最初の1本には、オールマイティーな三徳包丁を。その他、パン切り包丁や肉を切る牛刀、魚をおろす出刃包丁、果物などを切るペティナイフなど、特化したものを用意するのもよいでしょう。
軽いと取り回ししやすいですが、切る時は、包丁自体の重量も利用するので、ある程度重さがあると、安定して使用できます。
また持った際に重心がどこにくるかというバランスも、使いやすさに影響します。重さやバランス、長さは、手の大きさや体格によっても、感じ方が違います。道具との相性があるので、選ぶ際は、持ち比べることをオススメします。