無明破る“信”の利剣 「御義口伝」

〈紙上教学研さん〉　無む明みょう破やぶる“信”の利り剣けん2024年3月30日

• 御書根本の大道　池田大作先生の講義に学ぶ

勇気の指標

　「無む疑ぎ曰わっ信しん」とは「疑うたがい無なきを信と曰いう」と読み、何があろうが紛ふん動どうされることなく、どこまでも御本尊を信じて疑うたがわない信心のことです。（中略）
　「無疑」とは文字通り、「疑いが無い」という意味です。言いい換かえれば、「心から納なっ得とくできる」とも言えるでしょう。それは、「疑わない」、すなわち「不ふ疑ぎ」とは異ことなります。
　もし宗教が疑いを持つこと自体を否ひ定ていするならば、人間本ほん来らいの伸のびやかな精神は失われてしまう。そうした、精神の営いとなみを否ひ定ていする宗教では社会から遊ゆう離りし、独どく善ぜんや狂きょう信しんに陥おちいってしまう危き険けん性があります。
　◇
　私は十九歳の時に信しん仰こうの道を志こころざしました。
　初めて会ったばかりの一青年である私の率そっ直ちょくな質問に対して、戸田先生は一つ一つ明快に答えてくださいました。先生が獄ごく中ちゅう闘とう争そうを勝ち越こえられたことは後で知りましたが、一言一言に、金こん剛ごうの如ごとく確かっ固こたる哲てつ学がくと人間性が脈みゃく打うっていました。
　この人の言うことなら信じられる――そう直感して、私は入信しました。まずは師し匠しょうを信ずることによって妙みょう法ほう、御本尊への信が深まっていったのです。
　当然のことながら、若わかく、入信浅あさい私に、疑ぎ問もんはたくさんありました。しかし、戸田先生と出会って以来、人生と哲てつ学がくの根本課題について、仏法ではどう答えるのか、思し索さくを深める日々が続きました。
　先生は常つね々づね「信は理を求め、求めたる理は信を深ふかからしむ」と語られていました。この「理」とは論ろん理り性せいとも言い換えられるでしょう。私の体験からいっても、疑問を明確にし、実じっ践せんの中で徹てっ底ていして考え抜ぬいて、心の底から納なっ得とくすることが、信仰を深めていきます。
　「御義口伝」には「信の外ほかに解げ無なく解の外に信無し」（全725・新1012）ともあります。つまり、「信」を深めることで求道心が起こり、法理を学び実践し、体験を重かさねる中で確信を強めていく。そして、生命の実感の上で、「疑いが無い」ことが「無疑」なのです。
　◇
　恩師がよく語られていました。
　「自分自身が南無妙法蓮華経だと決めることだ！」
　「自分は南無妙法蓮華経以外なにもない！　と決めることが末まっ法ぽうの折しゃく伏ぶくである」
　これこそが、仏法の結けつ論ろんです。いかなる無む明みょうをも断だん破ぱする、信心の利り剣けんの結けっ晶しょうともいうべき一言であると確信しています。自分自身こそが妙法の当とう体たいです。一人ひとりの生命に、無む限げんの可能性が秘ひめられています。学会員は、この境きょう涯がいに到とう達たつできるのです。
　自分の仏ぶっ性しょうを信じ、人々の仏性をも信じて行動し抜いていく。
　このような精神革かく命めいの時代を築きずいていくこと自体が、実は、広宣流布にほかなりません。私たちは、その偉い大だいなる人類の宿しゅく命めい転てん換かんに率そっ先せんして戦っているのです。

今回の池田先生の御書講義は、『信仰の基本「信行学」』からの引用です。

1999年7月28日、東京牧口記念会館で挙行されたベネズエラの「アンドレス・ベージョ勲章勲一等　名誉綬褒章」叙勲式の席上、池田先生は第2総東京の友を前に語った。「青年部は、言うべきこと、主張すべきことを明確に堂々と、『獅子』となって、叫び切っていかなければ青年ではない」。さらに同日、同会館で行われた第1回第2総東京総会に寄せ、先生は次の和歌を贈った。「人材の/大城　厳たり/不滅たり/連戦連勝/東京第二は」

世界平和の人材の大だい城じょう築きずく

海沼隼人　第2総東京青年部長

　「第2総東京」が誕たん生じょうして本年で25周年。池田先生はかつて、「第2総東京は世界平和の人材の城である」と語られました。
　人材といっても、何もせずに人材が成長することはありません。悩なやみや苦く難なんとの戦い、つまり元がん品ぽんの無む明みょうとの闘とう争そうによって鍛きたえられて初めて、広宣流布の闘とう士しへと飛ひ翔しょうすることができます。
　今回拝はいする「御おん義ぎ口く伝でん」の一節を通して私が命に刻きざんでいることは、目の前で起こる出来事に“信心で向き合う”ことの大切さです。
　広宣流布に励はげめば必ずそれを阻はばもうと障しょう魔まが競きそい起おこる。しかも魔まは、自分が最もっとも戦うべき時に、自分の最も“弱い部分”に現れます。
　3年前の5月、方面男子部長として立正安国を目指し、地域を奔ほん走そうしていた時、3歳の長男に突とつ如じょ、大病が見つかりました。長男は即そく座ざに入院。コロナ禍かで面会時間も制限され、代わってあげられないつらさに身を切られるようでした。不安を振ふり払はらうように祈る中で、“信心で断じて勝ち越こえてみせる”と腹はらを決めました。
　家族と相談の上、会合で、状じょう況きょうをありのままに語りました。すると終しゅう了りょう後ご、幾いく人にんもの男子部の同志が“祈ります”と声をかけてくれたのです。さらに、多くのメンバーが“実は自分も……”と悩なやみを打ち明けてくれるように。“皆みな、いろいろなことを抱かかえながら、それでも師弟の誓ちかいを胸むねに戦っている”――この時、皆さんとの心の距きょ離りがぐっと縮ちぢまるとともに、信心の闘争ありてこそ、広布の人材城は築きずかれることを、命で実感しました。
　池田先生から度たび重かさなる励はげましをいただき、多くの同志の祈りに守られ、長男の治ち療りょうは奏そう功こう。今では元気に日常生活を送れるようになりました。
　池田先生は、本ほん抄しょうの講義の中で教えてくださっています。
　「元品の無明とは、自分の生命に仏の生命が具そなわることを信じられない根本的な迷まよいであり、“不信の生命”です」「自他共に尊そん極ごくの生命を輝かがやかせ、真実の喜びの人生を築く道を教えているのが仏法です。この元品の無明を断たち切る『利り剣けん』こそ信心なのです」
　人生で遭そう遇ぐうするさまざまな障しょう壁へきを前に、卑ひ屈くつになったり、方法論ばかりに目を奪うばわれたりするのではなく、どんな苦く難なんも乗のり越こえていく無限の可能性が自分の中にあると、強く確信して祈り、立ち向かっていく。その繰くり返かえしによって信心を深め、他者のことをも真しん剣けんに祈り行動できる大きな自分へと境きょう涯がい革かく命めいすることができます。
　「世界青年学会　開かい幕まくキャンペーン」を大勝利し、「4・2」から栄光の「5・3」へ！　勝って師し匠しょうにお応えする――これからも永遠に変わらないこの弟子の誓せい願がんを胸に、第2総東京の天地に、広布と平和の人材の大だい城じょうを築きます。

御おん義ぎ口く伝でん

　この本ほん法ぽうを受じゅ持じするは、信の一字なり。元がん品ぽんの無む明みょうを対たい治じする利り剣けんは、信の一字なり。「疑うたがいなきを信と曰いう」の釈しゃく、これを思うべし云うん々ぬん。（新1047・全751）

メモ

　日蓮大聖人が、身み延のぶで法華経の要文を講義され、それを日興上人が筆録したと伝えられている。上下2巻からなる。無む疑ぎ曰わっ信しんとは、天台大師の『法ほっ華け文もん句ぐ』にある言葉。