〈英知の光源 希望の哲理に学ぶ〉 テーマ:地涌の実践

 

 連載「英知の光源 希望の哲理に学ぶ」では、仏法理解を深めるための鍵となる教学用語や法理を解説。また、関連する池田先生の指導を掲載します。今回は「地涌の実践」について。牧口先生、戸田先生、池田先生の創価の三代会長が示してきた、地涌の菩薩としての実践について学びます。

 

池田先生の指導から

 地涌の菩薩が活躍する本舞台は、娑婆世界と決まっています。苦悩を堪え忍ばねばならない堪忍世界とも呼ばれます。
 この苦悩に満ちた現実に生きる一切衆生を救済するためにこそ法華経が説かれたのです。(中略)
 地涌の生命に目覚めた人に、何も恐れはありません。多くの人を救う使命に立てば、勇気も湧くし、力も出る。(中略)
 人類は皆、本来、地涌の生命を持っています。
 その地涌の生命は、目覚めた地涌の生命に触れることで必ず触発されるのです。
 さあ、わが門下の君たちよ、貴女たちよ、新鮮なる人間革命の舞台へ、新しい自分自身の生命で生き生きと立ち上がれ!
 明日の世界が待っている。未来の人類が、創価の地涌の大行進を待っている――。
 君のいるその場所で――地球上のあらゆる場所で、広布に生きるわが生命の「歓喜の中の大歓喜」の勝鬨を、誇り高く響かせていこうではないか!
 平和の人間世紀へ!(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第17巻)

Q1:私たちこそ地涌の菩薩――。 なぜそう言えるのでしょうか。

 大乗仏典の精髄である法華経は、釈尊の本意である「万人成仏」を実現する、最も根本の教えを説いた経典です。とりわけ大きなテーマになっているのが「釈尊滅後の末法に、誰が法華経を弘通するのか」ということです。
 その使命を託されたのが、法華経従地涌出品において釈尊に呼び出された無数の菩薩たちです。大地から涌出したので「地涌の菩薩」といい、あえて末法の娑婆世界という最も大変な時を選んで生まれ、苦悩の人々を救うために、妙法を説き弘めていくことが明かされています。
 日蓮大聖人は、「地涌の菩薩のさきがけ日蓮一人なり」(新1790・全1359)と仰せになり、まさに御自身こそが、地涌の菩薩の先駆者として、民衆救済のために死身弘法の大闘争を貫いてこられた御確信を示されました。そして、大聖人に連なり、大聖人と同じ心で妙法流布に生きる人もまた、地涌の菩薩であると教えられています。
 現代において、大聖人に直結して広宣流布を実現している創価学会は、「地涌の菩薩の教団」といえます。
 その淵源には、創価三代の師弟による不惜身命の広布史が輝いています。
 学会が創価教育学会として誕生したのは、1930年(昭和5年)11月18日。
 初代会長・牧口常三郎先生は「菩薩行をせねば仏にはなられぬのである」と語り、自行化他の実践としての「菩薩行」を強調しました。
 まさに、大聖人が貫かれた“地涌の菩薩の実践”に連なり、迫害に怯まず、自他共の幸福のために折伏にまい進することを、何よりの誇りとしたのです。

Q2:日蓮大聖人に直結していく。 これが創価の誉れなのですね。

 大聖人直結の生き方を貫いた牧口先生は、太平洋戦争中に思想統制を強める軍部政府と対峙し、仏法の正義を訴え続けます。しかし、治安維持法違反および不敬罪の容疑で逮捕され、1944年(昭和19年)11月18日、獄中で尊き殉教を遂げました。
 牧口先生と共に逮捕・投獄された第2代会長の戸田城聖先生もまた、獄中で信仰を貫きました。
 その中で、戸田先生は徹底した唱題と法華経の精読、思索によって「我、地涌の菩薩なり」と“悟達”したのです。その自覚の上から、正法を流布して生涯を終える決意をします。
 この「獄中の悟達」について、池田先生は、「この悟達にこそ、日蓮大聖人に直結し、広宣流布に生きる、仏意仏勅の団体である創価学会の『確信』の原点がある」とつづっています。
 後に出獄した戸田先生は、51年(同26年)5月3日に第2代会長に就任すると、会員75万世帯の達成を願業として発表し、広布の大道を開きます。
 弘教のうねりが各地に広がる中で、時に戸田先生は、同志に「地涌の菩薩の皆さん、やろうではないか」と呼びかけました。
 妙法流布という、生命本源の地涌の使命に生きる時、あらゆる宿命を打開する力がみなぎる――戸田先生は、その確信を全同志と分かち合っていったのです。
 やがて、75万世帯の弘教を成し遂げ、日本の広布の基盤を確立した戸田先生は、58年(同33年)4月2日に逝去します。恩師の後を継ぎ、60年(同35年)5月3日に第3代会長に就任したのが、池田大作先生です。

Q3:池田先生はどのように 法華経思想を展開しましたか。

 池田先生は、日蓮仏法における法華経思想を深めながら、現代的に展開。「あらゆる人が、じつは根本においては地涌の菩薩である」と語りました。
 末法の衆生は、誰もが妙法によって仏界を開く可能性をもっており、万人が本来、地涌の菩薩の使命を帯びていると捉えたのです。そして、日蓮仏法が示す「万人地涌」の思想性にこそ「人類共通の基盤」があることを見いだしました。
 釈尊に始まり大聖人が受け継いだ法華経の思想と実践は、創価三代の師弟による死身弘法の闘争によって、「生命尊厳」「万人尊敬」という人間主義の仏法として現代によみがえりました。
 なかんずく池田先生は、妙法弘通にささげた生涯を通して、地涌の誓願たる世界広宣流布を現実のものとしました。すなわち、使命に目覚めた地涌の菩薩が、永遠に、また世界中に、涌出しゆく道を確立したのです。
 師の励ましによって立ち上がった私たち学会員は、師と同じ地涌の誓願を胸に、宿命に挑み、周囲に希望を送る生き方を貫いています。その励ましによって立ち上がった人はまた、周囲の人々を励ます存在へと変わっていきます。
 こうした励ましをつなぐ地涌の民衆の大連帯が、今や世界192カ国・地域へと広がっているのです。それは人類の幸福と平和の礎となっていくに違いありません。
 私たちは、先生が目指してきた「万人の幸福」「全人類の宿命転換」という地涌の誓いをわが誓いとして、学会創立100周年の2030年に向け、新たな師弟共戦の歴史を開いていきましょう。