〈教学〉彼岸の意義について

池田先生の指導に学ぶ2024年3月12日

妙法の題目は全ぜん宇う宙ちゅうを照らしゆく

　17日は、春の彼ひ岸がんの入いりです。創価学会では、彼岸の中日に当たる20日を中心に「春季彼岸勤行法要」を実じっ施しします。ここでは、池田大作先生のスピーチを通して、仏法本来の「彼岸」や「回え向こう」の意義について学びます。（池田先生の指導は、『普及版　池田大作全集　スピーチ』2005年［4］から）
　
　

苦く悩のうの荒あら波なみを乗のり越こえて幸福・勝利へ到とう達たつできる

　仏法では、迷いに満ちた現実の世界を「此し岸がん」（こちらの岸）に譬たとえる。それに対して、悟さとりの世界、仏道修行の完成を、「彼ひ岸がん」という言葉で表すのである。
　すなわち、真しんの「彼岸」、成仏の完成に至いたるためには、現実の迷いや悩なやみに打ち勝つ「修行」が不可欠なのである。この点を忘わすれてはならない。
　ゆえに、“坊ぼう主ずに拝おがんでもらわなければ、お彼岸にならない。供く養ようにならない”などという考えは、完全な“迷めい信しん”にすぎないのである。
　日蓮大聖人は、「生しょう死じの大たい海かいを渡わたらんことは妙法蓮華経の船ふねにあらずんば・かなふべからず」（全1448・新1721）と仰おおせである。
　妙法を持たもち、広宣流布に生きぬく創価学会員こそ、「生死の大海」に満ちる苦く悩のうの荒あら波なみを乗のり越こえて、「幸福の彼岸」「勝利の彼岸」へ到とう達たつすることができるのである。
　
　

自身の仏道修行の功く徳どくを“廻めぐらし向むける”のが回え向こう

　「回え向こう」の本義について、大聖人は「御おん義ぎ口く伝でん」で次のように述べておられる。
　「今いま日蓮等の類たぐい聖しょう霊りょうを訪とぶらう時とき法華経を読どく誦じゅし南無妙法蓮華経と唱となえ奉たてまつる時・題目の光ひかり無む間けんに至いたりて即そく身しん成じょう仏ぶつせしむ、廻え向こうの文もん此これより事こと起おこるなり」（全712・新991）
　妙法の題目は、全ぜん宇う宙ちゅうを照らしゆく力を持っている。その慈じ悲ひの大たい光こうは、無む間けん地じ獄ごくにまで至るとの、大聖人の大確信である。
　いかなる権けん力りょくでも、いかなる財ざい宝ほうでも、いかなる科学でも、成なし得えないことがある。それが一いっ生しょう成じょう仏ぶつであり、故人への追つい善ぜん回向である。
　回向の根本は、自分自身が御本尊を信じ、広布に励はげむことである。自身が仏道修行で得えた功く徳どくを「廻めぐらし向むける」ことが、「回向」の本義であり、真しんの追善となるのである。
　ともあれ、「彼ひ岸がん」にせよ、「回向」にせよ、「自分自身の仏道修行」という一点を忘わすれてしまえば、本来の意義から外れてしまう。
　私たちは最高無上の生命の軌き道どうを、久く遠おんからの同志とともに、歓かん喜きに燃えて歩んでまいりたい。
　
　

学会の法ほう要ようは大聖人の御お心こころに最も適かなった集つどい

　日本には、「春分の日」と「秋分の日」を中心に、先祖の供く養ようや墓ぼ参さんなどを行う「彼ひ岸がん会え」がある。じつはこの行事は、インドや中国から伝来したものではなく、日本独特の風習である。聖しょう徳とく太たい子しの時代から始まったとも言われ、『源げん氏じ物もの語がたり』にも「彼岸」の言葉が見られる。
　「春分の日」「秋分の日」は、大きく見れば、昼と夜の長さが等しくなる、地球の運行の“リズムの節目”にあたる。また、日本人にとっては、「暑さ寒さも彼岸まで」などと言われるように、“季節の節目”である。
　この日には、古代、農のう耕こう儀ぎ礼れいが行われていたようであり、それが仏教と結びついて、祖先を供養する「彼岸会」になったのではないかという説がある。
　また、太陽に豊作を願った「日ひ願がん」が由ゆ来らいではないかとも言われる。
　ともあれ、御書には、悟さとりの世界を表す「彼岸」は使われているが、いわゆる年中行事としての彼岸会についてはふれられていない。
　私どもが行う彼岸法ほう要ようについては、「随ずい方ほう毘び尼に」（仏法の本義に違たがわないかぎり、各地域や時代の風習に随したがうべきである）の考えのうえから、意義づけるべきであろう。
　そして、春分・秋分の日という地球のリズムに則って、会館等にすがすがしく集つどい合い、異い体たい同どう心しんの広布の友と行う勤行・唱題こそ、大聖人の御お心こころに最も適かなった彼岸の法要であることを確かく認にんしておきたい。
　
　

広布に励はげむ実じっ践せんこそが故人への真の供く養ように

　大聖人は、在家の門下である曾そ谷や教きょう信しんが、毎朝、亡なき父のために自じ我が偈げを読どく誦じゅし、追つい善ぜん回え向こうしていることについて、「是これこそ実じつの孝こう養ようにては候そうろうなれ」（全1051・新1427）と讃たたえられた。
　この曾谷教信のことを、「法ほう蓮れん上しょう人にん」（全1047・新1419）という尊そん称しょうで呼よばれている。
　また、南なん条じょう時とき光みつに、大聖人は仰おおせである。
　「自分にとって大事な人々から信しん仰こうを反対されたり、大きな難なんが来るであろう。その時こそ、諸しょ天てんの加か護ごが必ずあると信じていよいよ強ごう盛じょうに信心していきなさい。そうすれば（父上の）聖しょう霊りょうは仏になられるであろう。（父上が仏に）なられたならば、来こられて、（あなたを必ず）守られるであろう」（全1512・新1843、通解）
　難と戦い、難を打ち破る。その勇気ある信心に、計り知れない功く徳どくがそなわっていく。その人は、亡なくなった家族をも、皆みな、成仏させることができる。そして、すべての縁えんする人を救い、皆から守られていく。
　目指すべき真しんの「彼ひ岸がん」は、どこか遠くにあるのではない。私たちが日々、勤行・唱題し、広宣流布に励はげみゆく実じっ践せんこそ、真の彼岸の供く養ようとなる。大聖人の仏法においては、「常じょう彼ひ岸がん」なのである。